■爽やかな不倫ものにぴったりだった
転機になったのは、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』で、ヒロインの親友役を演じたことだった。
「すごく喜んでくれましたね。以来、私が出演する作品は楽しみに観てくれています。でも今回は、最初ちょっと動揺していました。なにしろ、不倫する役なので(笑)」
映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』で奈緒が演じるのは、漫画家夫婦の夫と不倫する編集者・千佳。大切に育ててきた娘が、役柄とはいえ道ならぬ恋愛をするというのは、母親なら心配になってしまうかもしれない。
「でも、試写を観たら『すごくおもしろかった!』って。私自身、こんなに不思議でおもしろい不倫映画ってあるんだろうか!? と思っていたので、ホッとしましたね」
妻が描く漫画と現実が入り交じるスリリングな展開。夫の不倫相手の千佳役として奈緒に白羽の矢が立ったのは、脚本・監督の堀江貴大氏いわく「爽やかな不倫ものにぴったりだったから」だという。
「役を演じるときに、私はそのキャラクターと親友になる気持ちでアプローチするんです。今回も台本を読むときは、千佳さんにインタビューをしているような気持ちでした」
それで、千佳さんとは親友になれた?
「どうでしょうか(笑)。千佳さんとは、仲よくなるというよりも、どんどん先に突っ走っていく彼女を追いかけている感じだったかもしれません。それに、千佳さんは恋愛よりも漫画が大事な人なので」
奈緒自身もインスタグラムでイラストを発表するなど、漫画が大好き。漫画の編集者という設定には心が躍ったという。
「漫画家さんって憧れなんですよ。作品を通して、漫画ってこんなふうに編集者とやり取りしながらできていくんだとか知ることができて、とても興奮しました。子供のころからの憧れを、お仕事として少し経験させていただけたのは嬉しかったですね」
母親役にも憧れがある。
「以前は妹役が多くて、だんだん姉の役柄をいただくようになり、この秋公開の映画では、ついに母親になる役を演じさせていただきました」
役と親友になるために、母親から自分が幼いころの話をよく聞くという。
「お母さんって本当にすごいなと思うとともに、私はとても大切に育ててもらったんだと、あらためて感じました。だから、これからは私が母にたくさんのことをしてあげたい」
母の思いが詰まった着物にそっと触れ、次に叶えたい夢を語った。
なお
1995年2月10日生まれ 福岡県出身 2018年、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』でヒロインの親友役に抜擢。2019年にはドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)でサイコパスの役を演じて話題になる。今年の公開待機作品は『先生、私の隣に座っていただけませんか?』のほか『君は永遠にそいつらより若い』『マイ・ダディ』など6作品がある
写真・中村 功
取材&文・工藤菊香
※映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』公開中
(週刊FLASH 2021年9月21日号)