『二月の勝者』柳楽優弥の超・非現実的な「全員合格」宣言…どう“着地”させるつもり？

 

「第一志望校に全員合格させます」と言い切る主人公。

 

　最終回はご都合主義で、本当に全員合格させてしまうのか？　それとも現実的に不合格者を出して主人公の決めゼリフに泥を塗るのか？

 

　先週放送の第2話まで観た時点では、最終的にどう “着地” させるのかわからない……。

 

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　柳楽優弥主演で中学受験を題材にした『二月の勝者－絶対合格の教室－』（日本テレビ系）。

 

　柳楽が演じるのは “中学受験は課金ゲーム” といった考えを持ち、裏では生徒の親たちを「スポンサー」「カモ」「ATM」などと呼ぶが、確かな指導力で高い合格実績を誇るスーパー塾講師・黒木蔵人だ。

 

　黒木が中堅塾「桜花ゼミナール」に校長として着任するところから物語は始まる。世帯平均視聴率は第1話が9.2％、第2話が7.9％だった。
（※ビデオリサーチ調べ／関東地区）

 

　本作は塾講師が主人公で、小学生を生徒に持つ学習塾が舞台のため少々亜流だが、ジャンルで言うなら教師が主人公の学園ものドラマにカテゴライズされるだろう。

 

　そして黒木は、一見すると冷徹・非情で性格の悪い人物に見えるが、実は生徒想いの優しい一面があったり誠実な一面があったりする、ギャップ系キャラに違いない。

 

　実際、第1話では片鱗程度しか出ていなかった “実はいい人” の要素が、第2話では明確に見え始めた。

 

■「一生懸命にならないでください」の真意

 

「桜花ゼミナール」の新任講師・佐倉麻衣（井上真央）は、6年生で一番成績の低いRクラスの担任となる。

 

　Rクラスの生徒たちはいまいちやる気がなく、生徒のためにできることをしようとがんばる佐倉に、黒木は第2話でこう告げるのだ。

 

「Rの生徒に一生懸命にならないでください。Rクラスはお客さんですから」

 

「お客さんというのは、とりあえずここに通って授業料を落としてくれればいい生徒のことです。塾は営利目的の企業です。優秀な生徒には経営資源を集中させ手厚く指導し、合格実績というリターンをガッチリ稼いでもらう。ですが、Rの生徒はお客さんとして、楽しくお勉強させてください」

 

　拝金主義なセリフに聞こえるが、実は黒木には真意があったのである。

 

　Rクラスのなかでも成績が悪いある生徒に、佐倉はよかれと思って授業後にマンツーマンで補習するが、その生徒が塾をやめたいと言い出した。

 

　その生徒は鉄道好きで、黒木が有名な鉄道研究会のある中学校を調べたおかげでやる気を取り戻したのだが、その後に黒木が佐倉に伝えた真意がコレ。

 

「勉強が楽しくなければ中学受験は成功しません。あなたは子供たちに、勉強の苦しさだけを教えていたのではありませんか？　

 

　あなたは私に『できない子供の気持ちがわからないのか？』と、お尋ねになりましたよね。この際お答えしておきますが、私は誰一人としてできない子だと思ったことはありません」

 

　なるほど、これは見事な伏線回収。

 

「一生懸命にならないでください」「楽しくお勉強させてください」という言葉が、この展開を終えた後に振り返ると、ニュアンスが真逆の生徒想いの優しさだったことがわかる。

 

　そして、佐倉に対して改めて「私は必ず桜花の全員を合格させます」と宣言する。

 

　どうやら黒木は、「全員合格」を謳ってとりあえず入塾させて収益を上げ、もし不合格でも知らぬ存ぜぬで切り抜けるつもりはなく、本心から全員合格させる自信がある様子。こうして第2話は美談として上手く着地した。

 

　……しかし、だ。

 

　受験まで残り1年を切った6年生に「楽しくお勉強」なんて悠長なことを言っていて、本当に全員が合格できるものなのだろうか。正論だが理想論にも思える。

 

　中学受験で志望校に合格できるのは3割程度。だが黒木は、自分が指導すれば10割合格と言っている。黒木の言葉が有言実行され、本当に全員合格してしまっては、あまりに非現実的すぎる。

 

　かといって、リアリティを出すために不合格者を出してしまうと、主人公の決めゼリフがただのブラフだったということになってしまう。

 

　当初の第一志望が難しそうなら、受験直前に志望校のランクを下げさせるのはありだろうが、そんな “トリック” で全員合格しても、視聴者は納得いかないだろう。

 

――「全員合格」という主人公の言葉を、どう着地させるつもりなのか……。

 

　最終回まで気になる “引き” がある『二月の勝者－絶対合格の教室－』、第3話は今夜放送である。

 

●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA！』などに寄稿中