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八嶋智人「僕には美意識がないんです」アーティストではない、役者の矜持を語る

エンタメ・アイドル 投稿日:2021.12.25 11:00FLASH編集部

八嶋智人「僕には美意識がないんです」アーティストではない、役者の矜持を語る

舞台『越前牛乳』に出演する八嶋智人(1996年)

 

■バラエティの仕事もすべて「いい経験」

 

 八嶋というと「へぇ〜」で一大ブームを巻き起こした『トリビアの泉』や『ココリコミラクルタイプ』(ともにフジテレビ系)など、バラエティのイメージが強い読者も多いだろう。じつはこの仕事の裏にはこんな話が。大ヒットドラマ『HERO』(フジテレビ系)放送後のことである。

 

「『HERO』のおかげで、初めて八嶋智人という名前が、バーンと目立つことができたんです。でも、次のクールは一本も仕事が決まらなかった。マネージャーが焦っていたところにきた話が『ココリコミラクルタイプ』で、すぐに出演を決めました。

 

『トリビアの泉』も、僕と(高橋)克実さんが『おかしな2人』という舞台で演じたスペイン人兄弟の芝居をフジテレビのプロデューサーさんが観に来て、『このコンビはおもしろい』ということで、お話をいただいたんです。喫茶店で『小便小僧がいる。小便少女もいる』と言われても、『そうなんですか』って。『へぇ〜』のひとつも出なかったですけどね(笑)」

 

 当時、舞台が主戦場だった八嶋を「テレビドラマに出るのか」「バラエティなんかに出ちゃったらさ」と揶揄する人もいたという。だが「苦悩も後悔もない。やってみてよかった」と胸を張る。

 

「若い子に『やっしー』なんて呼ばれてちやほやされて、最高じゃないですか(笑)。いろいろなものに出させていただいて、ありがたいなって思います。

 

 それに僕は『なんでもやってみたらいいんじゃないですか?』って思うんです。山と同じで、登ってみないとその景色はわからない。美しい景色だと思ったらテントを張ればいいし、気に入らなければ下山すればいい。

 

 今、どんな顔をしてしゃべっているのか僕はわからないし、自分のことなんてわからない。僕は『テレビのまんまですね』ってよく言われるぐらいパブリックイメージと変わらないらしい。

 

 だったら、そちら側の意見を聞いて、ひたすら受け入れてやってみる。すると『あれ? なんか楽しいんですけど』みたいなね」

 

 そんな経験がごまんとあると笑う。そして意外なことを話した。

 

「僕は美意識がないんです。アーティストじゃなくて役者なんで。僕が考えている役のイメージもあるけれど、僕をキャスティングする前から、その役のことを考えている人たちがいらっしゃる。だったら、そちらのイメージを尊重したほうがいいと思うんです。

 

 衣装を選ぶときに『おすすめはどれですか?』と聞いて、そのおすすめを着る。『ちょっと違うんじゃない?』となれば、別のおすすめを着る。そんな感覚に近い気がします。

 

 ご縁があってその役をやるけれど、究極を言えば、僕じゃなくてもいいわけですよね。これだけ個性を出しまくっている僕が言うのもなんですけど、役者には『お前の個性』なんて必要ないということだと思うんです。でも、やっていくうちに僕の体を通すから、言葉にできない発見や、個性が後から生まれるんだと思います」

 

 今、八嶋が取り組んでいるのは、2022年1月7日から上演される舞台『ミネオラ・ツインズ』だ。ポーラ・ヴォーゲル作のダークコメディで、大原櫻子(25)が双子姉妹マーナとマイラを演じ、小泉今日子(55)と共演する。物語では1950年、1969年、1989年のアメリカの時代の移り変わりとともに、多様化、多様性が描かれる。51歳の八嶋が、マーナとマイラの「息子」を演じる。

 

「キャスティングされたんで、14歳のアメリカの男の子をまじめに演じますよ。それが演劇の可能性だと思っていますから。人間性は社会的な背景で決まるのではないかということを、極端に凝縮して演じることで、世の中全体が抱えている問題は何かがわかるのではないか。このお芝居を観て劇場を出て世の中を眺めたときに、どう感じるかという作品なので、劇場でぜひ観ていただきたいです」

 

 食べ終わると八嶋は姿勢を正して箸を置き、眼鏡をかけ、ラーメン道の求道者のごとく「ごちそうさまでした」と一礼。静かに店を出て、再び役者の極みに向かう道へ戻った。

 

やしまのりと
1970年9月27日生まれ 奈良県出身 1990年、松村武とともに劇団「カムカムミニキーナ」を旗揚げ。同劇団の看板役者として活躍中。1996年からテレビドラマに出演。2001年の『HERO』(フジテレビ系)で注目され、同年からバラエティ番組『ココリコミラクルタイプ』に出演、2002年からの『トリビアの泉〜素晴らしきムダ知識〜』(いずれもフジテレビ系)では高橋克実との名司会で人気を博す。以降、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。2022年、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演。シス・カンパニー公演『ミネオラ・ツインズ〜六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ〜』(2022年1月7日〜31日まで東京・青山のスパイラルホール)に出演予定

 

【八雲】
住所/東京都目黒区東山3-6-15エビヤビル1F
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定休日/火曜
※新型コロナウイルス感染拡大の影響により、営業時間、定休日が記載と異なる場合があります。

 

写真・野澤亘伸

 

( 週刊FLASH 2022年1月4日・11日・18日号 )

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