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ひろゆき 子供の“連れ去り問題”に「連れ去った側が有利」発言は本当? 弁護士に聞いてみた
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.05.06 15:15 最終更新日:2022.05.06 15:16
《夫婦が揉めてる時は、子供を連れ去った側が有利で、連れ去られた側は子供に会うことすら出来ないのが当たり前という制度はどうかと思うんですよね。裁判しても覆らないという謎制度。》
5月4日、実業家のひろゆき氏が投下したツイートが、話題を呼んでいる。夫婦の対立や離婚の際、片方の親の同意なく子供を連れて行く行為が“連れ去り”問題として取り上げられつつあるなかで、日本の法制度に疑問を呈した形だ。
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はたして、ひろゆき氏の見解は正しいのか。離婚問題に詳しいあおば法律事務所の橋本智子弁護士に話を聞いた。
「ひろゆきさんがおっしゃるような現象が、しばしば起きているのは事実です。しかしこれは、物事の本質を捉えていない、極めて浅いご意見だと言わざるをえません」
橋本氏によると、子供の“連れ去り”といわれる事態には、大きく2つのパターンが存在するという。1つは、それまでメインで育児をしてきた側が子供を連れて別居する、いわゆる「子連れ別居」。日本社会では、多くの場合、育児を担っているのは母親のため、母子で家を出るというケースが圧倒的だ。
もう1つは、夫婦間でのDV加害者――多くの場合は父親が、妻との離婚を阻止するために子供を実家などに預けてしまうパターン。子供を人質のような扱いにして、妻を自分の元につなぎとめておこうとする、あるいは自分の支配下から逃げようとした妻への報復をしようとする、卑劣な行為だ。
「“連れ去り”行為を攻撃する人は、2つのパターンを混同していることが多いんです。どちらにしても『連れ去った側が有利』という言い方は誤解を招きます。正しくは、『メインで育児をしてきた側が有利』です。
家庭裁判所が重視するのは、どちらが量的に多く育児を担ってきたか。ここ10年ほどの家裁では、もともとの同居中に、主として子育てしていた側に子供をいさせるべき、という考え方が確立しています。子供のおむつ替えをしてきたのは、食事は、送り迎えは、緊急連絡先は誰か……ある程度、外部の人たちから見てもわかることが多く、立証が容易なんです。ですから、きちんとした手続きを踏めば、十中八九、育児をしてきた側が子供と一緒にいられます。
最近では育児をする父親も増えてきて、母親6割、父親4割というケースを担当することもありました。同居中は半々に近い分担をしていたのですが、母親がある日突然、子供を置いて家を出ていき、それからは父親が1人で子育てをしていたという事案でした。それでも、最終的に親権を勝ち取ったのは母親です。それほど、家裁は同居中の育児量を大きな判断基準にしています」
面会の構造についても、橋本氏はこう指摘する。
「子連れ別居をするのは多くの場合、母親です。現代社会で、シングルマザーとして生きるのは非常に大変ですが、逆にいえば、それ以上に夫との生活がつらいから出ていくんです。私が扱うケースでは、夫からの有形無形の暴力が背景にあって、出ていくパターンばかり。
こうした場合、夫が子供への面会を希望するのは、『妻に対する支配を継続させたい』という動機が本当に多いんです。もともと面会交流というのは、相互の協力があって成り立つもの。妻側にとっては、やっと離れられた相手と連絡を取って、スケジュール調整をするという行為自体がしんどいでしょうし、子供を会わせたくないと思うのは無理からぬことです。ましてや夫の側に妻に対して協力や配慮する姿勢に欠けていれば、結果的に、なかなか会えなくなる、という現象はもちろん起きます。その場合は、自身の振る舞いを省みつつ、離婚後の関係性の再構築に向けて、その人なりに誠実に行動するしか道はないのではないでしょうか」
“連れ去り”といわれる行為に至るまでの積み重ねには、人それぞれの経緯がある。ひろゆき氏の認識ほど、事はそう単純な話ではないようだ。
( SmartFLASH )