やはりこの作品は、悪役2人がいかに調子に乗った表情で憎々しく見せ、“負け顔” を出したときとのギャップが際立つかにかかっているのだろう。
韓国ドラマ『梨泰院(イテウォン)クラス』のリメイクで、竹内涼真が主人公・宮部新(あらた)を演じる『六本木クラス』(テレビ朝日系)。六本木で居酒屋を営む新が、非情な仕打ちで自分と父親の人生を狂わした大手飲食店グループ会長・長屋茂(香川照之)と、その息子・龍河(早乙女太一)に復讐を誓うストーリーである。
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恥ずかしながら筆者は原作を観ていないのだが、未見だからこそフラットに観られるというもの。そこで今回は『梨泰院クラス』を通ってきていない者として、先週放送の『六本木クラス』第8話を忌憚なく評していきたい。
■早乙女太一の顔芸で視聴者はスッキリ
第8話は新の直接の因縁の相手であり、父親を殺した張本人でもある龍河の失脚が描かれた。新の仲間が龍河を策にはめて、武勇伝のように龍河自らが新の父を轢き逃げしたことを饒舌に語っているところを録音。
憤慨した龍河はその仲間を殴りつけるのだが、調子こいてペラペラと自白する表情から、録音に気づいて慌てふためき逆ギレする表情に転じるところなど、龍河演じる早乙女の顔芸はなかなかのもの。視聴者がイライラするツボを絶妙に突いてくる。
新が助けに入り、龍河は暴行で警察に連行されたため、翌日には大手グループ会長の息子が逮捕されたと大々的にニュースで報じられる。また、仲間が自白音声をネットにあげたことで、人殺しの罪から逃れた腐れ外道だと一気に悪評が広まり、龍河は大ピンチに。
そして終盤、信頼していた父・茂がとうとう息子を切り捨てる決断をし、助けてくれると思っていた父親に龍河は裏切られたことに気づく。
第8話の見せ場は、龍河の狼狽する表情や情けなく観念した表情だと言っても過言ではない。早乙女は、龍河というクズのボンボン息子が、ダサいキャラクターになればなるほど、視聴者が喜ぶことがわかっているのだろう。とにかく “負け顔” 演技がたまらなかった。
新の目的は会長・茂の解任決議案を通し、グループから長屋親子を追い出すことなのだが、龍河を切り捨てたため、茂の解任決議案は否決され、事実上、負けた形になった。
新や仲間たちは大ボス・茂にしてやられたことに落胆したが、視聴者としては中ボス・龍河の最高の “負け顔” が観られたわけだ。龍河は法の下に裁かれるだけでなく、社会的制裁も受けるはずなので、もう元の地位には戻れないだろう。
視聴者のこれまで鬱積していたストレスもある程度発散できたはずで、見応えのある回だった。
■皮肉にも香川照之のスキャンダルが
残るは大ボスの茂になったわけだが、“敵を欺くにはまず味方から” を地でいくように、龍河を騙して新たちを出し抜いた彼に対し、視聴者の苛立ちや憎悪もピークに到達しつつあるだろう。
だが、茂がこれでもかとドヤ顔や不遜な態度を見せ、視聴者のマイナス感情が高まれば高まるほど、クライマックスで新たちが勝利し、茂が情けない “負け顔” を見せたときのギャップが大きくなる。つまり、それだけ視聴者が最終回で得られる快感が大きくなるわけだ。
そうやって考えると、もちろん主役を演じる竹内の演技も重要なのだが、それ以上に悪役2人の演技が、この作品の盛り上がりを左右しているように感じる。
くしくも茂を演じる香川が、2019年に銀座のクラブでホステスに性加害をおこなったことが『デイリー新潮』に報じられ、好感度が下がりまくっている。皮肉にも香川のイメージが失墜するスキャンダルが世間を騒がせていることが、『六本木クラス』への注目度も高めている状況だ。
――本作の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は、第1話から第7話まで9.6%、8.6%、7.0%、8.1%、9.1%、9.2%、9.3%と推移し、とうとう先週放送の第8話で10.0%と大台の二桁に乗せている。
今クールのドラマは、TBSの看板枠「日曜劇場」の『オールドルーキー』も、フジの看板枠「月9」の『競争の番人』も、二桁視聴率でスタートしたものの維持できず一桁に陥落。そんななか、一桁視聴率でスタートした『六本木クラス』が、後半戦で二桁に乗せてきた状況は、実に興味深い。
5週連続で視聴率を上げてきている『六本木クラス』が、今夜放送の第9話でさらに視聴率を高めるかどうかにも注目だ。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中
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