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『家庭教師のトラコ』奇抜だった橋本愛が悪い意味で “無色透明” になった最終話【ネタバレあり】

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.22 15:50 最終更新日:2022.09.22 15:51

『家庭教師のトラコ』奇抜だった橋本愛が悪い意味で “無色透明” になった最終話【ネタバレあり】

 

 きれいにまとまった最終話。だが、あんなにも尖りまくって奇抜だった主人公が、悪い意味で無色透明(=無個性)になってしまっていて、いまいち没入できないまま淡々と終了したように感じた。

 

 9月21日に最終話(第10話)が放送された橋本愛主演『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系)のことだ。

 

 志望校に100%合格させると豪語するも、突然キテレツな行動に出る謎多き家庭教師・根津寅子(橋本)が主人公のヒューマンドラマ。『女王の教室』(2005年/日本テレビ系)や『家政婦のミタ』(2011年/日本テレビ系)といった大ヒットドラマを手掛けてきた脚本家・遊川和彦氏のオリジナル作品である。

 

 

■最終話の寅子は “普通のいい子”

 

 物語中盤までの寅子の家庭教師としてのスタイルは、異様なほどに独特だった。

 

「どんな志望校も合格率100%! しかも授業料はそちらが決める!」という怪しげな勧誘メールで生徒を募り、《1、教育方針には絶対口を出さない》・《2、授業中は部屋を絶対覗かない》・《3、授業の日はお宅に泊めていただきます》という条件も課す。

 

 また、担当する家庭ごとに服装や人格といったキャラクターをガラリと変えるスタンス。ある家庭にはメリーポピンズのような姿で現れたかと思えば、ほかの家庭には妖しくセクシーな美人教師風、また別の家庭には暑苦しい熱血教師風にしていた。

 

 中盤までは人を食ったような奇妙な言動と破天荒な手法で、教え子の家庭問題を次々と解決していき、個性的な主人公による独特なストーリーとなっていた。

 

 しかし、物語後半で実母に捨てられた寅子自身の壮絶な過去のトラウマが明かされ、それを乗り越えた結果、最終話の彼女は胸のつかえが取れて晴れ晴れしており、普通のいい子に……。

 

 偽るのをやめ、もとのありのままの自分で家庭教師をするのだが、言っていること、やっていることは素晴らしいものの、いかんせん普通に常識的なのだ。

 

 たとえば中盤までは毎話、「わかんない」「しょうがない」「すごくない?」「心配ない」「ツイてない」といった “嫌いな言葉” を発表しており、特に「愛」を一番嫌いな言葉にあげていた寅子。

 

 けれど最終話の彼女は、“好きな言葉” が「覚悟」「勇気」「愛」だと熱っぽく語るのである。一番嫌いだと言っていた「愛」が好きな言葉に変わったという伏線回収なのだろうが……なんだか安直すぎないだろうか。

 

 また、これまでかかわってきた3家族の母親たちに深い親愛を抱くようになっており、「お母さん」と呼べる存在になっていた。

 

 心を閉ざし一人で生きてきた寅子だったが、精神的に強くつながった家族のような存在ができたという結末。これもなんだか予定調和すぎやしないか。

 

■“毒” を残しておいてほしかった

 

 寅子の魅力はズバリ “毒”。

 

 しかし、誤解を恐れずに言わせていただくと、最終話の彼女は愛だのなんだのと普通に正しいことを言うばかりで、毒々しさのない無色透明のいい子ちゃんだった。

 

“毒” が抜けて精神的に成長した主人公を描いた話だということは、もちろん理解している。そういう成長物語なのはわかるのだが、ラストの寅子はあまりに聖人化されすぎていて、それゆえに小さくまとまってしまったように見えて非常に残念。

 

 せっかくキテレツな毒キャラで独創的な個性を出していたのだから、その “毒” をある程度残した形で成長した姿を示してほしかった。

 

『女王の教室』『家政婦のミタ』を生み出した大御所脚本家・遊川氏の作品ということで、期待値を上げて観てしまったのかもしれないが、精神的に成熟したかわりに武器(個性)を失った主人公に、物足りなさを感じたのは筆者だけではないはず。

 

 ――ちなみに本作の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は、第1話から最終話まで7.5%、7.0%、5.4%、5.6%、5.0%、6.1%、5.5%、5.4%、5.8%、4.7%と低水準で推移。しかも最終話で最低視聴率を更新してのフィニッシュとなった。いくら視聴率が絶対的基準ではないとしても、全話平均で5.8%の作品をヒットとは言いづらい。

 

堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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