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『初恋の悪魔』序盤のコメディから一転してシリアスに…願わくば別作品として観たかった【ネタバレあり】
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.26 09:05 最終更新日:2022.09.26 09:05
序盤と終盤で、まるで別の作品を観ているようだった『初恋の悪魔』(日本テレビ系)。
林遣都と仲野太賀がダブル主演し、松岡茉優と柄本佑が主要キャストで名を連ねた本作が、9月24日に最終話を迎えた。
古くは『東京ラブストーリー』(1991年/フジテレビ系)を大ヒットさせ、近年は『カルテット』(2017年/TBS系)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年/フジテレビ系)といった話題作を生み出している脚本家・坂元裕二氏の最新作である。
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■【ネタバレあり】すべて計算された脚本だった
この全10話のドラマを序盤・中盤・終盤に分けるとしたら、序盤は警察署を舞台にした事件解決型のコメディだった。
主要キャラ4人は刑事課の現役刑事ではない。1人は刑事課を停職中で、残り3人は署内の総務課、会計課、生活安全課だ。4人とも職務上は大きな事件と無関係ながら、毎回事件に首を突っ込んで謎を解明していくというストーリー。
キャラが濃い4人の軽快な掛け合いによる会話劇で魅せ、随所にクスッと笑えるシーンが盛り込まれたコミカルなドラマだった。
しかし中盤から急角度で物語のベクトルは変わり始め、終盤になるとギャグ要素は最小限まで絞り込まれ、シリアスなサスペンス・ミステリーの様相を呈するように……。
念のため説明しておくが、視聴率不振でテコ入れの路線変更があったわけではない。序盤から仲野が演じた主人公の兄が不可解な事故死をしていたことや、松岡演じるヒロインが二重人格であること、伊藤英明演じる署長の怪しい言動が描かれており、それらの伏線が終盤で回収されるので、最初からすべて計算された脚本だったことは間違いない。
また、物語のテイストはコメディからシリアスに変貌するものの、登場人物たちのキャラクター(性格)が不自然に変更されたこともない。彼らが放り込まれた状況がガラリと変わっただけで、当たり前だが序盤から終盤までひとつの連続した物語としてつながっている。……のだが、本当にあまりにもテイストが違うので度肝を抜かれたのである。
■コミカルな序盤テイストで完走する『初恋の悪魔』も観たかった
『初恋の悪魔』は個人的に今期ドラマのなかで1、2を争うほどハマったドラマだった。序盤のコメディテイストも終盤のシリアステイストもハイレベルで面白いと感じたし、どちらも好みだ。
しかし、これだけは言わせてほしい。正直、別々の作品として観たかった。
序盤のテイストで1作品、終盤のテイストで1作品、それぞれ別もので作ってほしかった。どちらかというと、序盤のギャグ要素がふんだんな1話完結型の事件解決もののほうが好きだったため、最後まで序盤のテイストを貫いて全10話を観たかったのが本音。
終盤は終盤で、ミステリー作品として上質だったと思う。ネタバレになるが、一連の連続殺人事件の真犯人である署長の息子が終盤になるまで登場しなかったので、序盤・中盤で主人公の兄の不審死の原因や署長の思惑などを的確に考察するのはほぼ不可能だったろう。
とは言え、ひたすら不気味だった署長が真犯人という安易なオチではなかったこと、そんな署長の行動原理が “息子の犯罪を揉み消す” というものだとわかり、ストンと腑に落ちたことなど、練られた脚本で引き込まれた。
けれど、そのシリアス展開のせいで、ギャグシーンが激減したので割を食った感がある。
林、仲野、松岡、柄本が演じた役柄は、それぞれクセが強すぎて友達が少ないタイプ。そんな4人が序盤の1話完結の事件に首を突っ込んでいくうちに徐々に打ち解けていき、あだ名で呼び合うようになり、お互いを「友達」と認識するまでの過程は笑えたし、ほっこりもした。特に林の役と柄本の役はどちらも電波系の変人キャラで、どこか似ている部分があったからこそ当初は反発し合っていたのだが、彼らが友情を感じ始める姿は微笑ましかった。
だが、4人が序盤の数話で結束を深め、コミカルな掛け合いの練度も高まって来て、ここからさらに会話劇の妙が発揮されてたくさん笑わせてくれるだろうと思っていた矢先に、路線変更してシリアスになってしまい……。筆者は4人のなかで柄本が演じた役が好きだったのだが、中盤から終盤にかけて彼にスポットが当たるシーンや変態的な持ち味が描かれるシーンが減ってしまい、影が薄くなったのが残念極まりない。
斬新な構成の意欲作だったと思うし、終盤のシリアスな展開もそれはそれでアリだったのだが、コミカルな1話完結ものだった序盤のテイストのまま完走する『初恋の悪魔』も心底観たかった……。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中
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