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『相棒 21』寺脇康文のセリフの違和感を分析…脚本の質の低下ではなく、意図的なキャラ変と見た理由

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.10.19 11:00 最終更新日:2022.10.19 11:00

『相棒 21』寺脇康文のセリフの違和感を分析…脚本の質の低下ではなく、意図的なキャラ変と見た理由

写真:Motoo Naka/アフロ

 

「昔の薫ちゃんならそんなこと言わない」「亀山のキャラ変わった?」など、ファンから批判や違和感の声が相次いだ、初代相棒にして新相棒の亀山薫(寺脇康文)。視聴者をザワつかせた発言や、命を落とした女性への対応などをめぐって、脚本の質の低下を指摘する意見も少なくなかった――。

 

 水谷豊が主人公・杉下右京を演じるご長寿&高視聴率ドラマ『相棒 21』(テレビ朝日系)が、先週水曜、いよいよスタート。その期待値の高さが見事に視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)にも表れており、平均世帯視聴率17.3%、平均個人視聴率9.8%という貫禄の数字を叩き出している。

 

 

 シーズン21を迎えた本作は、14年ぶりに初代相棒だった亀山が新相棒としてカムバックし、古参ファンを中心にかなりの注目を集めた。

 

 反町隆史が演じた4代め相棒の卒業シーズンとなった昨年の『相棒 20』の第1話は、平均世帯視聴率15.2%。テレビ業界全体で視聴率が急激に低下している昨今において、前年比で2%以上超えてくるのは驚異的と言ってもいいだろう。

 

 けれど、大きな期待の反動もあってか、不満を口にするファンも少なくなかったのである。

 

■自害女性を1人にしたのは確かに迂闊、脚本が悪い

 

 では、どういったシーンが視聴者をザワつかせたのか確認していこう。

 

 そもそも本作は、推理が冴える切れ者の警視庁特命係・杉下右京が、歴代の相棒と力を合わせさまざまな難事件を解決していく刑事ドラマ。

 

 2008年のシーズン7で、南アジアにあるという架空の国・サルウィンに渡っていた初代相棒・亀山薫が、サルウィン親善使節団の一員として日本に帰国したところからシーズン21は開幕した。

 

 腐敗した政府を倒した反政府運動のリーダー・アイシャらサルウィン御一行を歓迎するパーティーで、右京と薫は再会。しかし、薫のスマホにアイシャを殺害しなければ妻が乗った旅客機を墜落させるという脅迫メールが届き……というストーリーだった。

 

 その後、差出人不明の脅迫メールは、実は薫を含め6名が受け取っていたことが判明し、アイシャは飛行機に乗る150人の命を救うため自死。アイシャが亡くなったことを犯人が把握したからか、飛行機は無事に到着した。

 

 アイシャが責任を感じて自ら命を絶つ可能性を右京や薫が想定しておくべきなのに、そんなアイシャを1人きりにしていたというのが、一部の視聴者から「脚本がお粗末すぎる」と批判されたのだ。

 

 確かにアイシャを放置したのは迂闊だったように思うし、推理力に長けている右京らしからぬ失態だと感じた。そのため、この点で脚本が悪いと指摘されるのは致し方ない気がする。

 

■昔の薫ならどちらも救う道を探したはず…という声

 

 ただ、もうひとつファンが指摘した箇所があった。

 

 まだアイシャの自死を知る前の右京と薫が口論となるシーン。脅迫はハッタリの可能性が高く、アイシャを殺せば後悔することになるから静観すべきと主張する右京に対し、薫は何もせずに飛行機が落ちたらもっと後悔すると反論。そして、その後に薫が放ったのが次の発言だ。

 

「150人以上の大切な人たちが犠牲になる。1対150! アイシャがどれだけ素晴らしい人間だとしても1つの命です。150の命と引き換えにしていいとは思えません」

 

 サルウィンの学校で日本語を教えていた薫にとって、アイシャは元教え子。つまり、薫はそんな親しい関係性だった女性を死なせることを選択肢に入れている、もしくは殺害されることを容認する考えを口にしたことになる。

 

 苦渋の末の発言であることは十分伝わってきたが、それでも右京・薫コンビ時代から作品を愛するファンからは不満の声が。特に多かった声を要約すると、「昔の亀山薫ならどちらかを犠牲にするなんて考えない、どんなに困難でも絶対にどちらも救うと言ってガムシャラにがんばるはず」というもの。

 

 そのため、「昔の薫ちゃんならそんなこと言わない」「亀山のキャラ変わった?」と脚本に批判が集まることに。

 

■熟年夫婦のような間柄ではすぐ飽きられるリスクも?

 

 ただ、この薫の発言に対して脚本を叩くのは早計な気がしてならない。おそらくこの薫の発言は、質の低い脚本家が薫のキャラを理解せずに書いたわけではなく、彼のキャラが変わったように見せるため、あえて作ったセリフのように思うからだ。

 

――ドラマを盛り上げるために必要なのは “障害” である。

 

 しかし、7シーズンもバディを組んで苦楽をともにした右京と薫は、固い絆で結ばれた “ツーカー” の間柄すぎて、以前のままの薫が戻って来ても、乗り越えるべき壁を作りにくい。

 

 もちろん厚い信頼関係がある2人の息の合ったコンビネーションは見応えがあるだろうが、昔と変わらない安定した掛け合いだけでは予定調和を崩せない。下手をすれば、2、3話観たところでファンが満足しきってしまうかもしれない。その先にあるのはファンが飽きるというリスクだ。

 

 亀山薫は、初代相棒であると同時に “新しい相棒” でもある。序盤から熟年夫婦のようなバディでは新鮮味がなさすぎるし、ハラハラして視聴者を引き込むストーリーを作りにくいだろう。

 

 つまり、薫のキャラ変は “わかってない脚本” ではなく、シーズン21の縦軸として、右京との不和や衝突を生み出すための意図的な変更に違いない。要するに、批判や不満は覚悟のうえ、織り込み済みで書かれた肝いりのセリフなのだ。

 

 きっと、キャラ変した薫がもたらす “障害” もゆくゆくは乗り越え、今シーズン中に2人の間には今まで以上に強固な絆が生まれるはず。そう期待して、今夜放送の第2話以降も観ていきたい。

 

堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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