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櫻井翔『大病院占拠』ラスボスの青鬼がキャラ崩壊した理由を考える…もしかして脚本上の都合?【ネタバレあり】

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.03.19 16:50FLASH編集部

櫻井翔『大病院占拠』ラスボスの青鬼がキャラ崩壊した理由を考える…もしかして脚本上の都合?【ネタバレあり】

真剣な表情で路地裏を走る櫻井

 

 脚本の都合で、ラスボスの大義や性格が歪められてしまったように感じた最終話だった。3月18日に第10話で完結を迎えた嵐・櫻井翔主演のサスペンスドラマ『大病院占拠』(日本テレビ系)のことだ。

 

 奇怪な鬼のお面をかぶった武装集団に病院が占拠されてしまい、神奈川県警捜査一課の主人公・武蔵三郎(櫻井)が鬼たちに翻弄されながらも事件解決を目指すストーリー。序盤回で隠されていた鬼たちの素顔が、中盤回で次々と判明していき、なかでも鬼のリーダー・青鬼を演じているのがSexy Zone・菊池風磨であることが明らかになると、大きな盛り上がりを見せた。

 

 

■【ネタバレあり】鬼たちの真の目的とは?

 

 櫻井がシリアスさに欠ける演技や緩慢なアクションを見せたり、爆破や落下のシーンでトンデモ展開が起こったりすると、視聴者がTwitterなどでああだこうだと書き込みながら楽しむスタイルが定着していた本作。そういった大味なところもこのドラマの醍醐味となっていたため、筆者も細かなところはなるべく気にしないで観るようにはしていた。

 

 しかし、個人的に最終話でどうしても引っかかってしまったのが、青鬼が武蔵を恨んでいた理由についてだった。

 

 ――ネタバレになるが、ここで鬼たちの真の目的を説明しておく必要がある。

 

 鬼たちの最終目的は、県知事や県警本部長が極秘で進めていたワクチン開発計画の “罪” を公表し、国民の審判を仰ぐこと。感染力と致死率が非常に高いウイルスのワクチンを開発していたので、この計画自体が悪いわけではないのだが、その研究過程でウイルスに感染した3人が死亡。その事実を、計画の頓挫をおそれた知事と本部長が隠蔽し、またその秘密に気づいた者も殺されてしまった。

 

 鬼たちはその亡くなった犠牲者の家族や恋人など。青鬼は妹を亡くしていたのだ。青鬼はライブ配信でワクチン開発計画の “罪” を暴いたうえで、愛する人の命を優先する鬼の正義と、日本国民・1億2000万人の命を優先する知事の正義、どちらが正しいと思うか国民に投票を呼びかけた。

 

■ラスボスは主人公に逆恨みしていただけだった

 

 現実的に考えれば、どちらの主張が正しいのかという問いに、容易に答えは出せないだろう。価値観が違えば正解も変わるものなので、どちらの正義も理解できるからだ。ただし、鬼も知事も非人道的な方法を用いてしまっている時点で、どちらの正義も清廉潔白ではなく、大局的に見れば “同じ穴のむじな” に思える。

 

 さて、国民投票の結果はというと、僅差で鬼の支持が上回り、勝利。青鬼は大義名分を得たことになる。けれど筆者には、青鬼がせっかく掲げた大義を、自らの言動で台無しにしたように見えてしまった。それが、青鬼が武蔵を恨んでいた理由だ。

 

 1年前の立てこもり事件で武蔵が命を奪ってしまった犯人が、青鬼の養父だったというもの。養父は娘(青鬼の妹)の死の真相を突き止めるため、隠蔽に加担していた女性を人質に取っていたのだが、武蔵はやむなく発砲し、結果的に養父は死んでしまっていた。

 

 青鬼はこの事件の顛末を知り、武蔵を「お前はそんな親父を理由も聞かずに殺したんだ!」「すべてはお前から始まったんだよ。俺を鬼にしたのはお前なんだよ!」と責め立てるのだ。

 

 だが、武蔵はそんな裏事情は知らなかったし、養父が握るカッターナイフが女性の首に当たり血も出ていたため、人質を救おうとする刑事として至極まっとうな判断・対応をしていただけ。養父の悲しみはわかるが、だからといって凶行が許されるはずもない。養父に殺意はなかったとしても、現場にいた人々には人質がいつ殺されてもおかしくないように見えたはずで、そんな状況で理由を聞けというのは、かなりの無理筋。

 

 要するに、青鬼のただの逆恨みにしか思えないのである。せっかくきちっと証拠を揃えて理論武装もして、国民投票で “正義” の称号を獲得できたのに、武蔵への怨嗟を口にすればするほど薄っぺらくチープな思想に見えてしまった。

 

■両者に因縁を作っておきたかった脚本上の都合?

 

 劇中だけで考えると、武蔵を逆恨みしていた青鬼が短絡的で無思慮なキャラクターに見えてしまったのだが、考えようによっては、脚本家の都合が透けて見えてくる。ドラマを盛り上げるため、主人公とラスボスの因縁を用意しておきたかったのだろうが、脚本上の意図から逆算して設定を作ったため、青鬼の行動原理が安っぽくなってしまったのではないか。

 

 なぜ、そんなふうになってしまったのかも想像はつく。対立はしているが、そもそも武蔵と青鬼は根本のマインドが似ている。2人とも愛する家族を最優先で守りたいというポリシーが通底しているキャラ同士なのだ。

 

 そのため、本来の青鬼の性格を遵守してキャラクターを動かそうとすると、家族愛にあふれた正義漢である武蔵を恨む要素を作れない。でも、どうしても憎んでいる構図を作らなくてはいけないとなると、青鬼のキャラクターを崩して、今回のような逆恨みを因縁の発端にするしか着地点がなかったのではないか。

 

 もともとの青鬼の設定は、揺るがぬ大義を持ち、理知的に振るまうクレバーなキャラクターだったと思うが、脚本上の都合を押し通そうとした結果、キャラ崩壊してしまったのだとしたら残念でならない。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( 週刊FLASH 2023年3月14日号 )

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