エンタメ・アイドルエンタメ・アイドル

広瀬すず『夕暮れに、手をつなぐ』感情移入できず迎えた最終話、置いてけぼりのハッピーエンド【ネタバレあり】

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.03.22 16:30FLASH編集部

広瀬すず『夕暮れに、手をつなぐ』感情移入できず迎えた最終話、置いてけぼりのハッピーエンド【ネタバレあり】

 

 3月21日に放送された広瀬すず主演『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)の最終話。

 

 ごくごく個人的な感想になるし、この作品が好きなファンにはとても申し訳ないのだが、まったく没入できない恋愛ドラマだった。どうにもときめかないし、感情移入できなかった。

 

 

 この作品にときめいている多くの視聴者の感性を否定したいわけではないので、そこはご理解いただきたいのだが、逆に筆者と同じように、ときめくことができなかった人間も少なくないだろうと思う。

 

 本作は『愛していると言ってくれ』(1995年/TBS系)、『ロングバケーション』(1996年/フジテレビ系)を手がけたラブストーリーの名手・北川悦吏子氏が脚本を務める話題作。広瀬がヒロインを演じ、相手役をKing & Prince・永瀬廉が担う青春ラブストーリーだ。

 

 九州の片田舎で育った浅葱空豆(広瀬)が、同い年の音楽家・海野音(永瀬)と運命的に出会う。東京で同じ下宿先に住むことになり、ひとつ屋根の下で互いに恋愛感情を隠しながら惹かれ合っていくという物語。

 

■【ネタバレあり】どストレートなハッピーエンド

 

 まず、最終話のストーリーをざっくり説明しておこう。

 

 お互い、他に恋人ができたという誤解もあり、空豆がファッションデザイナーとしてパリに旅立ってしまう。だが、次のシーンで3年後にジャンプし、空豆は九州に帰って来ていた。パリで成功するも、仕事として目まぐるしく次々と服をデザインし続ける環境が合わず、精神的に疲弊して田舎に戻ってきたということらしい。

 

 余談だが、パリにいる空豆のシーンが1秒も描かれなかったのは違和感があった。さすがにフランスロケをするのは予算的に厳しかったのかもしれないが、パリを模したスタジオでフランス人と絡ませ、空豆が忙殺されて苦悩するシーンが挿入されていたほうが、彼女の感情を理解しやすかった気がする。

 

 一方の音は、デビューしたユニットで大ブレイクしていて、「紅白」出場が決まっていた。

 

 そんなこんなで3年間会っていなかったが、音がライブツアーで福岡に訪れた際に再会。2人が初めて出会ったときの歩道橋の上から、音が「好きだった。好きだ! 今も」と告白して、どストレートなハッピーエンドとなった。

 

 告白後、音が空豆を抱っこしてキスするシーンは、北川氏の代表作『ロングバケーション』のラストのセルフオマージュだったのだろう。

 

 恋愛ドラマにおける絵に描いたような結末だったわけだが、それ自体が悪いとは思っていない。それまでのストーリーに没入できていれば、このハッピーエンドに大感動したはずだ。

 

 しかし、いかんせん没入できていなかったので、2人の幸せそうな姿を見ても、「よかったねー」ぐらいの感想で、他人事で無感情だった。

 

 いや、もともとドラマなんて他人事なのだが、質のいいドラマは自分事のように感情移入できるわけで、最終回のハッピーエンドを他人事のように観てしまった時点で、非常に残念だった。

 

最終話ぐらいは記憶に残るインパクトがほしかった

 

 この作品に感情移入できなかった理由はベリーシンプルだ。

 

 本作には才能が突出していたり、オシャレな業界でこだわりの仕事をしたり、独創的なワードで物事を表現したりするような人間が大量に出てきた。

 

 主人公の空豆は、もともとファッションに無頓着だったのに、上京してから急にセンスが覚醒して、ファッションデザイナーの道を歩むようになる。相手役の音は、序盤回では鳴かず飛ばずだったものの、才能が認められ、いつのまにかレコード会社からデビューする。

 

 その他の登場人物も、どこかハイセンスで業界臭がプンプンする。こうしたキャラが1人くらいならともかく、こうもたくさん出てきては、普通の視聴者は、お腹いっぱいで胸焼けしてしまう。

 

 ちなみに、最終話のサブタイトルは「音の消えた世界」。そのため恋愛ドラマの金字塔『東京ラブストーリー』(1991年/フジテレビ系)のように、2人がすれ違ったまま出会えず、完全に別れてしまうというバッドエンドを期待していた。

 

 運命的に出会い、惹かれ合っていた2人が、最終的に別々の道を歩んでいくという切ないラストになっていれば、もうちょっと心に刺さったかもしれない。

 

 恋愛ドラマは、当然、主要キャラ2人がひっついてハッピーエンドになる作品のほうが圧倒的に多いので、せめてそのセオリーを破ってくれれば意外性があってよかったかなと思う。

 

 ――本作の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は8.0%でスタートし、5%台まで落ちる回が何度もあった。今のご時世は視聴率至上主義ではないものの、TVerなどの見逃し配信の再生回数でも話題になっていない。

 

 数字的な記録を残せた作品ではなかったので、最終話ぐらいは記憶に残るインパクトのあるストーリーにしてもらいたかった。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( SmartFLASH )

続きを見る

エンタメ・アイドル一覧をもっと見る

エンタメ・アイドル 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事