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『unknown』ウイカ奇跡の復活に期待したが最悪のご都合主義で幕引き【ネタバレあり】

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.06.14 17:30 最終更新日:2023.06.14 17:30

『unknown』ウイカ奇跡の復活に期待したが最悪のご都合主義で幕引き【ネタバレあり】

 

 ご都合主義が必ずしも悪いとは思わない。視聴者側の感情に寄り添ったご都合主義ならアリだと思うが、逆に制作側の思惑や雑さを補完するためのご都合主義は最悪だ。

 

 6月13日に放送された『unknown』(テレビ朝日系)の最終話(第9話)。筆者から見ると、後者の制作側の都合が優先された結末にモヤモヤが募るばかりだった……。

 

 

 高畑充希田中圭のダブル主演で、吸血鬼と人間の恋愛を軸にしたラブ・サスペンスドラマ。高畑が演じるのは、吸血鬼であることを隠して週刊誌記者として人間社会になじんでいる闇原こころ。田中が演じるのは、交番勤務の熱き警察官ながら、実は父親が殺人犯という重い過去を背負う朝田虎松。

 

 こころの家族は全員吸血鬼だが、本作における吸血鬼は人間を襲うモンスターではない。むしろ優しさにあふれ、人間と平和的な共存を望んでいる。物語前半はこころと虎松の恋愛をライトなコメディタッチでほっこり描き、同僚や町の仲間たちもノリのいい気さくな人ばかりで、心温まる作風になっていた。

 

 その一方、町では被害者の血液が抜かれて死亡するという連続猟奇殺人事件が起こっており、シリアスなサスペンスも展開されているという構成だ。

 

■【ネタバレあり】真犯人の動機がかなり強引

 

 前述したとおり、物語前半はほっこりしたラブコメ要素が強かったのだが、第5話以降でサスペンス度が急激に高まっていった。

 

 第5話のラストで、こころと虎松の飲み友達である商店街のクリーニング屋店主・五十嵐まつり(ファーストサマーウイカ)が惨殺される。そして第7話のラストでは、虎松の父親代わりで先輩警察官の世々塚幸雄(小手伸也)も殺されてしまう。

 

 まつりと世々塚は作品のムードメーカーでもあったので、2人の死はかなりショッキングだった。

 

 そして明かされた真犯人。

 

 最終話前の第8話の終盤で、3番手キャストである加賀美圭介(町田啓太)が真犯人だと判明。こころと同じ編集部の相棒で、彼女にほのかな恋心を抱いている描写がたびたびあったのだが、最終話ではそんな加賀美の過去や動機が語られた。

 

 加賀美は幼少期に両親を亡くしており、吸血鬼を題材にした絵本がきっかけで両親は吸血鬼に殺されたのだと刷り込まれていた。そのため、大人になってから、繰り返し吸血鬼を殺していた。実はまつりや世々塚も吸血鬼だったのだ。

 

 さて、ここからが本題。

 

 真犯人である加賀美が吸血鬼を恨むようになった経緯が、かなり強引なのである。

 

 加賀美の両親は不運にも亡くなっただけで、吸血鬼は一切関与していない。大人になった加賀美が吸血鬼を狙うようになったのは、要するにただの勘違いの逆恨み。

 

 子どもの頃は吸血鬼に殺されたと思い込んでもおかしくはないが、大人になってからは、両親がどのように亡くなったか調べればわかるはず。少なくても外傷はないので吸血鬼の仕業じゃないことはすぐにわかるのではないか。

 

 警察や情報屋と通じていそうな週刊誌編集者という立場であればなおのこと、両親の死の真相を探るのはさほど難しくなかっただろう。それゆえ、短絡的に吸血鬼を恨んでいたように思え、乱暴な脚本だなぁと感じてしまった。

 

 愛した女(こころ)が復讐すべき吸血鬼だと知った加賀美の、愛憎入り乱れる葛藤を伝えたかったのはわかる。吸血鬼は心やさしいのに人間の内面が怪物のようだという対比を描くことや、先入観で決めつけるべきではないという警鐘を鳴らしたかったのもわかる。

 

 だが、最初に描きたい “ゴール” を設定して、そこからヘタな逆算で設定を足していったのがミエミエ。

 

 つまり、犯人の動機に丁寧さがないのだ。吸血鬼を憎む背景がきちんと練り込まれていればもっと同情や共感もできたが、こんな適当な理由を見せられては、ただのサイコパス野郎にしか思えない。

 

■モヤモヤしてしまうツッコミどころだらけ

 

 ほかにも制作側の勝手なご都合主義が目立っていた。

 

 最大の問題は、虎松の父が犯したとされている殺人事件の真相が明かされなかった点。父親は犯人ではないと思わせるフラグが立てられていたのに、伏線を張るだけ張って放り出された感は否めない。それも “unknown” だと言い訳されればそれまでだが、大半の視聴者は事件の真相が描かれることを期待していたはずだ。

 

 また、細かいところまでツッコんでいくなら、モヤモヤする描写はまだある。

 

 まず、こころが吸血鬼と知ったうえで結婚を決めた虎松に、父親同然に接してきた世々塚が自身も吸血鬼だとカミングアウトしなかったのは不自然すぎる。

 

 次に、超人的な怪力という設定の吸血鬼たちが、スタンガンを使われたとはいえ、普通の人間である加賀美にあっさり殺されていくのも違和感ありありだ。世々塚が死の間際、虎松とこころに犯人が加賀美だと伝えなかった意味もわからない。

 

 最終話で連続殺人の容疑がかかっていた加賀美が、警察の監視下にある病院からあっさり逃げ出せてしまう展開もひどすぎる。

 

 このように制作側の都合に寄せた稚拙な脚本に辟易としてしまったのだ。

 

 ゴールだけ先に決めて、そこまでの物語を綿密に作り込まなかったことで発生した穴を、ご都合主義の脚本で雑に埋めようとするからこんなことになってしまうのだろう。

 

 冒頭で述べたように、筆者はご都合主義を必ずしも悪いとは思っておらず、視聴者感情に寄り添ったご都合主義なら俄然アリだと思っている。

 

 たとえば、死んだと思われていたまつりと世々塚が、吸血鬼の超人的な生命力で奇跡の復活を果たして、町の仲間たちが全員そろって笑顔の大団円というご都合主義なら大歓迎。

 

 吸血鬼という非現実的なファンタジー設定を土台にしているわけだし、物語前半はほっこりラブコメをさんざんやっていたわけだから、最後にそういうハッピーなミラクルが起きても違和感はなかったと思う。筆者のように、まつり&世々塚の生還エンドをひそかに期待していた視聴者も多かったのではないか。

 

 いずれにせよ、制作側の悪い意味でのご都合主義に振り回された本作は、後味の悪いまま幕を閉じた――。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

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