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AKB48らを指導した振付師・夏まゆみさんが死去 アイドルライターが見た“生徒”への「厳しさ」と「温かさ」

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.07.06 21:09FLASH編集部

AKB48らを指導した振付師・夏まゆみさんが死去 アイドルライターが見た“生徒”への「厳しさ」と「温かさ」

(写真・時事通信)

 

 モーニング娘。AKB48を育てたことで知られる、振付師の夏まゆみさんが、がんのため亡くなった。61歳だった。

 

 1990年代にニューヨークのアポロシアターに出演し、長野オリンピック閉会式の振り付けを指揮。モーニング娘。のダンスを指導したことで爆発的に名前が広まった。また、自身の名前がクレジットされるよう、歌番組の関係者と交渉を重ねるなど、振付師の地位向上にも尽力した。

 

 

 芸能界との関係も強く、吉本印天然素材、宝塚歌劇団、ジャニーズなどに振り付けを指導してきており、魂に響く指導法で、生徒たちの信頼を得てきた。

 

 私は夏さんの指導を直接見たことはないが、AKB48の柏木由紀から、こんなエピソードを聞いたことがある。

 

 2007年4月7日のこと。翌日にAKB48劇場でのデビューを控えた柏木由紀ら「チームB」の面々は、練習を終えると、ステージから降りるよう夏さんに言われた。そして、ステージに向かって一列になった「チームB」に、こんな問いかけをした。

 

「明日から、AKB48のメンバーになる覚悟がある人だけ、ステージに上がりなさい」

 

 ごくりと息をのむメンバーたち。恐る恐る、1段上にあるステージに足を乗せた。夏さんは続けた。

 

「このたった数十cmが、みんなと一般の人の差なんだよ」

 

 プロになるということは、どういうことか。まだ右も左も分からない素人たちに、覚悟を持つことの重要性を説いたという。

 

 同じく2007年のこと。私は雑誌の取材で、AKB48のシングル『BINGO!』のMV撮影に密着した。千葉県の御宿海岸付近で、朝から撮影はおこなわれていた。よく晴れた日だったこともあり、メンバーの体力はどんどん消費されていった。

 

 夕方ごろだっただろうか、長めの休憩が取られた。海岸近くの民宿のような施設の大広間で、メンバーは休んでいた。仮眠を取る者もいれば、おしゃべりに興じるメンバーもいた。大広間には緩んだ空気が漂っていた。

 

 それは唐突だった。マネージャーが「夏先生がいらっしゃったぞ!」とメンバーたちに伝えた。

 

 一瞬で空気はピンと張りつめた。寝ぼけまなこだったメンバーは形相を変えて、入口へと向かった。夏さんを中心に半円が自然とできる。先生を見つめる眼差しには信頼があふれていた。夏さんはわざわざ車を飛ばして、メンバーを激励するだけのために、千葉の御宿まで駆けつけてくれたのだ。

 

 先生は笑顔で語りかける。

 

「どう、がんばってる?」

 

 そのひとことで、何人かは泣きそうになっていた。夏さんのレッスンには厳しさもある。しかし、厳しさのなかにある温かさも、レッスンを通して知っていた。その温かさの一例が、この電撃訪問だ。

 

 先生は数分間、励ましの言葉を伝えた。「はい!」と返事をするメンバーたちを尻目に、先生はさっと帰って行った。けっして映像には残らないが、なんとも粋な演出だった。

 

 こういった心遣いが、生徒たちの信頼を得てきた理由なのだろう。訃報に接して、私が真っ先に思い出したのは、千葉でのサプライズ訪問だった。AKB48に限らず、“夏先生”に接してきた生徒たちは、どんなことを思い出しているのだろうか。

 

(文/犬飼 華)

( SmartFLASH )

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