坂本冬美の『モゴモゴ交友録』前川清さんーーご自身がオーナーの焼き肉屋さんで赤ワインをぶちまけてしまい

 

「今度、一緒にご飯でもどうかな？」

 

「来週、また一緒にゴルフに行こうよ！」

 

　男性演歌歌手の先輩から、このようなお誘いをいただくことがあります。先輩たちが経験してこられた数々の武勇伝、エピソードをお聞きするのは勉強になるし、誘っていただけるだけで光栄です。

 

　ただ、この一緒に、という言葉がクセモノで。顔はわたしに向いていますが、気持ちは、隣にいるあやちゃん（藤あや子）に向いているということが、ほぼ100％です（笑）。

 

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　やましい気持ちはなくても……、ちょっとはあるかもしれませんけどね（笑）。万が一、2人だけで食事をしているところを「FLASH」さんに撮られでもしたら、これはもう大ごとです。

 

　そこに、わたしが入っていればノープロブレム。たんなる先輩、後輩の食事会、ゴルフを楽しむ仲間となりますから、私はグリコのおまけのようなものです（苦笑）。

 

　そのお一人……とってもダンディで、スタイルがよく、歌声に艶と色気がある前川清先輩からお誘いをいただいたのは、ご自身がオーナーの焼き肉屋さん「ジバゴ」を開店してすぐのころでした。

 

　当時は、わたしもまだ若かったですから、前川さんが焼いてくださった肉をバクバクと頬張り、「もう一杯飲んじゃおうかな」と、ワインをがぶ飲み。それで気分がよくなってしまったんでしょうね。あろうことか、赤ワインをぶちまけてしまいまして……。

 

　前川先輩、あの節はご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。この場をお借りして、あらためてお詫びいたします。

 

　心の広い前川先輩は、その後も懲りずに、お食事にゴルフに、わたしとあやちゃんを誘ってくださいます。

 

　あやちゃんがとんでもない方向に打ったボールを捜しに行ってくださったり、素振りをせず、いきなりドライバーを振り回すわたしたちに、「素振りはしたほうがいいよぉ〜」と、アドバイスをしてくださったりと大忙しです。

 

　コーヒーを飲んで、前川先輩のミスショットを見ていないあやちゃんが、「ナイスショット〜！」と声を上げても苦笑いするばかりで、素顔の前川先輩はナイスガイ、正真正銘の紳士です。

 

　クール・ファイブ時代とソロを合わせ、『NHK紅白歌合戦』に出場すること29回。萩本欽一さんにその素質を見出され、バラエティ番組にレギュラー出演するなど、多彩な才能を発揮された前川先輩の演技は、これはもうわたしがいうのもなんですが、秀逸、傑出、ほかの演歌歌手には真似のできない唯一無二です。

 

　以前、前川先輩とあやちゃんが共演した舞台を観させていただいたことがあるのですが、シーツの陰に隠れて、顔も体も見せずに、手の演技だけで客席を沸かせたのには本当に驚きました。

 

　いや、それよりも何よりも、前川先輩といえば、わたしが憧れてやまない、尊敬してやまない、桑田佳祐さんがリスペクトしていらっしゃるというスペシャルな存在です。

 

　皆さん、これがどれだけすごいことなのか、わかっていただけますか!?　あの桑田さんがですよ、中学時代、前川さんと同じ髪型で、教壇をステージに見立てて、黒板消しをマイク代わりに、前川さんのモノマネをしていたというんですよ。もう、アンビリーバボーです。

 

　最近は「俺、もう声が出ないから」と、おっしゃるんですけど、とんでもない。前川節は健在どころか、さらに磨きがかかり、そこにすっと立っているだけで魅力溢れる前川先輩が、大好きです。

 

さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』（小社刊）が発売中！

 

写真・中村 功
取材＆文・工藤 晋

( 週刊FLASH 2023年9月5日号 )