交通、運輸、モビリティ産業のニュースを扱う「Merkmal」が、8月28日のネット版で「全米自動車労働組合(UAW)が、大手自動車メーカーに対して4年間で約40%の賃上げを要求している」と報じている。
「UAW」は、アメリカの3大自動車メーカーGM、フォード、ステランティス(クライスラー)の労働者が加盟する巨大労組。ちなみに現在の時給は64ドル(約9300円)で、賃上げ後は150ドル(約2万2000円)が想定されるという。
単純に64ドルの4割増しにならないのは、「4年間で40%アップ」に加え、「年金の復活」「退職金のアップ」「労働時間の短縮」など複合的な要求が実現した場合の「合算時給」のようだが……そもそも、これだけ高額の時給を要求する根拠はなんなのか。
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「Merkmal」の記事では、
・大手自動車メーカーの最高経営責任者(CEO)の報酬が過去4年間で平均40%増加
・過去10年間で約2500億ドルの利益を上げている
・過去4年間でインフレ率が約20%上昇し、賃上げが物価水準に追いついていない
と指摘されている。仮に時給2万2000円で1日8時間20日勤務すれば、月給は352万円、年収では4224万円になる。ただし、労働時間も短縮されるため、実際には年収2000万円ほどになるそうだ。
経済ライターがこう指摘する。
「今回の賃上げ要求が全米で大きなニュースになっているのは、労使が結んでいる4年契約が9月14日に期限を迎えるからです。当然ですが、企業は賃上げに難色を示しています。
時給150ドルになれば、もちろん収益は圧迫されますし、関連する自動車産業も賃上げを迫られることになるでしょう。すると、自動車の販売価格が上がりますから、ゆくゆくは買い控えにつながることが予想されます」
実際、記事のコメント欄には、「うらやましい」という声だけでなく、
《これじゃあ人件費が掛かりすぎてやっていけなくなるでしょ。ちょっとでも販売不振になったらすぐ大赤字に転落する》
《今度はあげた人件費が原因で、リストラの波が来る可能性も高くなることも忘れてはいけない》
《そんなことしてたら、アメ車高くなりすぎて世界で売れなくなるでしょ》
と心配する声も数多く書き込まれている。
「このところ、アメリカのインフレは鈍化傾向です。価格変動の大きいエネルギーと食品を除いた指数も伸びが縮小しています。しかし、人手不足は相変わらずで、企業間で賃上げ競争が激化しています。そのことがUAWを強気にさせているようで、『ストライキも辞さず』の構えです」(前出・経済ライター)
最高時給1000円でスッタモンダしている日本とは別世界だが、これだけ差がつけば、今後、アメリカへの出稼ぎを目指す日本人が増えるかも――。
( SmartFLASH )