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杉野遥亮『ばらかもん』主人公の問題がほぼ解決してドキドキが消滅、セオリー無視のほっこり感満載ドラマ【ネタバレあり】

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.08.30 11:00FLASH編集部

杉野遥亮『ばらかもん』主人公の問題がほぼ解決してドキドキが消滅、セオリー無視のほっこり感満載ドラマ【ネタバレあり】

 

 第7話にして、早くも主人公が抱えていた問題や心のよどみが、ほぼ解消されるという展開。だが、『ばらかもん』はこれでいい。

 

 先週水曜に第7話まで放送されている『ばらかもん』(フジテレビ系)は、五島列島(長崎県)の美しい海辺の町を舞台にしたハートフル “島” コメディー。

 

 

「ばらかもん」とは五島列島の方言で “元気者” を意味する言葉だという。杉野遥亮がゴールデン・プライム帯の連ドラ初主演を務めている。

 

 高名な書道家・半田清明(遠藤憲一)を父に持つ半田清舟(杉野)は、世間にもてはやされてきたプライドの高い27歳。父と同じく書道家の道を歩んでいるエリートだ。そんな主人公が、ある事件をきっかけに生まれ育った東京を離れ、五島列島で一人暮らしを始めることに。

 

 島で静かに書に向き合うつもりだったが、近所の小学生・琴石なるをはじめ、勝手に家に上がり込んでくる個性豊かな島民たちに翻弄されながらも、助けられ励まされ、成長していく物語である。

 

■ラスボスかと思いきや、あっさり和解

 

 冒頭でお伝えしたとおり、清舟がぶつかっていた壁や悩みは、第7話の段階でだいたい全部解消されてしまった。

 

 そもそも清舟が島に来るきっかけとなった事件とは、ある賞を受賞した際、書道界の重鎮である美術館館長から「実につまらない字だ」と酷評されたこと。激高して館長に掴みかかってしまい、父親から「お前は書道家の前に人間として欠けている部分がある」と言われ、五島列島での生活を命じられた。

 

 要するに館長は、ラスボスのような存在になってもおかしくないポジションだったが、第5話であっさり和解。島で人間的に成長した清舟を許し、さらには彼の新作を称賛したのだ。

 

 さかのぼると、第3話では清舟を差しおいて大賞を受賞した18歳の若手天才書道家が登場するも、すぐに清舟に懐いて仲間のような存在になっていた。

 

 先週の第7話も、清舟がコンプレックスを抱いている父との書道対決が描かれたが、もともと父親は人格者なので、バチバチにいがみあうことはなく、穏やかな決着に。父の「お前の字は、本当に美しくて、規則正しい。そして……素直な字だ」という言葉で、清舟は自らを縛りつけてきた心の鎖から解放され、号泣するのだった。

 

 ちなみに第7話では、父と母が清舟に見合い話を持ってくるのだが、その相手と結婚する場合は東京に戻らなくてはならない。このエピソードを最終話まで引っ張って、清舟は東京に戻るのか、それとも島に残るのか、というクライマックスの盛り上がりに使うこともできただろうが、第7話で見合い話は断って両親も納得。帰京フラグをあっさり引っ込めたのである。

 

 このように、主人公を取り巻く数々の問題は第7話時点でほぼ解決してしまった感があるのだ。

 

■日曜劇場『VIVANT』とは真逆の戦略か

 

 ドラマのセオリーで言えば、主人公に壁や悩みはつきもので、逆にそれがないと物語は盛り上がりにくい。けれど、『ばらかもん』はそんな定石をあっさり無視し、終盤に入る前に主人公が抱える不安要素をほとんど消し去っている。

 

 本作には悪人が出てこず、主人公は善人たちに囲まれているので、もともとハラハラ感やドキドキ感は最小限。主人公と同様、視聴者もやさしい世界観にひたってもらい、ほっこりさせることに徹していた。

 

 そうはいっても、館長との確執や父へのコンプレックスが “盛り上げ装置” として用意されていたわけだが、もうそれらもすべて解決ずみ。ここから、ますますハラハラドキドキ感は鳴りを潜めるのだろう。

 

 これは今夏最大の話題作である日曜劇場『VIVANT』(TBS系)とは真逆の戦略に思える。『VIVANT』は毎度毎度、視聴者をハラハラさせ、しょっちゅう驚きのどんでん返しを仕込んでいる。

 

『VIVANT』が興奮状態でアドレナリンを出させるストーリーだとしたら、『ばらかもん』はリラックス効果があるセロトニンを出させるストーリー。『ばらかもん』はたいした波乱もない物語だが、それこそが最大のウリだと感じる。

 

 ――『ばらかもん』の世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ/関東地区)は、第1話から第7話まで5.9%、5.3%、5.3%、5.0%、4.7%、4.3%、4.8%と低調。だが、初回からさほど数字を落としておらず、固定ファンがしっかりついていることがわかる。見逃し配信の人気の指標となるTVerのお気に入り登録者数も、60.2万人(8月28日現在)とまずまずだ。

 

 今夜放送の第8話では、今まで姿を現さなかった小学生・なるの親がフィーチャーされる模様。だが、きっと今回もたいして重苦しくならず、クスッと笑えて、最後はほっこりさせられるエピソードになっているに違いない。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( SmartFLASH )

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