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堺雅人『VIVANT』最終話、視聴者に対する “いい裏切り” と “悪い裏切り” を検証…あえて苦言を呈してみた【ネタバレあり】

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.09.18 18:16FLASH編集部

堺雅人『VIVANT』最終話、視聴者に対する “いい裏切り” と “悪い裏切り” を検証…あえて苦言を呈してみた【ネタバレあり】

 

 考察ブームを巻き起こし、今夏最大の話題作となった日曜劇場『VIVANT』(TBS系)が、9月17日、最終話(第10話)を迎えた。

 

 堺雅人が2020年の『半沢直樹』第2シリーズ以来、日曜劇場に凱旋主演した本作。同じく日曜劇場の『下町ロケット』主演の阿部寛、『陸王』主演の役所広司、『マイファミリー』主演の二宮和也といった主要キャストが揃い、さながら “日曜劇場版アベンジャーズ” とも呼べる豪華キャストがズラリ。

 

 絶対にコケられない布陣で挑んだ本作は、大ヒットを狙いにいってそのまま本当に大ヒットさせたわけだ。

 

 

 実際に、最終話も期待以上のおもしろさだったのだが、残念に思うところも多々あった。ネットニュースでは、大半が大絶賛する記事ばかりなので、本稿ではあえて苦言を呈してみたい。

 

 ここからは最終話のネタバレを含むので未視聴の方はご注意を。

 

■【ネタバレあり】いい方向で予想を裏切ってくれた

 

 自衛隊の影の諜報部隊「別班」に所属する乃木(堺)が、国際的テロ組織「テント」の日本攻撃を食い止めるために駆けめぐるというストーリー。警視庁「公安」所属の野崎(阿部)とは、序盤で協力関係にあったが、別班だとバレて以降は追われるように。また、テントのリーダー・ベキ(役所)が、実は乃木の生き別れの父親だったことも判明していた。

 

 そんな混沌とした物語となっていた『VIVANT』最終話、視聴者に対する “いい裏切り” と “悪い裏切り”、どちらもあったというのが率直な感想だ。

 

“いい裏切り” は、多くの視聴者の考察をすり抜けて、予想の斜め上をいく超絶展開が繰り広げられ、最終話だけでも状況が二転三転して手に汗握るストーリーだったこと。

 

 やはり一番は、まさかまさかの「別班」「公安」「テント」の3勢力共闘シーンだろう。

 

 堺演じる別班の乃木、阿部演じる公安の野崎、役所演じるテントのベキ、二宮演じるノコルという日曜劇場の主演経験俳優のキャラが、一堂に会するというだけでもすさまじい画力があったが、まさか共通の敵を前に一致団結するとは驚きだった。

 

 多くの視聴者は、3勢力がどのように衝突するかといった視点で考察していただろうから、この4人が同じ側のテーブルに座っている画は、意外すぎたが超壮観。それこそ本当に “日曜劇場版アベンジャーズ” の様相を呈していた。

 

 予想をいい方向で裏切ってくれたのだ。

 

■二重人格設定がきちんと活かしきれていなかった

 

 一方、“悪い裏切り” は未回収の伏線がいくつもあったことや、登場人物が多すぎて一人一人の掘り下げがあまりできていなかったこと。ひと言で言うと、消化不良感が否めなかった。

 

 第9話を観終わった時点でけっこう嫌な予感はしていた。まだまだ描くべきことが多いように感じていたので、残り1話で全部消化するのは相当難しいと思っていたからだ。結果、予感は的中。案の定、描かれなかったことが多すぎた。

 

 筆者が一番ガッカリしたのが、二重人格設定が最後まで活かしきれていなかったこと。

 

 主人公・乃木は第1話の段階から二重人格であることが描写されていた。温厚な主人格に対して、「F」と呼ばれる別人格は気性が激しい。だが、この二重人格設定は、なくてもストーリーの本筋に大きな影響はなかったのではないか。

 

 たとえば、主人格は戦闘力や頭脳レベルが劣るという設定だったなら、戦闘シーンや頭脳戦で「F」に切り替わるといった演出にできただろう。だが、主人格は有能で十分に強く、頭もキレるので、最後の最後まで別人格の見せ場はあまりなく、なぜ二重人格設定にしたのか、かなり疑問である。

 

■「奇跡の少女」ジャミーンには未回収伏線が2つある

 

 ほかに、重要なキーパーソンであることが匂わされていたジャミーンが、なぜ「奇跡の少女」と呼ばれていたのかは明かされないままだった。

 

 また、ジャミーンは人間の善悪を直感で見抜ける能力があり、善人には笑顔を見せるのだが、野崎には最後まで懐かないまま。ジャミーンが野崎を警戒しているのは、“野崎には裏の悪い顔がある” という伏線に思えたが、実際には最後までかっこいい正義のヒーローだった。

 

 視聴者の考察熱を煽るようなドラマにおいて、制作陣が意味深長なシーンを挿入しておきながら、最後までそれに触れないのは作り手として不誠実だと思える。

 

 視聴者は、提示された情報が劇中における事実だという前提であれこれ考察を楽しむわけなので、意味ありげに描いたからにはきちんと回収するのが制作陣の誠意であり、制作側と視聴者側の暗黙のルールではないだろうか。

 

 ほかにも、伏線の未回収というわけではないが、ポスタービジュアルにも載っていた主要キャラ5人のうちの1人、二階堂ふみ演じる医師・薫の登場シーンが物語後半でめっきりなくなったことは残念だった。

 

 物語前半では乃木&野崎とともに行動し、中盤で乃木と想いを通い合わせ恋人同士になったものの、物語後半になると出番が激減。最終話のラストシーンで乃木と感動の再会を果たし、熱い抱擁をするものの、出演はフィナーレのほんのわずかな時間だけだった。

 

 人気キャラとなった野崎の仲間・ドラムも最終話で登場したが、ほぼ置き物状態。クライマックスシーンに同席していたものの、なにか重要な行動をするでもなく、ただ後ろに映っているだけ。

 

 しかも、ドラム人気が高まった要因のひとつである音声アプリのかわいらしい声(人気声優・林原めぐみが担当)も発さなかったのである。

 

■現時点の物語で批評するなら消化不良感は否めない

 

 乃木と薫の恋愛パートはもっと尺を取って描いてもらいたかったし、乃木と野崎の2人きりの対話や乃木・野崎・薫・ドラムの初期メンバーの集合など、エピローグで観たいシーンはもっとあったのだが、それらもナシ。最終話は駆け足すぎて、一人一人の掘り下げがあまりできていないと感じた。

 

 最終回当日に開催されたファンミーティングでは、本作の福澤克雄監督が「(次回作があるかどうかは)みなさん次第」、「僕のなかでは第3部まで考えている」といった発言があったという。また、再来年に続編が放送されるという報道も出ている。

 

 今回あげた未回収の伏線やキャラの掘り下げ不足は、続編ありきだと考えれば、むしろ次作への期待感につながるというもの。しかし、まだ続編が正式発表されてない以上、現時点の最終話までのストーリーで批評するなら、消化不良感は否めない。

 

 なんとしても続編を実現させて、このモヤモヤを晴らしてもらいたい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( SmartFLASH )

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