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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』川中美幸さんーーアドリブも変幻自在、トーク力は名人芸の “ザ・関西人”
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.01.13 06:00 最終更新日:2024.01.13 06:00
才能と呼んでいいのかどうかはわかりませんが。もしも、もしもです。わたしに才能があるとしたら、それは先輩たちのエキスをちょっとずつ自分に取り込み、噛み砕き、坂本冬美の色に染め替えて出すことかなと思っています。
ーー目指せ、諸先輩のいいとこ取り!
それが、わたしの生きる道です。
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美空ひばりさんの男歌あり、女歌あり、ポップスありのオールマイティさ。島倉千代子さんの哀愁、都はるみさんの唸(うな)り。エンタテインメントの小林幸子さん、演じる石川さゆりさん……歌手・坂本冬美を分解し、解析すると、偉大な先輩たちの遺伝子が組み合わさって構成されているはずです。
“しあわせ演歌” という新ジャンルを開拓し、『ふたり酒』『二輪草』とミリオンヒットを飛ばした川中美幸さんもそのお一人で、ちゃっかり遺伝子を頂戴しています。
今もまったく衰えないきれいなお声は、まねしようと思ってもなかなかに難しいものがありますが、ピッチのよさは特に見習わねばと、いつも学ばせていただいています。
それだけではありません。美幸さんの足元にも及ばないもの、それはずばり、トーク力です。
大阪の方なので、テンポ、間は群を抜き、最後のオチもきちんと用意してある。盛り上げて盛り上げて、お客さんが前のめりになった絶妙なタイミングで、すとんと落とす。この技は、すでに名人芸の域に達しています。
これは使える! と、ほくそ笑みながら楽屋にお伺いし、「今のネタ、いただいてもいいですか?」と言うやいなや、「いくらいただけますか?」と、返されるのは美幸さんだけです。
女性演歌歌手で、美幸さんと舞台で対バンできるのは……諸先輩方は、あまり冗談なんかおっしゃいませんし、あやちゃん(藤あや子)は、ここにきてずいぶん地が出てきましたが(笑)、デビュー当時の幸薄そうで儚(はかな)げな女性のイメージが残っているし……わたしの知る限り、天童よしみさんただお一人です。
ただ、プライベートでは、すっごくおもしろい天童さんも、ステージではかなり抑え気味で、おもしろさの半分もお出しになっていないので、やっぱり、美幸さんが断トツの1位です。
ーーえっ!? わたしですか?
ムリ、ムリ、ムリ。わたしの話すリズムが、バン、バン、バンだとすれば、美幸さんは、ババババババババッ。そのうえ滑舌がよく、いちばん後ろのお客様にもしっかりと届くんですから、もう、すごいとしかいいようがありません。
アドリブも変幻自在、当意即妙、自由自在で、どこからでもかかってきなさい状態。テレビでも舞台でも、余裕たっぷりです。
頭の回転の速さに加え、目配り気配りも完璧な美幸さんを10としたら、肝心なところで、どーしても照れてしまうわたしは……そうですねぇ、思い切りオマケして、半分の5くらいでしょうか。
お芝居で魅せ、トークで笑いを誘い、最後はビシッと歌で聴かせるーー。
美幸さんの舞台は、わたしの理想そのものです。
先輩の中にいても、後輩に囲まれていても、美幸さんはいつだって、いつもの美幸さん。楽屋でも、スタジオでも、プライベートでも、そこに美幸さんがいるだけで、美幸さんが入っていらっしゃっただけで、その瞬間、場がスポットライトを浴びたように、ぱ~っと明るくなる。そんな太陽のような存在です。
わたしも、もうちょっと笑いが取れるように、美幸さんの爪の垢をいただいて、また明日から頑張ります。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋