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『春になったら』記録に残るヒットではないが記憶に残る良作に…奈緒の圧巻ナチュラル演技がやっぱりすごい【ネタバレあり】

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.03.26 21:40 最終更新日:2024.03.26 21:40

『春になったら』記録に残るヒットではないが記憶に残る良作に…奈緒の圧巻ナチュラル演技がやっぱりすごい【ネタバレあり】

『春になったら』制作発表。左から見上愛、濱田岳、奈緒、木梨憲武、小林聡美

 

 作品としてヒットと言えるような数字は残せていないが、それでも奈緒の俳優としての評価は上がったのではないか。

 

 とんねるず木梨憲武と奈緒がダブル主演で、3月25日(月)に最終話(第11話)が放送された『春になったら』(フジテレビ系)。

 

 3カ月後の春に結婚することを決めた娘・瞳(奈緒)と、がんで余命3カ月と宣告されている父・雅彦(木梨)。父娘2人きりの家族が、それぞれ「結婚までにやりたいことリスト」と「死ぬまでにやりたいことリスト」を叶えていくホームドラマである。

 

 

■【ネタバレあり】父は無事に娘の結婚式を見届けられたか?

 

 最終話は2024年3月下旬、結婚式当日の様子が描かれた。結論から言うと、雅彦は「死ぬまでにやりたいことリスト」に記してあった奈緒の結婚式に参加し、無事に見届けることができた。

 

 その後、雅彦は逝去。命日は4月初旬のようなので、結婚式からしばらくして亡くなったようだ。死に際は描かれず、結婚式当日からシーンがジャンプし、次に描かれたのは雅彦の葬式後。

 

 当たり前だが、雅彦はドラマのなかのキャラクターだから実在しない。だが、脚本家や制作陣が、底抜けに明るく湿っぽいことが嫌いだった故人(雅彦)の意思を尊重して、最期のお別れという悲しいシーンをカットしたのかもしれない。

 

 そんな制作陣の温かい配慮は、ラストシーンにも込められていたように思う。

 

 最終話冒頭は、1年前となる2023年3月、奈緒と雅彦が仕事帰りに出会う過去シーンが挿入されていた。雅彦がまだ余命宣告なんてされておらず、根っから元気ハツラツな頃である。

 

 そして、ラストに挿入されたのは、冒頭の2023年3月のシーンの続き。他愛もない父娘の会話を交わしながらの帰路。いつものようにおちゃらける雅彦に、瞳が笑いながらやさしくツッコミを入れて、「ただいま」と帰宅。そして終幕。

 

 雅彦が元気だった頃のなんてことない日常を描写して終わるのが、キャラクターへの愛情が深い構成だと感じた。

 

■奈緒の自然体演技はアラサー女優のなかでトップクラス

 

 とはいえ、奇をてらうことのない最終話だったとも言える。公式サイトの予告ページには《父・雅彦(木梨憲武)に、人生最大のサプライズ!》といった煽り文句もあったが、それは雅彦に内緒で「旅立ちの式」と称した結婚式と生前葬の合同式を瞳たちが計画していた、という程度のこと。

 

 視聴者の予想を裏切るような驚きの展開はなかった。

 

 しかし、そんな予定調和なフィナーレにできたのは、制作陣が奈緒に全幅の信頼を寄せていたからではないか。

 

 奈緒の演技力の高さは、これまでの出演作でもたびたび絶賛されているが、特にどこにでもいそうな一般女性のナチュラルな芝居をさせたら一級品。今のアラサー世代の女優のなかでトップクラスだろう。

 

 ごくごく普通の日常を演じる所作にリアリティがありすぎて、まるでドキュメンタリーでも観ているかのように錯覚する瞬間もあった。

 

 対して、父役の木梨の演技はオーバーすぎるところがあり、本職がお笑い芸人だけにコントのように見えてしまうこともしばしばあった。

 

 木梨は2018年の映画『いぬやしき』に主演はしたものの、連ドラ出演は1999年の『小市民ケーン』(フジテレビ系)以来の四半世紀ぶりとのことなので、彼にナチュラルな芝居を求めるのは酷というものだろう。

 

■木梨の演技さえも味のある芝居のように見せてくれた

 

 ただ、奈緒の演技が等身大の “市井の人” の世界観を創り、そこに木梨も引っ張り込んでくれたおかげで、「こんなふうに日常でコントみたいに振る舞うオッサンも意外といるかも」と思えるようになっていた。

 

 要するに、奈緒の演技がその場の空気を染めていって、木梨の演技さえも味のある芝居のように見せてくれたのではないか。

 

 そういえば木梨は、初回放送前の制作発表会見で次のように語っていた。

 

「父娘のシーンでは奈緒ちゃんが俺のぶんまでセリフが入っている。ちょっと詰まったら、助監督さんたちスタッフさんより前に、奈緒ちゃんが教えてくれる感じで。もう頼りにしています」

 

 奈緒はまだ29歳で、木梨の芸歴は彼女の年齢以上なので言わずもがな大先輩。それでも木梨は奈緒を信頼して、ある意味、彼女におまかせでいたからこそ、自然体な仲睦まじい父娘のように見えたのだろう。

 

 ――『春になったら』は記録(数字)的にはヒットとは言えないが、最後まで視聴したファンたちの記憶に残るドラマになったはず。そして、この作品を “良作” に押し上げた奈緒の評価は、さらに高まったに違いない。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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