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戸塚純貴、 仮面ライダーでの失敗を糧に朝ドラ「虎に翼」出演の実力派俳優へ「寒空のエキストラで苦汁を嘗めた経験が人生を変えた」

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.04.28 11:00 最終更新日:2024.07.23 12:17

戸塚純貴、 仮面ライダーでの失敗を糧に朝ドラ「虎に翼」出演の実力派俳優へ「寒空のエキストラで苦汁を嘗めた経験が人生を変えた」

戸塚純貴

 

 東京・渋谷の繁華街の裏路地にある「とりかつ CHICKEN」は、ランチタイムを過ぎても多くの人であふれている。そんななか、黙々と揚げ物を食べているのが、俳優戸塚純貴。ドラマや映画などで欠かすことのできない若きバイプレイヤーだ。

 

「ここに来ればいつも、ボリューミーで美味しいフライを食べられるんです。上京してすぐに住んだマンションがこのお店の近く。そのときからなので、もう13年くらい通っています。ここに来るたびに、俳優を始めたときの気持ちや失敗、楽しかったことなどいろいろな記憶が甦ります」

 

 

 放送中の連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)に、猪爪寅子(伊藤沙莉)が通う大学の法学部の学生・轟太一役として出演している戸塚。朝ドラに出演するのは、ひとつの夢だったという。

 

「長い期間をかけてひとつの役を演じることはかなり貴重な経験で、『いつかは』という思いは昔からありました。

 

 これから反響も出てくると思うのですが、初の “朝ドラ” を楽しんでいます」

 

 岩手県で育った戸塚の高校生のころの夢は自動車整備士。芸能界とは無縁の人生設計を描いていた。地元で就職活動をしていた彼を東日本大震災が襲った。

 

「住んでいたのは内陸なので、津波の被害はなかったんです。でも、停電で明かりが消え、水も出なくなり、いつも行っていたスーパーやコンビニの棚は空っぽ。街が映画とかに出てくるような何もない状態になったんです」

 

 これまでの日常から180度変わってしまった景色を見て、戸塚はショックを受けた。

 

「初めて “死” を間近に感じました。当たり前が当たり前でなくなった感じで。これからどうしたらいいんだろうと思ったときに、ふと今までやったことのないことや考えてもみなかったことに挑戦してみるのもありだなと考えたんです」

 

 そのころ戸塚は、母親が応募してくれたオーディションがきっかけで、現在の所属事務所から芸能界入りを誘われていた。戸塚はそれを受けて、上京。すぐさまドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス2011』(2011年、フジテレビ)の出演が決まった。

 

「初めての経験だらけだったのですが、それも全部受け入れる自分がいて。今ふり返ると何もわかっていなかったんですが、(演技の)レッスンを受けたときも、こうしたら褒められるだろうという演技をするなど、どこか高をくくっていました」

 

 順風は続き、翌年には若手俳優の登竜門である「仮面ライダー」シリーズの『仮面ライダーウィザード』(2012~2013年、テレビ朝日)への出演が決まった。

 

「(オーディションに)受かったと聞いたときは、嬉しかったです。仮面ライダーに憧れていたし、これで売れる! って。ただふたを開けてみたら、僕は変身に憧れるトラブルメーカーな青年役。そのときに、僕の人生が決まった気がします。変身したくてもできない、残念だけど主役になれない人生だって」

 

 このとき戸塚は「しくじり」をおかしてしまう。

 

「完全に勘違いしていました。1年間ずっと撮影が入るから、僕は “忙しい俳優” なんだと思っちゃって。仮面ライダーのイベントに参加すれば、いつもワーキャー言われて、あ、人気者なんだと思って……。当時の僕は天狗になって、仕事も雑になっていたし、素行もよろしくなくなっていました」

 

 そんな若い戸塚を戒めたのがマネージャーだった。「仮面ライダー」後の初仕事は、 “月9” ドラマのエキストラだった。

 

「次は注目度の高いドラマか、と思ったらエキストラでした。それも台詞もなく、撮影が始まると言われたらいつでもできるように待機していないといけなくて」

 

 ドラマには同年代の俳優たちが役づきで出演していた。それを撮影現場の端でほかのエキストラと一緒にただ見ることしかできなかった。

 

「かなり悔しかったです。もう苦汁を嘗めるというか……」

 

 寒空のなか、待機していた戸塚はあることに気づいた。

 

「エキストラの皆さんは誰一人腐っていなくて、モチベーションが高いんです。作品にとって大切な存在であるエキストラを経験して、自分は全然ダメだ、いい役をとるにはもっともっと頑張らないといけないと気づきました。意識が変わりました」

 

 それ以降は、どんな仕事でも真摯に取り組むようになった。出演オファーも増え、戸塚は映画、ドラマを合わせて100作品以上に出演している。

 

「ありがたいことに、監督からのご指名をいただけたり、ワンシーンだけの出演だったはずが、気づくとシーンが増えていたり、ということも何度かありました。今、僕がいろいろな作品に出られているのも、あのエキストラを経験したからです」

 

 そうやって芝居への自信をつけてきた戸塚に、忘れられない作品となるオファーがくる。ドラマ『だが、情熱はある』(2023年、日本テレビ)のオードリー春日俊彰役だ。

 

「最初聞いたときは、とまどいました。僕自身、オードリーのファンでラジオも聴いていたので、変な芝居をしたら絶対に許されないと思ったし。でも、プロデューサーさんがすごく熱い方で、台本を読んだらすごくおもしろかったんです」

 

 話数を重ねるごとに、戸塚演じる春日は注目を集めるように。相方であるオードリー若林正恭役の髙橋海人との漫才も話題となった。

 

「最初は海人と台本に導入だけ書かれている漫才を、カットがかかるまでアドリブで演じたんですよ。そうしたらスタッフもおもしろがってくれて。気づくとクライマックスのM-1敗者復活戦のシーンは、漫才をフルで演じる話になっていました。

 

 やるからにはいいものにしたいと、連日仕事が終わった後に、夜中の公園で海人とネタの練習をしました。あのころは本当の芸人のような生活でした(笑)」

 

 戸塚は、4月から先述の『虎に翼』だけではなく、ドラマ『肝臓を奪われた妻』(日本テレビ系)にも出演中。相変わらず、引っ張りだこだ。

 

「最近、現場に行くと、スタッフやキャストなどのなかに一度ご一緒したことがある方が必ずいらっしゃるんです。あらためて、これまでがむしゃらに走ってきたけど、ふり返ると、きちんと道をつくってきた、間違っていなかったと感じています。

 

 僕は飽き性なので、飽きたらたぶんこの仕事をやめると思っているのですが、全然飽きない。毎日が楽しいです」

 

 定食をきれいに平らげた戸塚は「食べたらエキストラのときの気持ちを思い出しました。あのときの悔しさを忘れないようにしなきゃ」と笑った。

 

とづかじゅんき
1992年7月22日生まれ 岩手県出身 2010年に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で「理想の恋人賞」を受賞し、芸能界入り。2011年、『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス2011』(フジテレビ)でドラマ初出演。2012年、『仮面ライダーウィザード』(テレビ朝日)に出演。以降、ドラマ『だが、情熱はある』(2023年、日本テレビ)、映画『ある閉ざされた雪の山荘で』(2024年)など数多くの話題作に出演している

 

【とりかつ CHICKEN】
住所/東京都渋谷区道玄坂2-16-19 ミヤコジビル2F
営業時間/11:00~20:00(月曜は11:00~15:00)
定休日/日曜

 

写真・伊東武志
スタイリスト・森 大海(AGENCE HIRATA)

( 週刊FLASH 2024年5月7日・14日合併号 )

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