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『海のはじまり』池松壮亮の特別編が神回…もうこっちがメインでいいんじゃない? 観返すと “倍は泣ける” 理由

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.09.02 11:00 最終更新日:2024.09.02 11:00

『海のはじまり』池松壮亮の特別編が神回…もうこっちがメインでいいんじゃない? 観返すと “倍は泣ける” 理由

『海のはじまり』完成披露イベントに出席した池松壮亮

 

 もうこっちでいいんじゃない!? と思えるような、とてもやさしく悲壮なストーリーだった。

 

 Snow Man・目黒蓮主演の月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)。先週の8月26日(月)に第9話が放送予定だったが、目黒が体調不良でしばらく療養していた関係で、この日は『海のはじまり 特別編「恋のおしまい」』が放送された。

 

 この特別編、めっちゃよかった。

 

 あくまで個人的な感想だが、こっちの特別編のキャストを主軸にしたストーリーを連ドラで観たかったと思うほどだ。

 

 

■急遽制作された特別編が神回すぎた!

 

 まずは『海のはじまり』本編について、ざっとおさらいしておこう。

 

 本作は2022年に社会現象を巻き起こした『silent』(フジテレビ系)の脚本家・生方美久氏の最新作。

 

 主人公・夏(目黒)は平凡な会社員ながら、恋人の弥生(有村架純)と幸せな日々を送っていた。

 

 そんなある日、大学時代に交際していたものの8年も疎遠になっていた元彼女・水季(古川琴音)が、病気で亡くなったという訃報を受け、葬式に参列。葬儀場にいた小1の少女・海(泉谷星奈)が、夏の娘であることを海の祖母・朱音(大竹しのぶ)から知らされ、戸惑いながらも幼い娘と懸命に向き合っていくというストーリー。

 

 そして、急遽放送された特別編は、3年前を舞台に生前の水季とその同僚・津野(池松壮亮)を主軸とした、完全新撮のラブストーリーが描かれたのである。

 

 図書館で働く水季の司書仲間である津野は、海を保育園に迎えに行ったり自宅で預かったりしてくれており、水季が亡くなるまで母娘2人を一番近くで支えていた存在。

 

 本編では、2人が恋愛関係だったことは語られていなかったが、特別編で実は両想いになっており、付き合う直前までお互いの気持ちが大きくなっていたことが明かされた。

 

 津野は3人で暮らす提案をするなどプロポーズに近い言葉を伝えていたし、水季も恋愛感情的に「好き」だと明言していた。しかし、水季が娘のことを一番に考えたいという気持ちが強く、交際を断っていたのだ。

 

■知られざる恋が明かされ、物語全体の解像度が高まった

 

 主演俳優の療養というイレギュラーな事態に急遽対応した形だったのだろうが、結果的にこの特別編のエピソードによって、物語全体の深みが劇的に増したように思う。

 

 水季が津野をかなり信頼して親しい仲だったことや、津野が水季に恋心を抱いていたのではないかということは本編からも読み解けていたが、両想いになっていて付き合う直前までいっている関係だったことには驚いた。

 

 そして、この特別編によって、これまで放送されていた第1話から第8話までの津野の発言すべてが腑に落ちたのである。

 

 津野は初回から主人公・夏に冷たい態度を取り続けていた。特に第6話では、夏に面と向かって、「比べるものじゃないとかよく言いますけど、月岡(夏)さんより、僕のほうが悲しい自信あります」と言い放っていたのだ。

 

 悲しみでマウントを取ってくるなんてキツイこと言うな~という感想だったが、特別編を視聴した後に第6話を観返すと、とてつもない哀傷の深さゆえに口にしてしまった言葉だと理解できる。

 

 また、第7話では朱音からの電話で津野が水季の死を知るシーンが描かれていた。

 

 着信があり、嫌な予感で激しい動悸に襲われ、自分の胸元を必死に撫でながら電話に出て、号泣する。池松壮亮のすさまじくリアリティのある芝居で引きつけられ涙腺を刺激されたが、特別編を経てから改めてこのシーンを観返すと、倍は泣けるようになっていた。

 

 逆に考えると、特別編がなければ津野の言動の意味を正しく読み解けないまま、本編終盤を視聴することになっていただろう。だから、このタイミングで水季と津野のエピソードを掘り下げてくれたことで、視聴者は本編への解像度も高まったはずだ。

 

■津野と水季が恋人になる世界線も観てみたい

 

 正直、水季と津野を主役にしたラブストーリーでも、1クールの連ドラを成立させられただろう。個人的にはむしろ、そっちを観たかった気さえする。

 

 2人が恋人同士になって結婚し、その後に水季が亡くなってしまい、血のつながらない津野と海の父娘愛を描くという世界線のストーリーも観てみたかった。

 

 ただ、そう思えるのは、本作の脚本家である生方美久氏の作品の特徴とも言える。

 

 生方氏は『silent』のときも、当て馬役のキャラクターにもきちんとスポットを当て、彼らの心情を深掘りしていたからだ。

 

『silent』は主演の川口春奈と目黒蓮が演じた元恋人同士が再会して愛を育むストーリー。

 

 だが、川口の現彼氏を演じた鈴鹿央士のキャラや、目黒に片想いする夏帆のキャラのエピソードもたっぷり描かれ、多くの視聴者は当て馬にも感情移入していた。実際、川口と鈴鹿が演じる恋人同士が結婚してハッピーエンドとなる世界線を妄想したファンも少なくないだろう。

 

 生方氏の作品を観ていると、メインキャラもサブキャラも関係なく、誰もが自分の人生における主人公なのだと気づかされる。たまたま作品ごとに主役としてフィーチャーされるキャラが設定されているが、メインでスポットが当たっていないだけで、誰もの人生に “ドラマ” があり、誰もが主人公なのである。

 

 ――今夜放送の第9話からは、再び夏がメインのストーリーが展開される。

 

 けれど、特別編を観て津野に感情移入した視聴者は爆増したはず。“もう一人の主人公” である津野が最終話に向けてどう行動し、どういう結末を迎えるかも非常に気になるところ。津野も報われるラストであってほしいと切に願う。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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