エンタメ・アイドルエンタメ・アイドル

舞踏家&女優の“二刀流”藤間爽子 藤間紫の孫が「箱に入れて大切にしまう」逸品とは

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.11.02 06:00 最終更新日:2024.11.02 06:00

舞踏家&女優の“二刀流”藤間爽子 藤間紫の孫が「箱に入れて大切にしまう」逸品とは

演技指導の先生からプレゼントされたブタの置物(写真・福田ヨシツグ)

 

 エンドロールで流れる黒木華の柔らかな歌声を耳にしながら、いつの間にか優しさで心が満たされている自分に気づくヒューマンストーリー。映画『アイミタガイ』の扉を開けるのは藤間爽子(30)だ。彼女は、日本舞踊紫派藤間流三代目であると同時に、女優として数々の作品で爪痕を残してきた。

 

「この仕事を始めたときは、何も知らないからこそがむしゃらにできたことが、経験を積み重ねて、ちょっとずつ怖がりになって……。この映画も台本をいただいたときは、自分にできるのかなと不安でいっぱいでした」

 

 

 そう言いながら微苦笑を浮かべた藤間が今回演じたのは、黒木が演じる秋村梓の親友でフリーカメラマンの郷田叶海。叶海の死がきっかけでドラマが動きだすという、重要なキーになる役割を担っている。

 

「そうなんですよ。だから出番は多くない。でも、映画全体を通して叶海の匂いが漂っていなければいけないという難しい役で。見てくださった方に、叶海はそこにいると思っていただけるにはどうすればいいんだろうと、悩みながら演じていました」

 

 藤間の言葉とは裏腹に、物語が進むごとに叶海という色が、その濃さを増していく。なかでも、叶海の中学生時代を演じた白鳥玉季は、存在感も雰囲気も、同質の匂いを漂わせていた。

 

「それは言いすぎです(苦笑)。玉季ちゃんは、誰がどこから見てもかわいくて可憐な美少女。私とは見た目からして違いますから。どうにもできないんですけど、それでも、どうしよう? って思っちゃいましたから(笑)」

 

 白鳥は現在14歳。藤間は同じ14歳のとき、祖母で初世家元の藤間紫を亡くし、二代目を襲名した市川猿翁からその座を受け継ぐことが運命づけられていた。

 

「舞踊家として舞台に立つときは、個を感じるというよりは、おばあちゃんの想い、紫派藤間流に携わってくださる皆さんの想いなどを背負って立っているという気持ちが大きくて。自分が勝手にそう思っているだけかもしれないんですけどね(笑)」

 

 決められた型で踊る日本舞踊で大切なのは、動きひとつで魅せる身体表現力の高さと、個の輝き。言い換えると、引き出しの数、経験してきたことの数が大切で、一朝一夕に身につくものではない。

 

 将来の夢は、日本舞踊もできる女優になること。小学校の作文で書いたように、大学卒業を間近に控えた時期、役者としての道を踏み出した。

 

「舞踊家として、そこまでの力があるのかどうかも不安でしたし、一生やり続けられるという自信もなかったですし……半分は逃げの気持ち、もう半分は、自分の手で掴み取りたいという気持ちだったような気がします」

 

 女優デビューは、NHKの連続テレビドラマ小説『ひよっこ』。劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」の門を叩き、舞台女優としても活動の場を広げた。一方で、舞踏家としても2021年2月28日、東京・日枝神社で、三代目藤間紫を襲名した。

 

「自信が持てた? それはないです。舞踊家としても役者としても、勉強不足を痛感してばかりです。教えていただいたことを自分のものにできるように、日々勉強です」

 

 目に強い光を灯した藤間には、今も忘れることのできない演技指導の先生がいる。

 

「初めましてでいきなり、“あなた◯◯でしょう”と、性格的なことを言い当てられて。自分でもそうだとわかっていたし、コンプレックスにもなっていたのですが、うまく隠し通せているなと思っていたことを言い当てられて。オブラートに包むことなく、もうストレートど真ん中です」

 

 驚き、たじろぐと同時に、この先生の前では飾ってもしょうがない。素の自分でいていいんだと思えた瞬間、嬉しさがこみ上げてきたというが、その言葉とは?

 

「それは秘密です(笑)」

 

 にっこりと笑みを浮かべた藤間が言葉を続ける。

 

「まわりからは“すごいですね”と言っていただけるんですけど、そうじゃないのは自分がいちばんよくわかっていて。その溝をうまく埋められなくて、モヤモヤしているときにズバッと強烈に言ってくださった先生の言葉が、人としても役者としても、舞踊家としても大きな救いになりました」

 

 指導を受けたのは、わずか二度。その後、体調が急変し、帰らぬ人となったその先生から「これからも表現者として大成されることを見守っています」と綴られた手紙と一緒に贈られたのが、先生お気に入りの逸品、ブタの置物だ。

 

「ふだんは箱に入れて大切にしまってあるんですが、何かあったときに取り出して眺めていると、先生の顔とあの強烈なひと言が甦ってきて。“よし、頑張ろう!”という気持ちになれるんです」

 

 プライベートでは、フレンチブルドッグの晴男をこよなく愛する藤間。オフは友達と旅行に出かける“お出かけアクティブ”が好きで、甘いものも大好きだという。

 

『アイミタガイ』で彼女が演じた叶海の笑顔を思い出すと、次は三代目・藤間紫としての舞踊を観たいとの思いが湧き上がってくる。

 

 

ふじまさわこ

1994年8月3日生まれ 東京都出身 幼少より祖母・初世家元、藤間紫に師事し、2021年、三代目藤間紫を襲名。、2017年に、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』でデビュー。2018年に劇団「阿佐ヶ谷パイダース」に入団。舞踊家、役者として舞台や映像を中心に活躍中

( 週刊FLASH 2024年11月12日・19日合併号 )

続きを見る

今、あなたにおすすめの記事

エンタメ・アイドル一覧をもっと見る