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鈴鹿央士『嘘解きレトリック』ミステリーとしては “ヌルい” のに「恋愛ドラマの月9」にトドメを刺す可能性

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.11.04 11:00 最終更新日:2024.11.04 11:00

鈴鹿央士『嘘解きレトリック』ミステリーとしては “ヌルい” のに「恋愛ドラマの月9」にトドメを刺す可能性

 

 

 フジテレビの看板ドラマ枠「月9」は、昨年7月期、6年半ぶりに恋愛ドラマを復活させた。以来、3作品放送してきたものの、再び恋愛ものから撤退することになるかもしれない。

 

 10月28日(月)に第4話まで放送されているミステリーものの月9ドラマ『嘘解きレトリック』が好調だからだ。

 

『嘘解きレトリック』は、鈴鹿央士松本穂香という旬な若手俳優がダブル主演する作品で、約100年前の昭和初年を舞台とした貧乏探偵×能力者によるレトロ・ミステリー。

 

 

“人の嘘が聞き分けられる能力” により、周囲から忌み嫌われていた浦部鹿乃子(松本)は、生まれ育った村を出て九十九夜町にたどりつく。そこで、やたら鋭い観察眼を持つものの、依頼が少ないため借金まみれの貧乏探偵・祝左右馬(鈴鹿)と出会う。左右馬が鹿乃子を探偵助手としてスカウトし、2人で事件を解決していく物語である。

 

■データ的には可もなく不可もないが

 

『嘘解きレトリック』は、視聴率は低空飛行しているし、TVerなどの再生数がずば抜けて好調なわけでもない。データ的には可もなく不可もなくといったところ。

 

 一方、月9では昨年7月期に『真夏のシンデレラ』で恋愛ものを復活させてから、今年1月期の『君が心をくれたから』、今年4月期の『366日』と3作の恋愛ドラマを放送しているが、こちらも視聴率やTVer再生数といったデータはいまいち。

 

『嘘解きレトリック』も恋愛ドラマ3作も数字的にはパッとしないのだが、違いが出ているのは視聴者からの評判だ。

 

 SNSの投稿やネットニュースのコメント欄などを見ると、『嘘解きレトリック』を観ている人々からは好意的な意見が非常に多いのだが、恋愛ドラマ3作はかなり “否” が多めの賛否両論が巻き起こっていたのである。

 

 賛否両論あっても数字が跳ね上がっていれば成功と言えただろうが、数字が悪く批判も多かった恋愛ドラマ3作は目も当てられない。

 

 恋愛ドラマから撤退していた6年半の間に月9が放送していたのは、おもに1話完結型のミステリーもの、リーガルもの、医療もののドラマ。そして、『嘘解きレトリック』は先週の第4話と今夜の第5話は前後編でひとつの事件を描いているが、基本的には1話完結型のミステリーである。

 

 つまり、満を持して復活させた恋愛ドラマが3作とも不評で、恋愛ものではない1話完結型ドラマに戻したら好評を博しているというわけだ。

 

 そもそも、1990年代からヒット作を量産して「恋愛ドラマの月9」と呼ばれていたわけだが、2017年1月期の『突然ですが、明日結婚します』を最後に6年半も遠ざかっていたのは、恋愛ものが絶不調で視聴率が取れなくなっていたから。

 

 看板ブランドが凋落の危機に陥ったため「恋愛ドラマの月9」というプライドを捨て、ミステリーもの、リーガルもの、医療ものにシフトして、ブランド力を持ち直したという経緯がある。

 

 そして、「恋愛ドラマの月9」復活を目指して昨年7月から3本の矢を放ったものの、どれもこれも当たらず、恋愛ものが原因で再びブランド力が低下。たまらずミステリーものをまた投入してみたところ、数字がいいわけではないが評判は上々――というのが “いま” なのだ。

 

 そういった背景を考えると、『嘘解きレトリック』が「恋愛ドラマの月9」にトドメを刺す可能性は十分あるだろう。

 

■ミステリーなのに世界観が温かい

 

『嘘解きレトリック』は、ミステリーものとしてはよくも悪くもライト。誤解を恐れずに言うなら、ヌルい。

 

 第4話・第5話こそ殺人の可能性もある事件が描かれているが、たとえば第2話は令嬢の誘拐事件、第3話は財布のスリ事件と、さほどショッキングではない事件が主だ。また、主人公たちが向き合う謎もそこまで難解ではなく、本格ミステリーを期待すると肩透かしを食うだろう。

 

 では、なにがウケているのかというと、作品全体を包み込む温かな雰囲気。

 

 鈴鹿演じる左右馬はクセ者ではあるが、とてもやさしく包容力のある人物で、松本演じる鹿乃子はそんな彼を信頼し、自分の居場所ができたことに安心感を抱いている。そんな2人の掛け合いは観ていてほっこりさせられる。

 

 彼らを取り巻く町の人々も人情味があって、ミステリー作品ではめずらしく、世界観がほんわかしていて柔らかい雰囲気なのである。

 

 ミステリーとしてはヌルく、世界観はほっこり温かい。そんな昭和初期を描いた作品が、なにかと息苦しい令和のいまではちょうどいい “湯加減” なのかもしれない。

 

 特に今年に入ってからの月9は、1月期『君が心をくれたから』、4月期『366日』とシリアスで重い気持ちになる恋愛ドラマが続き、親子の愛を描いた7月期『海のはじまり』も、鬱々として重い展開が続く作品だった。

 

 そんな流れがあったため、『嘘解きレトリック』の “軽さ” はカウンターとなり、ドラマファンに受け入れられたのではないか。

 

 ――今夜放送の第5話は殺人が疑われる事件の解決編。これまでの『嘘解きレトリック』のなかでは、もっともシリアスかつショッキングな回になるかもしれないが、それでも最後はほっこりと温かな気持ちさせてくれるに違いない。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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