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「虫が俺に憑依して書かせている」令和最大の奇書『戦国虫王』著者が語る「リアルな虫バトル」の背景
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.11.09 06:00 最終更新日:2024.11.09 06:00
日本の昆虫・毒蟲だけでなく、海外の凶暴な虫が次々と登場し、バトルを繰り広げたDVD『世界最強虫王決定戦』シリーズ。各メディアにその衝撃的な内容が取り上げられ、一大ムーブメントを引き起こした。
それから10年以上の時を経て、『虫王』が新たな形で甦った。それが、小説『世界最強虫王決定戦外伝 戦国虫王』だ! 登城する虫たちが繰り広げる、人間も真っ青の権力闘争劇に“令和最大の奇書”と話題が集まっている。執筆したのは『虫王』シリーズのすべてをプロデュースしてきた、作家の新堂冬樹氏。今回、小説化に至ったきっかけを聞いた。
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「『虫王』では、各虫にキャッチフレーズがついていたんです。たとえばオオスズメバチには『世界最凶の殺人バチ』とか。もともと当時から、『この虫はこういうキャラなんじゃないかな』というような、虫を擬人化するイメージは持っていたということですね。シリーズが終了し、自分も小説家としてキャリアを重ねてきたなかで、次第に『虫王』の世界はキャラクターの玉手箱だったと思うようになりました。そこで、言葉で表現するのが仕事の小説家として、彼らの群像劇を仕立て上げたらおもしろいんじゃないか、と考えたんです」
舞台は「日ノ本」と呼ばれる、日本をモデルとした大地。圧倒的なパワーで幕府を率いるカブト将軍が、クワガタ藩の藩主、ノコギリクワガタと真剣勝負を始めるところから、物語はスタートする。
「カブトムシは、国内においては絶対王者。だからといってカブトが勝ち続ける、ということにはなりません。そしてノコギリクワガタは、ライオンに対するトラのような存在。国技を守る、柔道家のようなイメージがカブトにはある。かたやノコギリはバーリトゥードとか、総合格闘家という感じ。なんか体つきもそんな感じでしょ?」
この小説の最大のおもしろさは、虫界の“縮図”をそのまま、戦国時代の人間関係に置き換えて展開されるストーリーにある。
「日本を治めるカブト将軍、そして宿敵ともいうべきノコギリクワガタ藩主、謀反に加わるオオスズメバチ藩主との関係とか。さらには毒蟲、タガメ藩主率いる水生昆虫族らとの『異種格闘技戦』が、どのような感じで描かれるのか、注目してほしいです」
さらに物語の先には、『虫王』でも大注目を浴びた、外来種の虫たち「南蛮虫」が登場する。
「まさに、黒船の襲来です。それまで最強といわれていた日本のカブトやクワガタの、何倍も体があるような連中がやってきます。外国産カブト、クワガタだけでなく、巨大なサソリやクモまで。その辺のパワーバランスもおもしろいでしょう。刀や槍で戦っている日本の侍を、あざ笑うようにやってくる、巨大な南蛮虫。『お前たち、そんな武器で軍艦に向かっていくつもりなのか』と。コーカサスオオカブトの光沢なんて、まさに軍艦を彷彿とさせますよね」
小説に登場する虫たちのバトルは、普通なら単なる空想話で終わってしまう。しかし、『虫王』シリーズをプロデュースするなかで、実際の壮絶な闘いを間近で見てきた新堂氏の筆力には、ほかにないリアリティがある。
「戦いの力関係とか、勝敗のつき方、動きとか、そういったものはほぼリアルのパワーゲージでやっています。そこに、性格や会話などを肉づけしているので、普通の『虫バトル』よりもっと、劇画的に膨らんでいます。これはもう、虫たちが俺に憑依して書かせているとしか思えない。だから、読んでいると、かなりリアルな虫たちの“声”が聞こえてくると思いますよ」
20年超の作家生活、約100冊の著書がある新堂氏が「俺が書いてきた作品の中で、いちばんおもしろいといっても過言ではない」と語る『世界最強虫王決定戦外伝 戦国虫王』。さあ皆の虫、興奮に備えよ!
しんどう ふゆき
1998年、『血塗られた神話』で第7回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。裏社会を描いたノワール小説から純愛小説まで、幅広い作風を誇る。代表作に『忘れ雪』『悪の華』『無間地獄』『カリスマ』『黒い太陽』『ASK』『虹の橋からきた犬』などがある。原作を務めた『誰よりも強く抱きしめて』(光文社文庫)が、内田英治監督により映画化され、2025年4月にTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開される。
( SmartFLASH )