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フジテレビが苦悶する「スポンサー撤退ドミノ」…港社長が提起した「人権理念」が自局を苦しめる “大ブーメラン” の皮肉
今、企業で「人権デューデリジェンス」(以下、「人権DD」)という考え方が広まっている。
これは企業活動で起きるセクハラ、パワハラ、プライバシー侵害、差別など「人権へのリスク」の原因を調査特定して公表することで、防止につなげる取り組みのこと。問題があれば、企業間の取引を打ち切ることもあるという。
経営評論家の坂口孝則氏が、こう語る。
「欧米ではすでに法制化されています。最近は技能実習生などの渡航費を本人に負担させただけで『強制労働』と見なされることがあるほど、厳しいものです。
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日本でも十数年前から人権DDの理解が深まってきて、ここ数年でだいぶ実効性がともなってきました」
ジャニー喜多川氏の性加害問題でも、人権DDがクローズアップされた。
「同氏がジャニーズ事務所の所属タレントに対して、長期間にわたり人権侵害をおこなっていたことに疑いを持ちながら、企業やメディアは人権DDをおこなってこなかったことが人権団体などに指摘されています」(事件担当記者)
中居正広の女性トラブルに幹部職員が関与していたのではないかと報じられたフジテレビも、現在、人権DDが注視されている。
実は、親会社である「フジ・メディア・ホールディングス」は、2023年11月に「グループ人権方針」を策定、人権DDを推進している。そのため、フジテレビの港浩一社長は、ダウンタウン・松本人志の性加害が取り沙汰された件で、吉本興業に「人権尊重を期待しており、適切な対応をお願いした」と、2024年11月29日の会見で明かしている。
しかし、今回の「中居問題」では逆のことが起きている。50社を超えるスポンサーからCM放送の差し替えを申し入れされている状態だが、もちろん、この企業判断も人権DDによるものといえるだろう。
だが、取引停止は「最後の手段」(坂口氏)の場合が多い。
「たとえば、海外で子供たちが強制的にパーム油作りをさせられたとします(注:パーム油が生産されているアブラヤシ農園では、以前から人権・労働問題が指摘されてきた)。
買い入れている企業が『人権蹂躙なので取引をしません』となると、収入が絶たれた子供たちの生活はさらに過酷な状況になってしまうからです」(同)
海外の農園と今回の件はもちろん状況は違うが、「最後の手段」となりうる方法を、現在各企業が選択し始めたのは確かだろう。
港社長がかつて掲げた理念が、 “大ブーメラン” となって自局を苦しめる皮肉。その理念どおり、人権が尊重される問題解決ができるかが、問われている。