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堀井雄二×中川翔子、ドラクエ対談【前編】最新作・HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』で若者向けにあえて “クリアしやすくした” ワケとは?
1988年、社会現象となったRPGの金字塔『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』がリメイクされ大ヒット中。そこで、「ドラゴンクエスト」シリーズの生みの親である堀井雄二氏と、芸能界きってのドラゴンクエストファン・中川翔子によるスペシャル対談が実現した!(この記事は前編です)
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堀井 しょこたんの初ドラクエはいくつだった? ナンバリングタイトルは?
中川 『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』でした。
堀井 ビアンカ、フローラだ。
中川 8歳の冬休みでした。それまでマリオしかやったことがなかったので、いきなり大人になった気がしたんです。
堀井 そうだね。
中川 『V』のビアンカとフローラの結婚イベントは、ひと晩眠れないほど悩んでフローラに決めたり、父(中川勝彦氏)に「まほうのじゅうたん」の宝箱の場所をネタバレされて、号泣して喧嘩したりとか。
堀井 えー(笑)。
中川 何気ない家族との会話も『V』のおかげで甦るようになって、すごく大切な思い出なんです。人生の縮図である『V』は結婚もあるけど、つらいこともいろいろある……。
堀井 あのとき、プレイヤーを真剣に悩ませたいと思ったんですね。で、結婚相手を選んでもらおうと。そして、そこから親子3代で魔王を倒すっていうストーリーを考えた。
中川 エモい!
堀井 自分が勇者じゃなくて、自分の子供が勇者だったっていうのを思いついてね。
中川 画期的!
堀井 僕は人をびっくりさせることが好きなんですよ。
中川 堀井さんのたくさんある名言のなかで、「人生はロールプレイング」という言葉があります。これは堀井さんが何歳のときに気づいたのでしょうか?
堀井 昔ね、ゲームを作っていたとき、「ロールプレイング的だなぁ」と思うことがよくあったんです。いろんな意味で役割を演じるっていう。
中川 神の視点ですね。ドラクエは私の血液や細胞に染み込んでいて、子供のころに出会えてよかったと思うんですけど、堀井さん自身も、人生ってドラクエみたいだなって感じますか?
堀井 そうですね。人生をRPGだと考えれば、クリアしようという気持ちになる。
中川 試練をクリアしていくってことですか?
堀井 そうそう。
中川 ただモンスターにやられるとかじゃなくて、親が死んでしまったり、子供がいちばんかわいいときに成長が見られないとか。思いつかないくらいつらいことがいっぱい入っている。それも、人生ですよね。
堀井 『V』の主人公はとくにつらかったよね。『I』(『ドラゴンクエスト』)を作ったときに考えたんですよ。プレイヤーが死んでゲームオーバーだと、経験値も何もかもなくなっちゃうでしょう。それだと全然クリアできないので、お金は半分に減るけど経験値はなくさないことにして。だから、失敗しても強くなっていくのでクリアできる。それってよく考えると、人生と一緒ですよね。失敗したらちょっとお金は減るけど、生きている限り経験値は上がってく。前に進めていける。
中川 人生に無駄なんかないんですね! ところで、HD-2D版の『III』(『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』)は、すっごく令和型にアップデートされていますよね。
堀井 そうですね。
中川 昔のファンから今の若い人たちまで、全員がちゃんとドラクエを起動したくなる、やりたくなる。この絶妙なバランスを作るために、会議で若い人の意見をどれくらい取り入れたのかなと、すごく気になりました。
堀井 けっこう取り入れていますよ。昔、子供たちは1本買うと半年くらい新しいゲームを買ってもらえなかったので、どれくらい長く遊べるようにするかが難しかったんです。でも、今はいろんなエンタメがあるので、逆に長いと好まれないんです。サクッとクリアして気持ちよく終わりたいなというのがあるので、ヒントを多めに入れたり、レベルアップを楽にしたり。コアなファンからは、「簡単すぎる」といった意見もあったけど、そういう人のために「いばらの道だぜ」、ちっちゃいお子さんのために「楽ちんプレイ」モードがあります。基本の「バッチリ冒険」を含めて、難易度は3種類から選べます。
中川 なるほど。ルーラのMPがなくなったのも令和っぽい! 洞窟とかにもポンポン飛べちゃうんで、めちゃくちゃ嬉しかったです。痒いところに全部行き届いている便利感がありましたよね。
堀井 楽ですよね。
中川 ほかにも、今作は王道の冒険感もありながら、哲学っぽい「ソクラス」の発言とか、「オリビアの岬」での悲しい愛など、せつない物語がたくさんあって。やっぱり、ドラクエには “人生の核” が詰まっているから、『III』が令和に出てくれたことはとても意味が深いなって。人類としてありがとうございますと言いたいです。
(後編に続きます)
ほりい・ゆうじ
1954年1月6日生まれ 兵庫県出身 早稲田大学を卒業後、フリーライターを経て、ゲームデザイナーに転身。1983年、『ポートピア連続殺人事件』を手がける。1986年、『ドラゴンクエスト』を発表。1988年、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は空前の大ヒットを記録した
なかがわ・しょうこ
5月5日生まれ 東京都出身 愛称は「しょこたん」。2016年、『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』にアリーナ役で出演。歌手・タレント・声優・女優・イラストレーターなど活動は多岐にわたる。音楽活動では数々の人気アニメや映画の主題歌も担当し、その人気・知名度は世界にも広がっている
写真・木村哲夫
スタイリスト・渡邊アズ(likkle more)
ヘアメイク・灯(ROOSTER)
衣装協力・ツモリチサト