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香取慎吾『日本一の最低男』最終話前の展開が激アツ! “途中で観るのをやめた人” ほどラストは観てほしい理由

回を重ねるごとに、尻上がりにおもしろくなってきた。だが、同時に、連続ドラマというフォーマットの難しさも感じさせる作品となっている。
今夜(3月20日)、最終話(第11話)が放送される香取慎吾主演『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)のことだ。
テレビ局社員として有名ニュース番組のプロデューサーを務め、エリートの勝ち組人生だと自負していた主人公・大森一平(香取)だったが、パワハラ疑惑がきっかけで退社するハメに。ほぼ無職の状態になってしまい、世間や元同僚たちを見返すため、起死回生の一手として政治家転身を決意。
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家事・育児に取り組む生活者目線を持った立候補者だとSNSでアピールするため、亡き妹の夫でいまはシングルファーザーの義弟(志尊淳)と、その2人の子どもを呼び寄せて、4人で同居生活を始めるというストーリーである。
■セオリーどおりに進むありがちなストーリー
正直、第1話から第5話といった前半は、このドラマにあまりハマっていなかった。なぜなら、セオリーどおりに進むストーリーだったからだ。
主人公・一平は、物語スタート時点ではプライドが高く傲慢で、器の小さい自己中といった描かれ方をされていた。本当は家族なんて不要だと思っているタイプで、子ども嫌いで育児なんてしたくもないのに、義弟一家を利用しようとしていた “イヤなやつ”。
そういうタイプの主人公が、周囲の登場人物たちと触れあっていくなかで、もともと根っこに持っていた “いいやつ” の一面が徐々に出てくる――こんなストーリーはけっこうありがち。
実際、この『日本一の最低男』はその手のドラマだ。先週放送の第10話まで観ても、その類型の物語であることは間違いない。
しかし、セオリーどおりのありがちな展開にもかかわらず、どんどんおもしろくなってきているのだ。
その理由は明白。主人公のきれいごとを抜きにしたセリフの数々と、それを演じる香取慎吾の演技の熱量、この両軸がうまく噛み合っていることに尽きる。
たとえば同居する姪っ子の実の父親が登場した第6話。自殺して多額の保険金を娘に残そうとしていたことを一平が看破し、汚い言葉を浴びせながらも目を潤ませ説教するシーンはかなり胸アツ。
この後半に差しかかった第6話で、筆者はハマり出した。
■冷静だがめっちゃ熱い最終話直前の香取慎吾
そして第10話の一平は、一見すると冷静だが、めっちゃ熱かった。
一平は無所属で大江戸区長選挙に出馬すると宣言しているが、そんななかパワハラで追い込んだとされるテレビ局時代の元部下と対峙する展開に。
元部下は現在、ニュースの裏側を斬る動画配信者となっており、チャンネル登録者数20万人超えという発信力を持っているため、一平の出馬を機にパワハラ問題を暴露されるのではと懸念されていた。
元部下はまだ暴露をしていなかったのだが、そのチャンネルの生配信に一平が出演し、発言をカットできない状態で2人きりで当時のパワハラについて本音で語り合ったのだ。
一平は自分の落ち度など認めるところは認めて素直に謝罪し、しかし強く当たってしまった真意を伝えるなどして、元部下と誠実に向き合う。
パワハラ問題の発端となった “ニュースで遺族コメントを取ること” の是非なども絡め、ケンカのような理不尽な衝突ではなく、理性的な意見交換となっていたのが素晴らしい。
最終話予告では、区長選挙に向けて元部下が「大森さん、ピエロになる気あります?」と語るシーンもあったため、結託してなんらかの作戦をおこなう模様。
一平がテレビ局を辞めた要因となったキャラの仲間化は頼もしいし、最終話が非常に気になる “引き” となっていた。
■失敗の原因はおもしろくなるのが遅すぎたこと
このように尻上がりにおもしろくなってきて、最終話前となる第10話を激アツ展開で終えている『日本一の最低男』。
だが、忌憚なく言うなら、おもしろくなるのが遅すぎだ。
前述したように、筆者がハマり出したのは第6話あたりだが、序盤でおもしろいと思えないと、2話、3話あたりで途中脱落する視聴者は多い。よっぽどのドラマ好きや香取慎吾ファンなら我慢して観続けるだろうが、そうではないライトな視聴者は中盤に差しかかる前に観るのをやめてしまう。
連続ドラマの特性上、一度離れた視聴者はなかなか戻ってこない。だから、いくら後半でおもしろくなっても、前半で見放されて大量のお客さんを逃してしまっては、連ドラ作品としては “失敗” の烙印を押されてしまう。
『日本一の最低男』は終盤でかなりおもしろくなっているだけに、連続ドラマというフォーマットのむずかしさを痛感させられるのだ。
――最終話は今夜放送。本稿を読んでくださった方のなかに、もし本作を途中離脱している人がいるなら、せめて最後のクライマックスだけでも観てみてほしい。