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【空が黒く染まった!】大阪万博 ユスリカ大量発生を徹底検証…根本原因は鳥が消えた“環境破壊”3年前の警告が現実に

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記事投稿日:2025.05.24 14:30 最終更新日:2025.05.24 21:15
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
【空が黒く染まった!】大阪万博 ユスリカ大量発生を徹底検証…根本原因は鳥が消えた“環境破壊”3年前の警告が現実に

空を黒く染めるユスリカの大群

 

「ギャー!」

 

 空を覆いつくす黒い大群から、身をかがめて逃げる来場者たち。だが、羽音を立てながら迫りくる“やつら”相手にはなすすべがない――。5月上旬以降、大屋根リングの上で毎日のように見かける光景だ。

 

 工事遅延やガス爆発などすったもんだの末、4月13日に開幕した大阪・関西万博。目下、世間を騒がせているのは世界各国が出展した壮麗なパビリオンではなく、大量に発生した虫だ。会場内にあるファミリーマートの店員はこう語る。

 

 

「4月中は大丈夫だったのですが、ゴールデンウィークに雨が降って以降、大量に発生するようになりました。虫が店内に入ってくるので、従業員がドアに付きっきりになり、開け閉めをしています。駆除するために防虫シートなどに100万円程度費やしたのですが、効果はありません。本当に困っています」

 

 本誌記者が訪れたところ、とくに酷いのは、日没前の海側の大屋根リングであることがわかった。天気の良い日は、大阪湾に沈む夕景を見に来るため大勢の観客が大屋根リングに集まるが、18時を過ぎて足元がライトアップされると、待ち構えたようにそこら中から虫が一斉に飛び立ち、リングは阿鼻叫喚の地獄と化すのだ。

 

「僕たちはどうすることもできないのです。逃げ回ったり傘で対策するお客さんもいますが、なんせ数が多いので……」(警備員)

 

 大量発生している虫は、ハエの一種であるシオユスリカであることがわかっている。ユスリカは蚊と似た外見をしているものの、人を刺すことはない。とはいえ、大量の虫に囲まれて気分がいいはずはない。

 

 万博の広報担当者は、

 

「発生源対策として、主に降雨後を中心に、会場内の雨水枡や植栽帯(リング上の植栽含む)の中などに、発泡剤(成長阻害剤)を継続的に投入しています。各施設や店舗への侵入防止として、入口での大型ベープや殺虫ライトの設置、殺虫剤の散布、通気ダクトでのメッシュ設置などを、各施設管理者や出展者とともに実施しています」

 

 と語るが、はたして効果的なのか。害虫防除技術研究所の代表で医学博士の白井良和氏はこう語る。

 

「ユスリカ科の中でもシオユスリカだと同定されたようですね。シオユスリカは、汽水域で春から秋にかけて発生します。生息地は沿岸地帯や河口、瀬戸内海の干拓地などが挙げられており、万博会場はまさにこの種の繁殖に適した場所であり、季節的にもこれから繁殖する時期です。

 

 発生源に成長阻害剤を投入するのはまず最初に講じるべき対策ですね。植栽などの小さな水たまりだけでは、今回のような大発生にはいたらないので、やはり海側のウォータープラザが発生源だと思われます」

 

 すでに飛び回っている成虫を駆除することは、あまり意味がないという。

 

「ユスリカは光に集まるので、店内への侵入対策として殺虫ライトや殺虫剤などは効果があります。ただ、膨大な数のユスリカ死骸の清掃などは手間がかかりますね。スイングフォグという、殺虫剤を噴霧器でばら撒く方法もあるのですが、イメージダウンにつながりますし、現実的ではありません。成虫を駆除したところで多勢に無勢で、根本的な解決にはなりません。

 

 来場者が自衛する方法も、ほとんどありません。腰から蚊取り線香をぶら下げるにしても、混んでいる会場内は危険ですからね」

 

 大阪府の吉村知事は5月21日の会見で、府と包括連携協定を結んでいるアース製薬に“ユスリカ対策”の協力を要請したことを発表した。夏を迎え、これからますます数を増やすユスリカを、殺虫剤の力でなんとか消し去ろうというわけだが、

 

「その方法は誤っていると考えています」

 

 と異を唱えるのは、公益社団法人の大阪自然環境保全協会「ネイチャーおおさか」だ。じつは同団体は、3年前からユスリカの大量発生などについて、いわば“警告”をおこなっていた。同団体は2022年3月にX上で

 

《万博予定地で大阪府レッドリスト生物多様性ホットスポットAランクの #夢洲 では
毎年大阪市内とは思えないほど多くのユスリカが発生 それが多くの虫や鳥の命を支えてきた。万博協会は、小さな緑地を会場に作るので鳥も大丈夫といいます。でもその緑地には、彼らを養えるだけのユスリカはいますか?》

 

 と綴っていた。結果として、ユスリカを餌とする鳥が消えたことと引き換えにユスリカが大量発生するという皮肉な事態となっている。同団体の担当者はこう語る。

 

「今回のユスリカの問題はある意味で、当然の成り行きかと思います。私たち自然保護団体は、夢洲について、鳥類を中心とする生物現地調査に入らせていただき、何度も協議会に参加して、意見を述べてきました。

 

 夢洲は、長期にわたる埋め立ての過程で、大阪府が生物多様性ホットスポットのAランクに指定するほど、優れた自然のある場所になっていたんです。特に渡り鳥の日本有数の渡来地になっています。これをつぶすのではなく、保全していただきたいとお願いしてきたわけです」

 

 ところが、同団体の提言は一切聞き入れられることはなかった。

 

「その結果、多様な生態系は完全に壊滅してしまいました。『生態系への影響はない』と書き並べたアセスメント報告書の“誤り”が、ユスリカの大量発生という“現実”によって“指摘された”ものと理解しています」(同前)

 

 大量の殺虫剤によって、夢洲から渡り鳥だけでなくユスリカまで消し去るという方法は、環境破壊の“上塗り”にすぎないというわけだ。

 

「殺虫剤を用いたところで、時間的に間に合わないでしょうし、効果も一時的なものです。薬剤が漏れて、いずれは瀬戸内海を汚す可能性もありますよね。そしてなにより『いのちかがやく』というテーマをないがしろにするやり方です」(同前)

 

 本質的な対策は、もう一度豊かな生態系を取り戻すことだという。

 

「世界的にも鳥類の生息場所は急速に滅失しており、生息・渡来できる場所を復元することは緊急の課題です。夢洲という場所は、今からでも回復の策を講じていけば、博覧会終了後には新たな生態系の形成が可能であり、いずれは再び多くの生物が繁殖したり越冬する場所となりうるポテンシャルのある場所です」

 

 少なくとも現時点では、虫の命だけが輝く会場というわけだ。

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