日曜劇場『99.9』(TBS系)が好調だ。松本潤、香川照之、木村文乃ら旬のキャストで、有罪率が100%近い刑事裁判の現状を描き、1月スタートの民放連ドラのなかで視聴率トップに。
ドラマ上の演出なのは承知のうえで、あえて弁護士のシビアな目で、名セリフ、名シーンにツッコんでもらった。
●「いったん起訴されたらな、裁判は、事実よりも検察が描いたストーリーどおりに進む」
——佐田篤弘弁護士(香川照之)・SEASONI第1話
「起訴するかしないかを決めるのは、検察の権利です。ですから、裁判が検察主導になるのは事実です。問題は、検察官の権限が強すぎること。
裁判の過程で状況が変わっても、もとの事実にこだわり、裁判を進める検察官もいます。裁判官がそれを追認し、有罪判決を下してしまうのも問題ですね」
(元検察官で若狭・高橋法律事務所の若狭勝弁護士)
●「私の儀式なんだ。どんな奴でも勝ったときは、握手するんだ」
——佐田弁護士・SEASONI第1話
民事専門のエース弁護士・佐田。刑事部門に異動となり、深山の上司となる。不本意ながらタッグを組んだ最初の裁判で勝利し、吐き出した言葉だ。その後も佐田の握手はドラマのラストシーンに頻出するが……。
「私の経験上、政治家のほうが100倍握手をしています(笑)。佐田のような弁護士は少数派ですね」
(若狭弁護士)
●「通知表にはなんて書かれていましたか?」
——深山大翔弁護士(松本潤)・SEASONI第1話
接見時、事件と関係なさそうなことまで細かく聞く深山。ドラマ上の演出なのか。クレセント法律事務所の平手啓一弁護士は、「初めての接見では、不安や緊張もあるでしょうから、いきなり事件のことは聞きません。深山弁護士のように生い立ちや家族構成などから聞いて、徐々に心を開いていただくよう心がけています」。
●「クロだとわかっても、依頼人がシロだと主張するなら、噓をつかない範囲でシロだと証明する方法を考える。刑事弁護とは本来、そういうものだ」
——佐田弁護士・SEASONI第3話
依頼人の利益を優先すべきだと言う佐田に、「事実を曲げることはできない」と抵抗する深山。2人はしばしば衝突する。
「『どうせ罪を犯しているんだろう』と思うのは、弁護士にあってはならない。『やっていない』というなら、それを裁判所に理解してもらうことが、弁護士の仕事なんですから」
(山田法律事務所・山田雄太弁護士)
●「これだけ新しい証拠が出てきたんだ。検察に行って不起訴処分を掛け合ってくる」
——佐田弁護士・SEASONI第8話
深山が殺人容疑で逮捕される事態に、ヤメ検の佐田は検察に乗り込もうとする。実際、古巣に顔は利くのか。
「私も検事時代、OBのヤメ検弁護士とやり合ったときは気を遣いましたが、裁判結果に影響はないです」
(若狭弁護士)
2015年には、元最高検幹部の弁護士が、担当する容疑者の妻を検事総長に会わせ、懲戒処分に。
●「10人の真犯人を逃すとも、一人の無辜を罰するなかれ。刑事裁判の大原則だ」
——斑目法律事務所・斑目春彦所長(岸部一徳)・SEASONI第9話
「プロの裁判官は、法曹界の慣習、常識で判断するようなところがあり、疑わしい場合、予断を持って有罪にする傾向もある。
その点、裁判員の方々は “疑わしきは罰せず” の姿勢で裁判に臨んでいて、私の弁護も真摯に聞いてくれていると感じます」
(アトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士)
●「国家権力である検察官が起訴を決めた内容は、正しいはずであると誰もが疑わない」
——深山弁護士・SEASONI最終話
「本当にそうなんでしょうか」
前シーズン最終話で、深山は右の言葉のあと、そう続けた。
山田弁護士は、「検察官の立証どおりであれば、すべての証拠が合理的に説明できるはず。弁護人は、その主張のなかの綻びを探し、徹底的に叩くのです。ひとつの証言の信用性が落ちただけで、立証がぐらぐらになることもあります」。
●「日本の裁判官は『疑わしきは被告人の利益に』という大原則を軽んじている気がする」
——斑目所長・SEASONII第1話
佐田や深山など、300名の弁護士が所属する大手法律事務所のトップ、斑目。野心家だが、こんな理想を語る一面も。
「理想を胸に秘め、無罪判決を言い渡す裁判官もいますが、大半の裁判官は、検察に控訴されることを非常に嫌がる。二審で有罪になれば、無罪判決を書いた裁判官は出世に響きますから」(若狭弁護士)
●「裁判官ていうのは、起訴状を読む時点で有罪だと思い込んでる。だから、この国は刑事事件の裁判有罪率が世界1位になるんだ」
——深山弁護士・SEASONII第1話
友人の父が殺人で逮捕され、深山のもとを訪れた尾崎舞子(木村文乃)。裁判官時代の経験から、有罪の心証を持つ尾崎は、情状酌量を主張。無罪を目指す深山と対立する。
「書記官を通じて、弁護人から被告人の認否を事前に聞くことは普通におこなわれており、尾崎さんのように、有罪ありきの裁判官は多い」(平手弁護士)
(週刊FLASH 2018年2月13日号)