
中村倫也演じる主人公の行動があまりにも “悪寄り” すぎる。これはストーリーが杜撰なのか、それともどんでん返しの伏線なのか……。
中村倫也×髙橋海人のダブル主演作『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系)。8月1日(金)に第5話まで放送されている。
舞台は謎に包まれた新型ドラッグ「DOPE」が蔓延している近未来の日本。「DOPE」は高い致死率にもかかわらず、服用するとまれに特殊な異能力を覚醒させるため、手を出す者があとを絶たない。
「DOPE」で異能力を手に入れた者をドーパーと呼ぶが、ドーパーによる凶悪犯罪が急増したため、厚生労働省の麻薬取締部は、“異能力には異能力を” ということで、生まれながらに異能力を持った人材を集め、特殊捜査課(特捜課)を設立。
そして特捜課では、「未来予知」能力を持つ新人・才木優人(髙橋)と、「超視覚」能力を持つ先輩・陣内鉄平(中村)がバディを組むことになった。
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■大きな矛盾を抱えてしまった中村倫也
才木は犯罪者となってしまったドーパーも救済して更生させたいと考えているが、陣内はドーパーにいっさい容赦がなく、殺してでも駆逐したいと考えている。実際、陣内は第1話からドーパーを射殺して才木の反感を買っていた。
陣内は7年前、妊娠中の妻を殺害されたためドーパーを憎んでおり、犯人を見つけ出して自らの手で抹殺することを目的としている。
そういった凄惨な過去を背負っている主人公が、手段を選ばずに復讐に燃えるのは理解できるのだが、簡単に言うと陣内は「手段を選ばなすぎ」。
というのも、陣内は、世の中に「DOPE」をばらまいている犯罪シンジケート「白鴉(ハクア)」のリーダー・ジウ(井浦新)と協力関係にあるのだ。陣内はジウからの依頼で大物政治家を威嚇狙撃したり、逆にジウから妻殺害犯の情報をもらったりと、持ちつ持たれつの関係性となっている。
ジウはさまざまな人物に「DOPE」を渡しており、服用して亡くなった者もいればドーパーとなって特捜課と対決する者もいた。つまり、陣内は復讐を果たすため、諸悪の根源のような組織に加担しているのだ。
たとえば、ルールを守らずに強引な捜査をしたり、裏社会の情報屋にカネを渡したりするぐらいであれば理解もできる。しかし、ドーパーに妻を殺された復讐をするため、妻のような「DOPE」犯罪被害者を生み出すことに加担しているのは、あまりにも大きな矛盾を抱えていると言わざるを得ない。
陣内は「白鴉」を利用した後に壊滅させるつもりかもしれないが、それにしたってここまで協力したり黙認したりでは、後々に「白鴉」をぶっ潰したとしても、善行と悪行のプラマイは圧倒的にマイナスになる気がする。
■綿密に練り込まれたどんでん返しはあるか?
ということで、よほどのどんでん返しがない限り、主人公の1人の行動に共感できないどころか、理解が追いつかないストーリーになってしまっている。
いまのところ劇中でのジウは、殺しもいとわない非情な人間で、「DOPE」をばらまいて次々にドーパーを生み出しているように見えるが、それは演出上のミスリードなのか?
もしジウも主人公2人と同じく「DOPE」撲滅を志しているとしたら、陣内が協力するのも納得できるのだが……第5話までのジウの行動を見るかぎり、悪行に見えていたのが全部誤解で、“実はいい人” という方向に持っていくのは、相当至難な業である。
このままでは、陣内が妻と同じような被害者を次々と生み出すことに加担するサイコパス野郎になってしまう。そんな杜撰でお粗末なストーリーではないことを祈るばかりだ。
今夜放送の第6話以降で、綿密に練り込まれた斬新展開が用意されており、陣内がジウに協力する “正当性” が描かれることを期待しているが、はたしてーー。