実は、業界にも変革の波が押し寄せている。
「ピーク時は、テレビ局からのギャラは、写真1枚2万円以上で、数十枚を受注していました。ピーク時より儲けは落ちましたが、他ジャンルの人たちからすれば、『こんな低予算で、こんなに儲かるの?』と思われると思います(笑)」
だが、10年ほど前は全国で数社しかなかった心霊画像の制作メーカーは、現在は数十社が乱立。市場は食い合い状態だという。
「大ヒットした心霊ビデオシリーズのスタッフが相次いで独立したあとは、DVDは1カ月に50作品以上は出ていると思います。さらに、画像加工ソフトが普及して、テレビ局が自分たちで心霊映像を作ってしまうことも増えてきました。素人に毛が生えたくらいのスキルでも簡単に作れちゃうので、外注は減ってきていますね」
現在は、他分野の映像制作も請け負うようになったというU氏。現在の「心霊班」は3人で、そのほかにアルバイトの学生部隊がたくさん在籍している。
「サークルの飲み会や、ゼミの授業風景をゲリラで撮影してもらい、映像ひとつにつき5000円で買い取っています。撮られている側は、心霊映像に使われているとは思わない。いまは視聴者の目が肥えてしまって、作りものだと承知のうえで、いかに怖がらせてくれるかを楽しみにしている。撮影方法は過激化しています」
そんな杜撰な制作態勢だけに、トラブルもつきものだ。
「数年前、ある施設を “廃墟” ということにして、心霊映像を撮影し、某テレビ局に提供したんです。現実には営業中の施設なので、建物にはモザイクをかけるよう念を押していたんですが……そのまま放送されてしまった。当然、施設側からはクレームの嵐で、某テレビ局は責任回避をするばかり。つい最近までもめておりました(笑)」
そんなこともあり、現在は心霊作品の制作からの撤退を考えているというU氏。
「先日も、番組への素材提供をお断わりしたんですよ。心霊写真の真偽を検証する番組だったんですが、そもそもぜんぶ噓なのに、検証も何もないでしょうって(笑)」
日本を覆った心霊ブーム。その背後には、U氏のような魑魅魍魎たちが跳梁していたのだ。
(週刊FLASH 2018年9月11日号)