「ハズキルーペ」のCM第4弾が、2018年10月後期の「CM好感度ランキング」で、約2000社中2位に躍り出た(CM総合研究所調べ)。その第4弾CMとは、産休からの復帰後初の仕事になった武井咲と、小泉孝太郎、舘ひろし等が出演しているものだ。
ホステス役の女性たちが「ハズキルーペの上にお尻で座っても壊れない」というシーンがウケているが、この発案者も松村会長だ。話題が尽きない武井の復帰作バージョンだが、会長自らが手がけただけあって、豪勢な裏話があった。
「広告代理店に頼むと、予算内で、安い衣装を用意してくるから、『洋服代は別途、僕が自腹で払うから、いいものを』と頼むんです。
武井咲さんの着物の衣装は、上から下まで1000万円かかっています。帯で400万円、人間国宝が作られた京都の素晴らしいものです。
また、武井さんが主演された『黒革の手帖』のようなイメージにしたかった。ですが、最初に代理店に話したら、『絶対無理です』と言われました。『ドラマはテレビ朝日さんのコンテンツだし、他局にもCMは流れるから、それは無理でしょう』と。
さらにテレビ関係者も全員が『無理でしょう』と言った。ところが、武井さんの事務所社長にお願いしたところ、オッケーを出してくれたんです。
僕は映画のような芸術作品として作っている。そこは強調したい。『ハズキルーペ』と連呼させたり、機能を言うだけじゃなくて、画が安っぽかったら見ていられないじゃないですか。
僕は映像監督に、『映画のPVみたいに何回見てもおもしろい、ああいうCMを作ってくれ』と頼みました。
制作費は、謙さんのバージョンは1億円です。謙さんの衣装は全部グッチ、菊川怜さんのショートパンツはディオールだし、上は有名な革ジャン。
小泉孝太郎さんもディオール。衣装のお金は、僕個人の持ち出しです。年間100億円かけてCMを打つのだから、衣装をケチってもしょうがない」
CMは見事に視聴者の心を掴んだ。同時に「ハズキルーペ」の販売本数は現在、累計で500万本を突破している。だからか、社内の会長に対する見方が変わった。
「ウチにデザインを担当する社員がいるんですけれど、以前は僕が提案すると、反抗されました。イヤな顔をされもしました。
それが、今は『はい、わかりました』と。いちばん変わったのは、僕に対する社員の見方ですね。すごいカリスマになった感じです」
ところで松村会長、どうして取材に応じても、顔出しはNGなのですか?
「昔、ニュース番組で特番を組まれたんですよ。僕の顔写真のパネルがでっかく掲げられて、『帝国ホテル、阪急電鉄、京成電鉄……。松村氏はこれらの会社の筆頭株主で、どう再生するつもりなんでしょうか』って喧嘩売るみたいに言われました。
子供の友達のお母さんから電話があって、『松村さん、特番組まれているわよ』って。『えっ、ウソ』と思って観たら、僕の顔写真があるわけです。こんなのありかと……。外食ができなくなるじゃないですか」
2020年4月には新CMが発表される予定だ。「キャストも決まりました。全部、僕が考えました」と言う松村会長の勢いは止まりそうにない。
まつむらけんぞう
大阪府出身。成蹊大学法学部卒業後、外資系証券を経てプリヴェチューリッヒ企業再生グループ(現プリヴェ企業再生グループ)を設立。大阪大学大学院法学研究科客員教授も務める
(週刊FLASH 2018年11月13日号)