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ブルボンヌ『リボンの騎士』が示す価値観の揺さぶりに感服
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2018.11.19 11:00 最終更新日:2018.11.19 11:00
マンガは、読む者の人生観まで変えてしまう力を持っている。『リボンの騎士』の影響を強く受けたという女装パフォーマーのブルボンヌに、そのすごさを語ってもらった。
「学生のころに流し読みした『リボンの騎士』は、“男勝り” な王女様の、おとぎ話というイメージでした。きちんと読んでなかったんですよね」
ところが大人になってから同書を読み返し、衝撃を受けたという。
「10年ほど前から『Xジェンダー』という言葉が使われるようになったのですが、これって、主人公のサファイアに通じると気づいたんです。人の中には、いわゆる『男性』性と『女性』性の両方があって、それは状況によって変化します。
完全な男になりたい、女になりたい、ではなく、中間地点もあると自認する人が増えてきました。手塚先生は人間の心の本質みたいなところをわかっていらっしゃったのかな、と感服しました」
同作の中では、ボーイッシュな悪魔の娘・ヘケートがいちばん好きなキャラだと語る。
「リボンをしているけどパンツルックで、女子が憧れる女子像。サファイアは王家の娘だけに、規範のなかで自身が揺れ動きます。ヘケートは魔女の娘、つまり悪ですが、だからこそ自由に生きられる。
魔女であるヘケートの母が、サファイアから『女らしい心』を盗み、娘の体に入れようとする企みにも抗います。杓子定規な枠や親の狙いに、人の心が無理に押し込められる苦しみを、ヘケートは誰よりわかっているんです。
また、男尊女卑が当たり前だった時代に描かれているのに、宮中の女性たちが、男性たちの横暴な振舞いに怒り、反乱を起こすシーンもあります。日本でウーマンリブが起こる前の時代です。女のコたちがもっと、伸び伸び生きていける未来が来るんじゃないか。
『リボンの騎士』は、男と女に縛られすぎた価値観を揺り動かしてやれ、という先生の先進的なメッセージだったと思います」
ブルボンヌが推薦するもうひとつの作品が『МW(ムウ)』。同性愛と猟奇殺人を扱った、ヘビーな内容だ。
「タイトルの『М』と『W』が象徴するように、反転的な要素が詰まっています。男と女、善と悪、神父と殺人鬼。主人公の結城美知夫は、男と女の姿を使い分け悪の限りを尽くしますが、彼をそうさせてしまったのは、国家レベルの巨悪。
神父との同性愛も、誘ったのは神父のほうで、正しさは視点で変わることが対立軸のなかで描かれています。ゲイの神父をスキャンダルにしようとするのを、レズビアンの記者が阻止したりと、当時としては画期的なシーンもあります。
正義も性指向も、思い込みを壊し、社会を多角的に見ようと教える、手塚先生の人としての志の高さを感じます」
ぶるぼんぬ
1971年生まれ 岐阜県出身 女装パフォーマー、ライター。LGBT、男女共同参画をテーマにMCや講演もおこなう。新宿二丁目でバー「Campy!bar」グループをプロデュース
(週刊FLASH 2018年11月13日号)