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スピードワゴン小沢『火の鳥』で恋愛観が変化「傷つけ、俺!」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2018.11.26 11:00 最終更新日:2018.11.26 11:00
マンガは、読む者の人生観まで変えてしまう力を持っている。手塚治虫作品の影響を強く受けたスピードワゴンの小沢一敬に、その魅力を語ってもらった。
「手塚先生の作品は、たぶん全部読んでます」
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自宅に3000冊以上のマンガを所蔵する、という小沢。自身の人格形成に大きく影響を与えたのが、『火の鳥』だった。
「いちばん好きなのは『未来編』。僕の死生観や人生観の基本が凝縮されています。死んでも魂は続くから、死ぬのはまったく怖くないかもな、と思うようになりました。
今、僕は地球というテーマパークに遊びに来ていて、死んでも家に帰るだけだと。だから、どうせ失恋するなら失恋というアトラクションをめいっぱい楽しんだほうがいい。
『むちゃくちゃ傷つけ、俺!』って思うようになりました」
人生で困難にぶち当たったとき、救ってくれるのも『火の鳥』だ。
「インフルエンザの注射が苦手なんですが、そんなときは『未来編』で地球にひとりぼっちにされた主人公・山之辺マサトを思って『彼の苦しみに比べれば』って考えると、我慢できるんです。
また『火の鳥』には、輪廻や業の話が何度も出てきます。自分が冒した業は、自分でしか取り返せない。
昔、『爆笑オンエアバトル』で、会場審査で10組の芸人中5組しか出られないというとき、僕は収録前に雀荘に行って、わざと負けたんです。何かでマイナスがないとプラスにならないと考えるんです。
いまだに、新幹線に乗ってトイレが汚れていたら、掃除するんですよ。あとでいいことがあるかもしれない、と。見返りを求めているのでさもしいですけど。
ブルーハーツと手塚先生の作品は、小学校の教科書に載せるべき。あの世界観を、小学生のときに体感しておいたほうがいい。なぜか、子持ちみたいなスタンスでしゃべってますが(笑)」
また『火の鳥』のコマ割りは、スピードワゴンの漫才にも影響を与えたという。
「『宇宙編』の、4人の会話が同時に右から左へ流れていくような表現には、驚きました。見せ方の工夫ですよね。
漫才は、ボケとツッコミがよければいい、というだけではなく、『なんでやねん!』とは別のツッコみ方を考えるようなこと。なぜか、いい漫才を書いてる人みたいな設定でしゃべってますけど(笑)。
それから、手塚作品には多くの未来が描かれています。僕はマンガではなく “予言書” だと思って読んでます。いつか現実の世界もこうなるんだろうな、って思いながら」
『火の鳥』は、読者に「生きる意味」を問いかける。小沢の受け取り方は?
「若いころは、何かを成し遂げるために生まれてきたんだと思っていたけど、違うんじゃないか、と考えるようになってきました。『死ぬまで生きる』ことこそが、生きる意味なんじゃないかと。
そして、誰にでも死は待っていて、肉体は滅びるけど、魂は死なない。最初の話に戻りますが、それこそが『火の鳥』のテーマであり、僕が教えてもらったことなんだ、と思います」
おざわかずひろ
1973年10月10日生まれ 愛知県出身 1998年、井戸田潤と「スピードワゴン」を結成。11月26日、トークライブ『話スピードワゴンvol.28』を、しもきた空間リバティにて開催。近著『夜が小沢をそそのかすスポーツ漫画と芸人の囁き』(文藝春秋)が発売中
(週刊FLASH 2018年11月13日号)