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漫画家・日野日出志が再ブーム「ツイッターが絵本に結びついた」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2019.08.14 16:00 最終更新日:2019.08.14 16:00
ギョロ目を血走らせ、小指からは蛆虫が……! 1970~1980年代、『蔵六の奇病』や『地獄小僧』などの恐怖漫画で読者にトラウマを植えつけてきた漫画家・日野日出志。
15年間の休筆期間を経て、6月に出版した幼児向け絵本『ようかい でるでるばあ!!』(彩図社)が話題を呼んでいる。
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そんな日野先生にインタビューを敢行した。
――新人絵本作家としてデビューしたわけですが、15年ぶりに描こうと思った経緯は?
去年6月くらいまでガラケーを使っていたんですが、バッテリーの持ちが悪くなってしまいました。大学を卒業した教え子が東村山に住んでいたので、一緒にスマホを選んでもらったんです。
その人に教えられてLINEやツイッターを始めたところ、けっこう反響があってフォロワーが増えたんですね。
たまたま『愛しのモンスター』という作品に登場するキャラクターのフィギュアが出るのと同時期でした。打ち合わせ中にフィギュアの原板をツイッターに載せたら、フォロワーたちの反応が面白くて。
『地獄変』に出てくる「狂子と狂太」というキャラクターのフィギュアもアップしたところ、こちらの反応もよくて。それで「みんなおいらのことカワイイって言ってるぜ」ってセリフをつけてアップしたら、またまたその反応が面白くて……。
しまっていたフィギュアを押し入れから出して、ツイッターに載せるようになったら、キャラが動き出してシリーズ漫画みたいになっちゃったんですよ。
それって考えてみたらアイデアを考えてるのと一緒なんです。結局、僕は「子供漫画家」。アイデアを考えるのが好きなんだなって。毎日いろいろ考えてたら、創作意欲のスイッチが入っちゃった。そうしたら、絵本企画が動き出したというわけです」
――最初から絵本に決まっていた?
特に話し合ったわけじゃない。ただ、前からツイッターで絵本をやりたいと書いていたんです。夕日の中に少年がいて、赤とんぼがいっぱい飛んでる描きかけのイラストを載せたら、「絵本が見たい」という反応が多くて。それでやりましょうと。
――制作はアシスタントを頼まず、おひとりで?
絵を描くのが15年ぶりなので、とてもアシスタントを雇うわけにはいきません。今は大阪芸大の講師の仕事が週2日ですね。日曜日に前泊し、月火が授業です。火曜に東京に帰ってきて、水木は一応休みにしてますけど、金曜は日芸でも講師の仕事がある。
大学が始まっちゃうと、すぐには絵本制作に向かえないものですから、絵本は今年3月の大学の春休みに特に集中して描きました。わりと、いろんなことを同時にできないタイプなんです。
――芸大で講師をされていることも、創作に影響していますか?
若い学生と話すと、こっちが刺激をもらうことがあります。「天才か!」というくらい上手い子もいます。漫画の話をすれば、20歳前後の若者であっても年齢の垣根を越えて盛り上がる。
生徒の前でも「絵本を描きたい」って、ずっと言っていました。実際に絵本になって、「こんなじいさんが頑張れるんだから、お前らも頑張れ」と学生たちに話しているんです。
――今後、絵本のアイディアが7~8つもあるとか。
はい。絵本作家としてやっていきたいですね。次の絵本は忍者に絡んでます。
――それでもやっぱり、日野日出志の漫画を読みたいという人もいるのでは?
僕の目が悪くなって……細かい線がちょっと書きづらくなってます。畳の目なんて、生涯でどれぐらい描いたか。私の漫画には木目とか、細かい線が多い。絵本って、カラーで、面で見られるものだから、そのへんが楽なんです。もともと、色を塗るのが好きだし。もうモノクロでざら紙にマンガを描くというのは無理かと思います。絵に吹き出しを入れるのも、ずっと違和感があったし。
――新しいことを始めたい読者に、メッセージをお願いします。
漫画家仲間のモンキーパンチ……亡くなっちゃったけど、彼にパソコンを教えてもらって。「漫画は手で描くもんですよ」って僕は常々言ってたんですけどね。
彼とはよく映画の話をしていたんです。すると「家に映写室がある。そこで『用心棒』を見せてやるから来い」と誘われたんです。そのとき、パソコンで絵を描くところを見せてもらって、「これはすごいな」と。
昔はエアブラシを使っていたけど、あれはすごく健康に悪いんです。パソコンだと、そんな心配もないわけでしょう。さっそく翌日、一式そろえました(笑)。
作品発表ってものすごく怖いことで、へたにひっくり返ればそれで終わりですから。今は日野日出志が変なブームみたいになっているけど、ろうそくって燃え尽きる瞬間にバーっと燃えるんですよ(笑)。まだまだ手は動くし、頑張ろうと思いますよ。