絶対に役者で食っていくという意識はなかったが、自分の劇団を大きくしたいという野望はあった。どうしたらいいかを考えた結果、ある考えに行き着いた。
「劇団のウリになる役者になろうと。僕って、顔がちょっとアレというか、悪目立ちする(笑)。エキストラのバイトをしても、背景として役に立たずに、『アイツをどかせ』と言われるようなことも多々、味わいました。
どうせ何をやっても色がついてしまうなら、『いっそなんでもできる、どんな注文にも応えられる俳優として、技術を磨き、興味を広く持とう。だから、自分から可能性を狭めちゃいけないな』って。
苦手なバラエティにも出ますし(笑)、『まわりが何を演じてもらいたいか』に応えることが大事。そこを信条にしていかないと、出落ちみたいな人間になると思ってます」
2016年、NHKの大河ドラマ『真田丸』に出演したのを皮切りに、フジの月9、TBSの日曜劇場、NHK連続テレビ小説と、各局の看板番組を制覇。小手は “遅咲きのシンデレラおじさん” と呼ばれるようになった。
「大多数の皆さんにとっては、『あの人、急に出てきたな』という感じがするでしょうけど、一応、演劇界で20年以上、著名な演出家のもとで、あるいは数多くの小劇団で、赤ちゃんから神様までを演じてきました(笑)。
その経験値だけは稼いできたので、『何が来ても大丈夫』という、準備はできていました。『今の状況に満を持して臨めている』という意味で、逆に売れたのが今でよかったと思っています(笑)」
求められる役割をまっとうする。それこそが「バイプレイヤー」としてのプロ意識だ。
「真ん中の人を魅力的に見せるポジションは、すごく大事で高度。僕はそういう人に尊敬を覚えるし、そういうことをちゃんとやれる人間でありたいと思います」
汗を拭きながら、3品を完食。じつはこの店が特別な理由はほかにもある。
「妻は同じ演劇サークルだったので、学生時代は一緒によく来ました。子供がまだ2歳なので、家でエスニック料理は出せない。たまに内緒で食べて『行ってきたよ』と話すと『私も食べたいな』って。甘酸っぱい……じゃなくて酸っぱ辛い、思い出の場所なんです(笑)」
こてしんや
1973年12月25日生まれ 神奈川県出身 早稲田大学卒業、劇団「innerchild」を主宰。『真田丸』(NHK)、『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)、『なつぞら』(NHK)などに出演。10月から『モトカレマニア』(フジテレビ系)に出演
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・住所/東京都新宿区西早稲田2-18-25横川ビル1F
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(週刊FLASH 2019年9月17日号)