最初に出会ったねこのミリオンが虹の橋を渡り、川上家にはローサとリッカが残された。ただ、2匹の相性はあまりよくなかったようで、次第に家の中がぎこちなくなる。ちょうど1年が経ったころ、新たに家族として迎えたのが、スコティッシュフォールドのアクアだ。
「ミリオンは、ゴツンって私に頭をぶつけてくるのが癖でした。なのでペットショップでアクアを見かけたとき、『もし君がミリオンの生まれ変わりだったら、ゴツンして』と言ってみたんです。そうしたら、飛びかかってきてくれたんですよ。
それで『これは何かの縁かもしれない!』と。たまたまその日、アクアビットというスウェーデンのお酒を飲んでいたので、アクアと名付けました」
そして、川上家のねこは再び3匹に。彼女にはこんな持論がある。
「1匹より2匹、2匹より3匹で一緒にいたほうが、それぞれの距離の保ち方やバランスなど、ねこの “社会” を見せてくれるので、いいんじゃないかなと思っています」
しかし、平穏なときは長く続かなかった。しばらくすると、ローサががんを発症して亡くなってしまうのだ。
「扁平上皮がんという、舌にできる悪性腫瘍でした。その闘病を見ていくなかで、ねこについてもっと学ばなければいけないな、と痛感しました。
人にとってもねこにとっても闘病生活は大変ですが、仮に自分に知識がないことで、結果的にねこの寿命を縮めてしまうのだとしたら、すごく悲しいことだと思ったんです。
それでセカンドオピニオンを聞いたり、そもそもがんになるのはなぜかを考えたり……。ローサの病気は、ねこについてより深く考えるきっかけになりました」
そんなころ、瀕死の状態で病院に運びこまれ、4匹の子ねこを産んだ母ねこがいると、知人から知らされた。その母ねこが産んだ子ねこの中で、引き取られず最後まで残った1匹を、川上は引き取ることにした。それがココロだ。
名前の由来は、鼻がハートマークにみえるため。それまで、ねことはおもにペットショップで出会ってきた川上だが、ココロを迎えたことで、野良ねこや保護ねこの問題など、ねこを取り巻く現状や環境に深く関心を抱くようになった。
「その後、リッカも亡くなり、もう1匹迎えるとしたらココロと同じような境遇の子を……ということで、引き取ったのがタックです。この子は、野良のお母さんが友人の家の庭にきて、『赤ちゃんが3匹生まれたよ』と見せにきたそうなのですが、そのとき1匹だけはぐれてしまって。
3日間、外でうろうろして、自力で家にたどりついたそうです。それを友人から聞いてたまらなくなり、『私が引き取ります!』と。タックはスウェーデン語で『ありがとう』という意味です」
こうして川上家のねこはまた3匹に。だが2019年7月、アクアは19歳で虹の橋を渡った。
「タックとアクアはすごく仲よしでした。アクアは、ねこになついたことが一度もなかったのに、タックがきたら親のように毛づくろいをしてあげて、いつも狭いところで一緒にいるような感じでした。
アクアは病院で突然、亡くなってしまったので、亡骸を抱えて家に連れて帰ったとき、タックが異常に威嚇してきて。おそらく人間の目にみえない何か、匂いみたいなものがあるのかな、と感じました」
現在、ココロとタックの2匹と暮らしている川上。だが、ちょっとした問題が……。
「2匹の仲がよくないんですよ。アクアがいて3匹だったときはバランスがとれていたのですが、2匹になってしまったため、1日1回はバトルをしています。どうしたらこの距離感が変わるのか、もう少し様子をみながら、毎日を過ごしているところなんです」
※川上さんのインタビュー記事は、発売中の『FNASHねこ自身4匹目』(光文社刊)にも掲載されています