世界に拡大する新型コロナ。海外では、どんな暮らしを強いられているのか。イギリス在住の小林明子に、国の政策、外から見た日本の対応について語ってもらった。
「私は英国民に対し、とてもシンプルな指示を出します。“Stay at home”(家にいなければいけない)」
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3月23日夜、ジョンソン英首相は、緊急スピーチをおこない、英国全土での外出禁止を指示した。イギリスの首都ロンドンに住む小林明子にとっても、事実上のロックダウンが始まった。
「外出は、食料品・医療品の買い物、および1日1度、家の周辺で、ひとりまたは同居の家族と2人まででのエクササイズ・犬の散歩以外は禁止です。
トイレットペーパー、除菌グッズ、小麦粉、パスタなどが入手しづらい状況ですね。魚や肉などのタンパク質類も品薄で、特に牛肉・鶏肉は入手しづらいです。ただ、ロックダウンから2週間以上たつので、品不足は徐々に回復しつつあります」
とはいえ、マスクは現在も入手困難で、小売店では入手できず、ネット通販では、高額で販売されているという。
「いま現在、私は週に一度、1~2時間ほど買い出しに行くほかには、まったく外出していません。外出するときは、マスクを着用し、髪も帽子かフードで覆い、何かにさわったら、すぐに除菌します。
デリバリーで、たくさんのものが届きますが、箱はすぐには開けずに、ものによっては2~3日から1週間ほど放置してから開けるんです。外出時に着たコートは、日光干しにしています」
ロックダウン発令の前から、不要不急の外出は控えていたという。
「お店も、ほとんど閉まっているし、どこも空っぽの状態だとニュースなどで確認しています。
ただ、お天気がいいと、今でもまだ公園や海辺などに人が集まってしまい、そのたびに政府は、怒りの声明を出していますね。『友達はもちろん、お隣近所、同居していない家族とも会ってはいけない』との発令です。
デリバリーの人は、ドアの外の2m離れたところから声をかけ、配達物を置いていくので、顔を合わせることはないですね。
いまは、太陽がとても恋しいです。ほこりのアレルギー・化学物質過敏症・花粉症などで、家にこもっていると、目と鼻が痛いです。とにかく、外で新鮮な空気を吸いたいです」
室内にこもる生活はストレスをともなう。心身に負担をかけないために、規則正しい生活を心がけている。
「毎朝7時に起きて、1時間、語学アプリ(ヒンディー語、イタリア語)をやり、朝食後には体操をします。その後、家事をし、メールやメッセージを読み、返信をするという具合に、毎日の生活を規則正しくするように心がけています。
オンラインでの交流も、世界中の友達と会えて、けっこう楽しいですよ。人と話すことが、いちばんのストレス解消になっています」
在英日本人のもとには、日本領事館・日本の外務省・同省の海外安全ホームページから、頻繁にメールが届いている。
「『イギリスに暮らす日本人に必要な情報を、きめ細かく教えてくれて、国は海外在住の国民もしっかりとケアしてくれているのだ』と、心からありがたく思いました。私はこの場を借りて、日本政府にこの点だけは、ぜひともお礼を言いたいですね。
しかし、イギリス国内で日本の話がニュースになるときは、とても短く、否定的なんです。これは正しい情報の欠如や、政府の国内外における説明不足を反映しているのだと思います。
世界のリーダー格として、対国際アピールの重要性が問われるときだと思います」
最後に、日本人に伝えたいことは?
「イギリスで繰り返し報道されている政府のキャッチフレーズは、『家にいてください。それによって国民医療を守り、その崩壊を回避し、命を救う手助けをしてください』です。
『自分の命を救うために家にいろ』とは言わないのです。私たちの行動は、自分のためではありません。私たちが存在する社会、家族、全世界のためなのです。
外出を避けることだけが、救いの道なら、生死に関わらない用事は諦めて、家にいるようにしましょう。じっとこらえて、できるだけ多くの命を救いましょう。いま、助け合うチャンスがあるうちに、協力し合って、この危機を一緒に脱しましょう」
こばやしあきこ
1958年生まれ 東京都出身 1985年、シングル『恋におちて-Fall in love-』(TBS系ドラマ・『金曜日の妻たちへ3 恋におちて』主題歌)で歌手デビューし、大ヒットを記録。1992年、ロンドンに拠点を移し、現在も音楽家として活動中。洋楽カバー&新曲入りアルバム『勇気をあげたい』が発売中
(週刊FLASH 2020年4月28日号)