芸能界の先輩が明かす、素顔の小藪
「とにかく"真面目な話"が長すぎる」(坂上 忍)
小籔とは、ちょくちょく一緒に飲みに行ってますね。なかなか時間も合わないし、頻繁とまではいかないけど、僕が誰かと外に飲みに行こうかなって思ったときに、まず顔が思い浮かぶのは小籔です。
テレビで一緒になって、電話番号を交換して仲よくなったんですけど、その前から、出ている番組を拝見してて、ちょっとほかの芸人さんとは毛色が違うというか、ちゃんと自分がある人だなっていう印象を持っていたんです。芸能人って今、とかく横並びになりがちなんです。見かけとか声質とか、多少の笑いの取りかたの差とかはあるけど、たぶんほとんど全部が“多少”の世界で。でもあの人のやってることは“多少”ではないんですよね。
彼には野望というか「自分がメディアに出ることによって新喜劇を広めたい」っていう思いが大前提にある。だから背負っているものがあるという息苦しさというか、しんどそうな感じが常にあるんです。で、背負ってるものがあるんだったら、巻かれるところは巻かれろよって思うんですけど、それはやらずに、でも存在できるように頑張っている。たぶん自分に対してドSなんじゃないですかね。で、自分のなかにもう一人のドMな自分がいるから成立させられるんでしょうね。
僕も何かに還元するっていう考えで生きてますけど、僕の場合は単純に若いころのおこないがよろしくなかったので、遅まきながらこの年になって、どっかでチャラに持ってけないかな? って考えでやってる部分がある。だけど小籔の場合はずっとそうやって生きてきたというか、根っからの修行僧というか。仙人のような達観している感じがしますね。
プライベートでも礼儀正しいですし、意見もちゃんと言いますし、気配りもできる。テレビに出てるときと唯一違うのは、面白くないってことぐらい(笑)。とにかく堅い話が好きで、なんかないの? って振ったら最後、すぐに伊勢神宮とか神社の話になる。「日本は素晴らしい」って話から、さらにもっと掘り下げて「日本人っていう民族は~」とか、歴史を紐解いていっちゃうから面倒くさい。で、まったく終わらない(笑)。初めて飲んだときに伊勢の話を延々と聞かされたときは、この人とは、次、飲み行くのはやめたほうがいいかなって本気で思ったからね。
政治の話になるとさらに面倒くさい。そういう話になっても安易には従わない人でしょ。僕と意見が分かれるときも多いですし、だから僕ともちょこちょこぶつかるところがある。まあ、そこはいつも僕のほうから吹っかけていくんですけどね。で、最終的には、お互い譲らないから、僕が「はいはい、じゃあ、これに対しては意見が合わないということで!」って強制的に終わらすっていうね。
彼は自分の話したいことがあるときに、まったく相手に話す隙を与えず政治や歴史の話を語りだす。それこそ女のコがいる席でも平気でそれをやるから、最初はみんな芸人さんと飲める! って喜んでるんですけど、1時間ぐらいたつと、その場の全員が「この人、真面目な話しかしないし、一度話し始めたら5分はかかるな…」って空気になってくる(笑)。そこは唯一直してほしいところですね。
僕のなかでは4年連続「ミスター気遣い」(ずん・飯尾和樹)
小籔君に初めてお会いしたのは『IPPONグランプリ』の収録のときですね。野球、ゴルフ、テニスをやってもメジャーで通用する体だなぁというのが第一印象でした。小籔君は気遣いの人。僕のなかでは出会ってから4年連続で「ミスター気遣い」の称号を授与しています。つぶれかけているホテルや旅館の経営を立て直せるくらいの気遣い力がある人だと思いますよ。
飲みに行ったときには2人でたわいもない話をしていますね。つまみに鮎の塩焼きが出てきたら鮎の話をして、ポロシャツの襟を立てて声のデカい人を見かけたら「海外、そう、フロリダあたりに行くと急におとなしくなるタイプだね」って言ったり。
小籔君は芸人が助かる芸人です。まさにお笑い界の「海猿」。これからも出動よろしくです!
(FLASHスペシャル グラビアBEST 2015年11月25日号)