1966年~67年、NHK朝ドラ『おはなはん』で主役を演じた樫山文枝(74)が、当時の思い出を語る。
『おはなはん』は、お見合い結婚した陸軍将校との間に子供を授かるも、夫が病死。それでも明るく生き抜く主人公・はなの一代記。
ドラマは大評判を呼び、その後のヒロイン像を決定づける記念碑的作品となった。
「主役に選ばれたと連絡をいただいたんですけど、当時はまだ朝ドラが定着していなくて。一人前の舞台女優を目指したい思いも強く、なかなかピンときませんでした。
返事を先延ばしにしていたら、宇野重吉先生からかけられた言葉が『小人閑居(しょうじんかんきょ)して不善を為す』。ぐずぐず考えずやってみなさいと言われ、お受けしたんです」
ふたを開けてみると大反響。放送開始から2週間たったころには人気に火がつき、平均45%を超える高視聴率。
「『朝一番に観るドラマだから、視聴者が元気の出る内容を』という意識が徹底してて、当時としては並み外れて明るい主人公でした。高橋幸治さん演じる夫を早くに亡くし、女手ひとつで子供を育てる。震災や戦争の焼け跡から立ち上がって生きていく平和への思いと、女性の自立を描いた骨のあるテーマが 観る人の心を捉えたんだと思います」
今も劇団民藝の中心女優として、公演のたびに全国を駆け巡る。
「『おはなはん』は私の名刺代わり。本当にいい作品にめぐり会えました」
(週刊FLASH 2016年4月19日号)