「TOHAKU OPEN PARK PROJECT」のイメージ画像(東京国立博物館のHPより)
日本最古の博物館で上野恩賜公園内にある「東京国立博物館(以下、トーハク)」が11月10日、新プロジェクト「TOHAKU OPEN PARK PROJECT」を発表した。公式HPによると、誰もが快適に利用できる開かれた博物館を実現するため、本館の前庭にある大きな池を、憩いの芝生エリアに生まれ変わらせるというもの。新しくなった前庭を活用し、コンサートやビアガーデンなど様々なイベントを開催することも予定しているという。HPでは、人々が敷物を広げて語らうなど思い思いに過ごす画像が掲げられている。
ところが、今、同プロジェクトは批判の嵐に晒されている。その理由は、池の撤去にあるようだ。
SNSの投稿は、
《歴史的景観を形づくる池をつぶして芝生にしたら、二度と戻せません》
《池も含めての国立博物館だったのでは?》
《池を賑わい作りイベントのための芝生公園に変えるのは絶対に反対》
と、おおむね反対意見で占められている。
また、トーハクといえば2024年10月に所蔵する歴史文書の保存などのためにクラウドファンディングを開始。1期分の目標3億円は短期間で達成されたものの、延長された第2期分の6億円(第1期分含む)には、現在、約5億8000万円あまりで目標額に達していない。これに対しては、《やめてほしい こんなことのために寄付してない》などと、ここでも同プロジェクトへの厳しい声が聞かれた。
「トーハク本館は多岐にわたる建築様式を手掛けた近代日本を代表する建築家、渡辺仁氏の帝冠様式を代表する建築物で、重要文化財です」と、大手紙の文化部記者がこう解説する。
「前庭の池は当初から存在し、本館とともに一つの景観をつくっています。なので、池の撤去は文化財の一部破壊ではないかと、プロジェクトに疑問を持っているトーハク関係者も多いのです。ただ、所管の文化庁の『令和7年度予算(案)概要』では『文化資源の保護・活用を支える拠点の機能強化』が掲げられ、トーハクの写真付きで、『文化観光拠点施設を中核とした地域における観光文化推進機能』などの予算がつけられています。要は、改修費用は出すから観光地化して稼げ、ということです」
トーハクを含む5つの国立博物館を管轄する「独立行政法人国立文化財機構」(令和5年)の場合、全体予算の約75%を占める約96億円が国からの運営交付金で、入場料による収入は約13%の約16億円しかない。他の大口の収入といえば、約6%の約8億円を寄付に頼っている状況でもある。国からの予算増が期待できないとなれば、トーハクとしても所蔵する文化財保存のための経費は自分で稼がなければならない。だから、改修予算がついている同プロジェクトでなんとか営利事業を生みたいところ、そこで考え出されたのが池の撤去と芝生化だったのだろう。
11月12日、同プロジェクトについて元文科次官の前川喜平氏は自身のXで《いかにも藤原誠君がやりそうなことだな》と投稿。主に美術関係者から注目されているという。先の文化部記者がこう続けた。
「藤原誠君とは、現トーハク館長で元文科事務次官です。前川さんのこのポストはトーハク関係者の間で話題になっています。前川さんが次官を辞任する原因となった2017年の『天下り斡旋問題』では、当時、初等中等局長だった藤原さんも懲戒の上、降格になりました。ただ、その後すぐに復権して2018年には次官に上っています。次官になった際に、前川さんが政権に対して『面従腹背』と主張していたのを、『面従腹背は止めよう』と省内で呼びかけたのです。つまり、国の方針には逆らわないのが藤原さんです。前川さんはそれもあって、同プロジェクトを『やりそうなこと』と投稿したんだと思います」
では、トーハクは沸き起こる批判にどうこたえるのか。本誌が広報室に質問したところ、「皆様からお寄せいただいているご意見を真摯に受け止め、誠実に対応をして参りたいと考えており、準備が整い次第、近日中に当館より情報発表させていただきます」という回答が寄せられた。なんらかの計画変更を示唆していると思われるが、“日本一”の博物館の未来像はいまだに不透明なままだ。
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