
2時間の生放送が終わり、スタジオを出る羽鳥慎一アナ(写真・福田ヨシツグ)
「番組に自分の名前が冠されることは、やはりプレッシャーのほうが大きかったです」
羽鳥慎一アナ(54)は、そう語って表情を引き締めた。平日朝のワイドショー番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)が、9月に放送開始から10年を迎えた。
前身である『モーニングバード!』(2011〜2015年)から総合司会を続ける羽鳥アナ。自分の名をタイトルに掲げる形になった2015年から、心境に変化はあったのか。
「もちろん、番組名によってスタンスや責任感が左右されることはありませんが、やはりイヤなものです(笑)。当時のプロデューサーには、 “なんとかならないでしょうか” とお伝えしたこともありました」
視聴率は平日朝8時台の激戦区で、2024年の全体視聴率は世帯9.9%、個人5.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。民放では8年、NHKを含めても5年連続で首位を走り続けている。
「最初はいつ終わってしまうのかな、くらいの数字だったんです。でも出演者、制作の方々が『自分たちが伝えたいことより、視聴者が観たいものをきちんと取り上げていく』ことを第一に考えてきたことで、観ていただけるようになったのかなと感じています。スタッフが変わっても、その考えが引き継がれています」
そうした理念が全員に共有されながら、番組が新鮮さを保ち続けていることも『モーニングショー』の強みだ。
「10年間、コメンテーターの入れ替わりが少ないわりに、マンネリ感が出ていないと思います。この番組は打ち合わせがほとんどありません。出演者のみなさんに会うのは、番組が始まる2分ほど前。予定調和じゃないところも、視聴者にはおもしろいのではないかと思います」
■「3人のおじさんたち」は本気でケンカ!?
羽鳥アナは笑いながら、「変わった3人のおじさんたちがいますからね」と続けた。
「私の役目は、コメンテーター、特に玉川徹さん、長嶋一茂さん、石原良純さんがつい言いすぎてしまいそうなところをうまく受け止めて、場を整えることなんです。
本気でケンカしているのかと思うくらいぶつかるときがありますが、あれだけ言い合えるのは仲がいい証拠。良純さん、一茂さんは裏表なく、まっすぐに育った “日本2大お坊ちゃん” 。本当に人柄がいいんです。玉川さんみたいに謹慎にならない程度に(苦笑)、やってほしいなと思います」
こう、レギュラーコメンテーターの玉川氏をイジることができるのも、2人の信頼関係の厚さゆえ。そんな玉川氏が、羽鳥についてコメントを寄せてくれた。
「『羽鳥慎一モーニングショー』が視聴者から支持されている理由は、番組全体で視聴者第一の番組作りをしているからでしょう。わかりやすくておもしろく、観てよかったと思っていただける番組を目指してきた結果だと思います。
羽鳥さんは見てのとおり『いい人』です。毎日の2時間で、視聴者は人柄を見抜きます。その魅力が、番組を支えています。逆にいえば、羽鳥さんに “毒” はありません。そこが私の出番です」
このコメントを羽鳥アナに伝えると、「あえて悪役を演じているんだ、とよく言うんですよね」と頬を緩めた。
「昔に役割分担を取り決めた、と玉川さんは言うんですが、記憶にないんですよ。それだと “素顔はいい人” みたいですが、番組中の玉川さんは、 “悪そのもの” に見えることがある(笑)。
まあ、2時間の生放送が終われば普通のおじさんに戻るので、つき合いが続いているんですけどね。彼は『健康のためには死ねる』人で、体に悪いことはいっさいやらない。だからお酒も飲みません。そういうところも玉川さんらしさですよね」
日本テレビ時代にMCを担当していた『ズームイン!!SUPER』時代から数えると、23年間も朝の情報番組の顔を務めてきた。
「『ズームイン!!』時代は2時起き、今は4時起きです。最初の数カ月は、寝たら起きられないんじゃないかと思って、怖くてほとんど眠れませんでした。今はぐっすり眠れて、目覚ましが鳴る前に起きられます。……おじさんになりましたね」
本誌は、羽鳥アナがフリーになった直後の2011年5月、『モーニングバード!』に密着取材をしている。当時は、番組が終わり自宅に戻ると、昼からお酒を嗜んでいると話していたが……。
「今は、午後に仕事がなければ、スポーツジムに行ってしぶしぶ1時間走っています。なんの爽快感もなく、早く1時間たてって思いながら。帰宅後は、お茶を飲んでひたすらテレビを見ています。早朝に起きる生活は、 “不規則ながら規則的” 。順調に友達は減っていきますが、健康にはいいのかなと思っています」
長年、生放送の帯番組を続けているなかで、羽鳥アナは、日々をどう整えているのだろうか。
「出演期間が長くても、毎日違う方と接するので飽きないし、楽しいんです。だからストレスはないですし、オンとオフを切り替える必要もないんです。金曜と土曜はお酒が飲めるということぐらいで、無趣味なんですよ。ただ、以前は1週間休みがあっても、3日めくらいから『働きたい』と思っていましたが、今はゆっくり休もうと思えるようになりました」
■「目標は現状維持」と語る理由
フリーになり、仕事の幅を広げた40代から、ゆとりを持つことができた50代へ。そんな羽鳥アナは、今後の目標を「現状維持」だと語る。
「そう言うと、『また謙遜して』と言われるんですが、昔、島田紳助さんに『人生は下りのエスカレーターを上っているようなもの。歩みを緩めた瞬間に、現状維持は難しくなる』と言われたんですよね。
たしかに、(前身番組を合わせて)14年間も番組を維持できていることはすごいことだと思います。今後、この朝の番組にどのように集中し、いかに深めていくか。自分がどのように変わっていくのかも含めて、楽しんで仕事をしていきたいですね」
そんな羽鳥アナの究極の目標は、徳光和夫アナだ。
「日本テレビなら福留功男さん、福澤朗さんは語彙力がずば抜けたピッチャー型。徳光さんはキャッチャー型なんです。話すことだけではなく、聞くこともアナウンサーの仕事だと言われて、得心したんです。さらに徳光さんくらいになると、しゃべらずにバスで寝ていても仕事になる。アナウンサーとして、究極ですよね(笑)」
と、紀行番組で居眠りをする大先輩の名物シーンを、ほほ笑ましく引き合いに出した羽鳥アナ。おじさん3人の聞き役として、日本一の情報番組の座を、これからも “現状維持” していく準備は万端なようだ。
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