
音楽評論家の湯川れい子さん(写真・梅基展央)
音楽評論家で作詞家の湯川れい子さん(90)が、自身のXに投稿した「戦争体験」にさまざまな意見が寄せられている。
発端は2月21日の投稿だ。湯川さんは
《戦争ほど、理不尽で悲惨なものはありません。名もない若く美しい青年たちや、その子を産み、一生懸命に育てたお母さんやお父さんたちが、何ひとつ抵抗出来ずに、運命が命ずるままの悲劇に翻弄されて、ささやかな日常の幸福や命を手放して行くのです》
と綴り、その後も
《疎開していた山形の米沢市で、昼間、道を歩いていた時に突然、空襲警報が鳴り響いて、見上げたら頭上にアメリカのB29が一機。急に高度を下げて、操縦桿を握る兵士のブルーの眼が見えたように思える距離まで降下。機銃掃射を受けて、塀の蔭に隠れたことがありました》
など、戦争に関する思いや体験を連投したところ、「湯川氏は戦争を体験しているのか?」「記憶力が落ちているのではないか?」など批判的な反応が相次ぐ事態となった。
こうした書き込みに《虚しくなって来るので、もうスルーすることにします》と返した湯川さんが、本誌に「戦争」について語った。
「私の父は海軍の軍人で、終戦を迎える前の1945年4月に作戦本部で戦病死しました。
音楽が好きな、穏やかな性格の長兄は大学を卒業後、終戦の3年前に召集されて26歳のときにフィリピンのサブランで戦死。白木の箱で戻ってきましたが、その中に遺骨はなく、石ころひとつだけでした。戦後、私は個人で何度かサブランを訪ね、遺骨を探しましたが見つかっていません。
次兄は強い軍人志向があり、海軍兵学校を出て戦闘機に乗っていました。戦地で大怪我を負い、命からがら帰還しましたが、片方の目の視力を失い、鼻も欠けていました。
姉の婚約者も戦死しています。そして、母と私が疎開していた山形県米沢市の米軍機による機銃掃射。それが9歳だった私が体験した『戦争の現実』です」
と振り返る。
今回、湯川さんの投稿に反論が相次いだ理由については、「想像力の欠如だったり、思いやりの欠如だったりがあるのではないかと思っています。『肉親をなくして、悲しくつらかったんだな』という思いには至らないのではないでしょうか」と分析する。とくに若い世代が、身近に戦争体験者がおらず、戦争の痕跡もなくなっていることを危惧しているという。
「戦後80年が経ち、(戦争の)現実感がないことも影響しているのだと思います。日本は『2度と戦争をしない』という約束をしましたけれど、今は戦後のズタズタになった時代とは違います。
モノには不自由しませんし、夜もぐっすり眠れます。想像力を欠いた今、同じこと(戦争)が起きる可能性があるのではないかと思っています」
その “心配” は政治にも向かう。
「アメリカのトランプ大統領がイランを攻撃して本当に驚いたのですが、このように戦争はいきなり始まります。
今の日本の政治を考えると、高市早苗総理大臣が政調会長だった2022年3月に、テレビ番組でウクライナ問題について触れています。
そこで、日本も同様の事態になったら『戦闘員は国土、領土、領海、領空、そして国民を守り抜く。国家の主権も失われてしまうわけですから、申し訳ないですけど最後まで戦っていただくことになると思います』と発言しています。これは非常に恐ろしい考えだと思います。
たとえ政権党が自民党でなくなっても、今は戦争をリアルに知らない世代の国会議員がほとんどです。生きてきた時代そのものがとても豊かで平安でしたから、戦争に対する根本的な危機感が私たち(の世代)とは違うのだと思います。戦争を軽く考える政治家が多くなりましたが、実際にはつねに(戦争の危険は)身近にあるのではないでしょうか」
戦争回避のためには、どうすればいいのか。湯川さんは一つの方法として「強固なビジネスのつながり」をあげる。
「お隣の国が何を考えているのかわからない危うさがあるなかでは、『仲良くすること』を考えなければいけないのではないでしょうか。
反発するのは簡単ですけれど、仲良くするのは難しい。そのためには話し合う機会を持つことです。話し合うためにはビジネスでの結びつきを強くすること。『傷つけあったら、自分たちが損をする』という状況を作らなければいけません」
現在、お隣の国・中国は、2025年11月の高市首相の台湾有事と存立危機事態に関する発言に反発。レアアースの輸出規制に踏み出すなど「ビジネスのつながり」に支障が出始めている。
「果たして高市総理は、しっかり話し合えているのでしょうか。
私は個人的に、自分より立場が弱い人に対して『腰が低い人』『譲ることができる人』を信頼しています」と、高市首相の姿勢を疑問視する。そしてそんな高市首相が高い支持率を誇る現在の世相にはこうメッセージを送る。
「戦争の悲惨さは簡単に想像できるものではありませんが、戦争は何ひとつ、いいことはありません。
いきなり生活が壊れてしまい、自分のたった一つの命さえも自分で守れなくなる。それが戦争です。戦争だけは絶対、絶対、あってはならないんだという思いを伝えていきたいです」
この言葉が、日本、そして世界の為政者にも届くことを願う。
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