長期化、高額化するガン治療。しかし、「高額療養費制度」をはじめとする国の制度を活用すれば、患者の負担はその一部で済む――。そこで本誌は、著名人の実体験と、国立がん研究センター中央病院の事例から、実際にかかるコストを調べた。
結腸、直腸、肛門からなる長さ約2メートルの消化管に発生する大腸ガンは、50代から高齢になるほど、罹患率が高くなる。大腸粘膜から発生したガンは進行が遅く、自覚症状がない。大腸内視鏡検査、CT検査など、検査費用は3割負担で3万8880円。
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早期なら内視鏡治療か手術でほぼ根治が見込め、内視鏡による手術(入院費3日間含む)であれば、自己負担額は8万2830円になる。
「病院が嫌いで、定期健診を受けたことはありませんでした。女房に、『痩せ方が異常だから』と言われて、初めて検査を受けたんです。自覚症状はなく、ふつうに生活できていたんです」
そう語るのは、プロ野球の元日本ハム監督で、野球解説者の大島康徳(69)。66歳のときに大腸ガンが見つかった。肝臓にも転移があり、ステージ4。「放置すれば、余命1年」と診断された。
「そんなにショックは受けなかった。1年じゃ何もできないし、医師にも、『手術はしません』と、はっきり断わったんです。
ですが、『6カ月以内に腸閉塞を起こします。好きなものが食べられなくなりますよ』と言われて、食べたいがために、手術を決意しました(笑)。子供たちが、ガンの告知に大きく動揺したのも、手術を後押ししました」
腹腔鏡手術を受けて、2週間入院。費用は、3割負担で60万円ほど。高額療養制度を利用した。その後、月に1度の抗ガン剤治療が始まった。
「抗ガン剤治療は、通常は2泊3日。ですが、1回めの投与で39度2分の高熱が続き、原因を探るため、さらに2週間入院することになりました。
最初に使った薬は、手足の痺れが続いて、水道の蛇口をさわるだけでピリッとするんです。足裏の痺れがひどくなったので、その副作用を緩和するために、ひとつ薬を抜いてもらいました。
発熱は半年後に治まりましたが、足の裏が痺れる状態は、いまでも続いています」
大島が利用した「高額療養費制度」とは、医療機関や薬局で支払った金額が、暦月(月初めから終わりまで)で一定額を超えた場合、払い戻しされる制度だ。
抗ガン剤治療を始めて4年め。毎月の費用は、高額療養費制度を4回以上利用すると自己負担金の上限となる「多数回該当」が適用されているほど高額だ。
「月1回、血液検査からCT検査、PET検査など、すべてやっています。もう『病院嫌い』とは言っていられませんね」
さて、国立がん研究センター中央病院の事例でも、大腸ガンの医療費を見てみよう。
●国立がん研究センター中央病院の事例
・身長170cm/体重70kg
・ガンの状態:直腸ガンステージ3b期
・治療内容:開腹直腸低位前方切除+リンパ節郭清+術後化学療法。術後化学療法は、抗ガン剤「FOLFOX」療法6カ月(2週間1サイクルを12回)
《検査法》
内視鏡を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの大腸全体を観察し、病変があれば採取して病理検査する。必要に応じて、腹部超音波(エコー)、胸部X線検査、PET検査などの画像診断をおこなう
《医療費》
おなか側から切開し、ガンがある腸管を切除して、腸管の切り口を下部直腸で縫い合わせるのが「低位前方切除術」。ガンの周辺にあるリンパ節を切除(リンパ節郭清)。抗ガン剤治療を6カ月継続するため、月ごとの支払いが高額になる
おおしまやすのり
1950年10月16日生まれ 大分県出身 元日本ハムファイターズ監督。最新情報は、公式ブログ「ズバリ!大島くん」をチェック
写真・「ズバリ!大島くん」より
取材協力・国立がん研究センター中央病院
参考文献・『国立がん研究センターのがんとお金の本』(小学館)
※本文中・表中の「自己負担額」は、すべて【年収370万~770万円、70歳未満】のケースです
(週刊FLASH 2020年3月31日・4月7日号)