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【食堂のおばちゃんの人生相談】62歳・自営業のお悩み

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.05.11 11:00 最終更新日:2020.05.11 11:00

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/一徹さん(62)自営業】
 18歳年下の嫁は、昔から家事が雑で、よく食器を割る。私は煎茶が楽しみだが、大事な急須の先端をぶつけてヒビを入れられ、この2年間で5回以上買い替えた。急須の扱いくらい、もう少し気をつけてほしい。

 

 

【山口先生のお答え】
「急須ぐらい割ったって良いじゃない。18歳も若い奥さんもらったんだから」。一徹さんが誰かに奥さんの粗忽をこぼす度に、こんな台詞が返ってきて、もう耳にタコが出来ていることでしょう。うんざりしているお気持ちはよく分かります。でもねえ……。

 

 私はお悩みを伺って、昔読んだ山口瞳の『血族』という自伝小説を思い出しました。

 

 山口瞳のお母さんは北大路魯山人と親交があり、家に魯山人作の食器がいっぱいあったそうです。が、新婚時代の奥さんは家事が不慣れで、何枚も高価なお皿を割ってしまいました。お母さんはその度に「おやまあ、またキタオジさんのお皿だよ」と溜息を吐いたものの、その後で必ず一言付け加えたのです。

 

「でもね、それはアンタが働き者だからよ。一番沢山働く人が、一番多くお皿を割るんだからね」

 

 私は一徹さんに、このお母さんの心を汲んでいただきたいと思います。奥さんが食器を割るのは、洗うのも拭くのも奥さんがしているからです。家事をしない人は、食器を割ることもありません。

 

 今度奥さんが急須を割ったら「働き者の証拠だよ」と言って、その労をねぎらいましょう。そして絶対に割られたくない急須は、奥さんの手を借りず、出してからしまうまで全部自分でやりましょう。

 

 それと、急須の注ぎ口にビニールのカバーを掛けるのも一案です。風情は削がれますが、ぶつけて欠ける率は下がりますよ。


やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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