厚労省の最新調査によれば、我が国における「要介護・要支援認定者」は、667万人を超えたという。両親を介護施設に預けていたり、預ける予定の方も多いはず。だが……。
「施設に親を預ければ、『これでひと安心』というわけにはいきません。預けた施設での “介護トラブル” が多発しているんです」
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そう警鐘を鳴らすのは、介護トラブルに詳しい外岡潤弁護士。2009年に介護・福祉問題に特化した法律事務所を開設。自らヘルパーの資格を取得するなど、介護現場のトラブルに関わってきた専門家だ。
「利用者・施設側の双方から、介護トラブルに関する相談を受けています。利用者側から寄せられる相談のひとつは、お金にまつわるもの。施設から送られてくる利用明細を見て、『なぜ、こんなにお金がかかるのか』『明細を見ても、なんの費用かわからない』という方が多いのです。
実際、悪徳施設のなかには、おむつ代金などを水増しし、法外な金額を請求するところもあります。なので、毎月の利用明細を確認し、不明な点があれば施設に細かく尋ねることが大切です。
しかし介護用品は、おむつだけでも用途によってさまざまな種類があります。利用者が知識不足で、『不当に高い』と感じてしまうケースもあるので注意が必要です」
金銭トラブル以上に、介護の現場で多発するのが “介護事故” だという。
「トラブルの原因でもっとも多いのが、『転倒・転落』と『誤嚥』です。高齢者は、転んだだけで簡単に骨折してしまう方が多く、そのまま寝たきりになるケースがあります。
また、食べ物を飲み込む力が衰えている方も多いので、食べ物が誤って喉頭と気管に入ってしまう『誤嚥』を起こしがちです。誤嚥から肺炎を発症し、そのまま亡くなることもあります」(外岡弁護士、以下同)
こうした事故は、介護スタッフと利用者が1対1のときに起こることが多い。そのため証拠が乏しく、事実確認が難しいのだという。
「典型的なケースが、施設内での入居者の転倒です。本人が、『大丈夫だから、家族にも連絡しなくていい』と言っていた怪我が、後日骨折だと判明することがあります。
とくに利用者が認知症を併発していると、施設側と言い分が食い違って、家族たちが “骨折が隠蔽された” と誤解することもあります」