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「高査定」に「囲い込み」…知らないと不動産は買い叩かれる

ライフ・マネー 投稿日:2020.06.16 20:00FLASH編集部

「高査定」に「囲い込み」…知らないと不動産は買い叩かれる

左から不動産登記権利情報、不動産売買契約書、重要事項説明書

 

 子供が成長して家を出た、実家を処分することになった……。不動産売却のタイミングは、突然やってくる。しかし、ほとんどの人には「未体験」の世界だ。

 

「2020年2月時点の調査で、全国のマンションの販売価格は新築・中古とも、高値の状態が続いています。売出し価格より成約価格が上回る物件もあるほどです」

 

 

 そう語るのは、不動産経済研究所・企画調査部主任研究員の松田忠司氏だ。

 

《あなたのお住まいの不動産がいくらで売れるか、ご存じですか?》

 

 マンションのポストに、そんなことが書かれたチラシが入っていた経験はないだろうか。なかには、具体的な買い手の職業や、希望する間取り、面積、「角部屋」「3階以上」などの条件まで指定されていることも。

 

 どこまで本当なのかと思いつつも、「ご予算4500万円で探しています」などとあれば「こんなに高く売れるのか!」と、つい心が動いてしまう。だが、不動産コンサルティングを手がける「さくら事務所」の長嶋修会長は、こう警告する。

 

「こうしたチラシ広告は、業界特有のマーケティング手法です。チラシを見て査定を申し込むと、驚くほど高い額で査定が出ます。

 

 しかし実際に売りに出すと、その価格では売れず、値下げして売ることになってしまうケースも。結果的に客を騙す、こうした価格査定を、業界では『高査定』と呼んでいます」

 

 不動産の売却は、売る側にとっては「一生に一度」ともいうべき大きなイベントだ。だが、相手は海千山千の不動産業者。うまい話に騙されず、少しでも有利な条件で自分のマンションや親の家を売るには、どうしたらいいのか?

 

「不動産業界は不透明で、部外者にはわかりにくい慣習が多いです。騙されないためには、まずは相手の手口を知ることです」

 

 そう語るのは、AIを使った不動産査定サービスを開発した、コラビットの浅海剛CEOだ。大手不動産会社で営業経験があり、業界の裏事情に精通している同社の渡邉雄也氏が、具体的な手口を「業界用語」とともに、解説してくれた。

 

「まず、チラシを見ると『周辺でこういう取引があった』という成約事例が挙げられていることがあります」(渡邉氏、以下同)

 

 そのチラシを見て「査定だけでもしてみようか……」と申し込むと、思いのほか、高額な査定額が提示される。これが、前出の「高査定」という手口だ。

 

 具体的な金額を提示され、その気になった売り主が、査定を出した不動産業者に売却を依頼する。すると、そこから業者の「買い叩き」が始まる。これを業界用語で「値ごなし」という。

 

「いわゆる『サクラ』を使うこともあります。知人に頼んで物件を内見に来させて、こう言うんです。『あのお客さん、この物件を気に入っていましたよ。でも3000万円は高い。2000万円なら……と言っていますが、どうですか?』と。事情があって売り急いでいる方には、かなり効果的な殺し文句です」

 

 売り主から売却の依頼を受けた物件を、ほかの不動産業者に紹介せず、1社だけで独占的に買い主を探そうとすることもある。これを「囲い込み」という。

 

「本来、売却依頼を受けた物件は、『レインズ(REINS)』というシステムに登録し、業者間で情報を共有する仕組みになっています。

 

 だから、どの業者からも物件にアクセスすることは可能なのですが、問い合わせをしても『商談中です』『もうすぐ成約します』と、断わられてしまうのです。1社でしか探さないから、買い手がなかなか見つからない。こうして、価格が下がっていくわけです」

 

 なぜそこまでして、自社で売りと買いを独占したいのか。そこには、不動産業界特有の「両手取引」という考え方がある。

 

 不動産業者の収益は、取引にかかる「手数料報酬」に大きく依存している。不動産の売り主と買い主の、それぞれに仲介手数料が発生するため、売りも買いも両方、仲介したほうが “おいしい” ビジネスになる。これが「両手取引」だ。

 

「両手取引では、“少しでも高く売りたい人” と、“少しでも安く買いたい人”、相反する立場の人を相手にします。それでも手数料が両方から入るので、両手取引にもっていけるよう、業者は売り主と買い主、双方で調整をおこなうのです。

 

 もちろん、売り主のために頑張ろうとする担当者もいますが、それでは会社の利益を最大化することができない、というわけです」

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