コロナ禍により、すっかり日常となりつつあるテレビ会議やオンライン飲み会。だが、テレビ会議用のツールは意外と数が多く、どのツールを使うか迷いがちだ。そこで今回、主要8ツールの長所と短所を比較検討してみた。企業間でのやり取りに向くものもあれば、一対一での会話を想定したもの、あるいは対談の配信に適しているものなど、さまざまな特徴がある。以下、ITジャーナリスト・三上洋氏に採点してもらった。
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8ツールとは、【Zoom】【Google Meet】【Microsoft Teams】【Whereby】【LINE通話】【Webex】【Skype】【Stream Yard】であり、使いやすさ/値段/同時接続人数/画質・音質/セキュリティの5項目を5点満点で採点した。最高得点は25点となる。
【Zoom】17点
○使いやすさ:☆☆☆☆☆
「ご存知のとおり、このコロナ禍で最もユーザー数を伸ばしたツールです。操作が非常に簡単で、リンクだけで会議に参加でき、細かい設定もいじれる手軽さが魅力といえるでしょう。
バーチャル背景を変えることもできますが、パソコン版だとバージョンの条件があるため、できる人とできない人がいます。一方、スマホ版では簡単に変更できるといった違いもあります」(三上氏、以下同)
○値段:☆☆☆(企業向けプランは除外)
「無料版は、3人以上の会議だと40分という時間制限があります。主催者が月2000円の有料プランに入ってしまえば、24時間にまで広がります。正直、40分という時間制限はきついものがあるかと思います。ただ、一般のオンライン飲み会では、時間が長引いて嫌がる人が出てくる現象もありますよね(笑)。逆に40分で区切ってもらった方がいいんじゃないか、という意見もよく聞きます」
○同時接続人数:☆☆☆
「無料版では同時接続100人、有料版も同じです」
○画質・音質:☆☆☆
「どちらも可もなく不可もなく、といった印象です」
○セキュリティ:☆☆☆
「Zoomが爆発的に使われ始めた時期、多くの問題が取り沙汰されました。3月~4月頃は、『Zoom爆撃』という、勝手に知らない人間が会議に侵入してしまう事態が続出しました。暗号化が不十分と言われたり、データを中国に送っていたという話も一部で指摘されていました。また中国政府からの要請で天安門事件の会議が中止されたこともあり、信用度が大きく落ちています。
こうしたツールは利便性を高めれば高めるほど安全性は低くなるし、安全性が高まれば高まるほど使いにくくなる。そもそも両立しないものなんです。ただ、株価が上がっているタイミングでセキュリティが大叩きされたこともあり、改善の努力が見られます。今後に期待です」
【Google Meet】21点
○使いやすさ:☆☆☆☆☆
「Googleには、テレビ会議ツールとしては老舗のハングアウトというテレビ通話サービスがあるんですが、ここからテレビ会議ツールとして派生したものがMeetです。
最近では、アンケート機能やタイル表示(画面上に表示できる人数)も16人まで増えるなどの機能拡充が計画されています。操作も比較的簡単です」
○値段:☆☆☆☆
「無料版の場合、基本的に会議は1時間まで(9月30日までは24時間まで)。有料版になると、月10ドル(約1100円、9月30日までは無料)。会議の長さは300時間までになります」
○同時接続人数:☆☆☆
「無料版は100人、有料版は150人になります。可もなく不可もなくといった規模感でしょうか」
○画質・音質:☆☆☆☆☆
「画質・音質ともにいいです。画質は720Pというサイズに対応しているため、かなり綺麗に映ります。私自身、毎週、大学の非常勤講師としてオンライン講義をしているんですが、その際にはMeetを使っています。全体で90何人という人数を入れても、非常に安定しています」
○セキュリティ:☆☆☆☆
「現時点で、特に問題は報告されていません」
【Microsoft Teams】22点
○使いやすさ:☆☆☆☆
「Teamsは誰かが一つのチームを作り、そのなかでテレビ会議や資料の共有、皆で一つのファイルを作ることなどができます。主に、企業やグループのなかで仕事を進めるためのツールといえるでしょう。
チームを立てた人間がメンバーを招待しなければいけないという手間があるので、多少の面倒くささはあります。ただ、こちらも機能改善が進んでいます。タイル表示が現状9人までですが、今後のアップデートで49人になると発表されました。Zoomの伸びよりは少ないものの、Teamsもずいぶんユーザー数を伸ばしています」
○値段:☆☆☆☆☆
「無料版に加え、月540円、1360円、2170円のプランがあります。有料版になると会議のレコーディングができたり、ファイルの容量が増えたりと、各プランで細かい違いがあります」
○同時接続人数:☆☆☆☆
「無料版も有料版も、参加人数は最大250人です」
○画質・音質:☆☆☆☆☆
「画質はかなりいいです。画面の横サイズが最大1080Pのため、リストのなかでは一番いいはず。音質も、可もなく不可もなくといった具合です」
○セキュリティ:☆☆☆☆
「現時点で、特に問題は報告されていません」
【Whereby】17点
○使いやすさ:☆☆☆☆☆
「昔はappear.inという名前で、ビデオ通話ツールとして使われていました。アメリカ系の企業では、Wherebyを使用しているところも多いですね。操作がわかりやすく単純明快ですし、登録なしですぐに使えます。
特にいい点は、タイルの並びをドラッグ&ドロップで変更できるところ。他の会議ツールにはあまり見られない機能で、非常に使いやすいです。こういった細かい設定が効くため、Wherebyはそこそこおすすめできます」
○値段:☆☆☆☆
「無料版と、月9.99ドル(約1100円)の有料版があります」
○同時接続人数:☆☆
「無料版は4人まで、有料版では12人まで可能です」
○画質・音質:☆☆
「正直、画質はあまりよくありません。1対1なら許容範囲内ですが、4人程度に増えてくると厳しくなってきます。音質は特に問題ありません」
○セキュリティ:☆☆☆☆
「現時点で、特に問題は報告されていません」
【LINE通話】20点
○使いやすさ:☆☆☆☆
「近年、通話機能が上がってきています。LINEさえ持っていれば使用できますし、ARエフェクトで顔をクマにしたりネコにしたりして遊べますから、オンライン飲み会には適しているといえます。後ろの背景を変えることも可能です。タイル表示は、スマホの場合6人、PC版の場合16人までになります」
○値段:☆☆☆☆☆
「すべて無料で、有料版はありません。時間の制限もないですね」
○同時接続人数:☆☆☆☆
「最大200人になります」
○画質・音質:☆☆☆
「可もなく不可もなく、といった調子です」
○セキュリティ:☆☆☆☆
「現時点で、特に問題は報告されていません。ライン通話は、友達でないと通話が不可能です。リンクから入ることがないので、侵入者が入りにくいとも言えます。逆に安心かもしれないですね」
【Webex】18点
○使いやすさ:☆☆☆
「Webexは、基本的に企業や学会がテレビ会議で使用するツールで、一般ユーザーにはやや敷居が高いです。
最大の特徴は、非常に細かい設定ができること。会議で資料を出せる人・出せない人を設定できたり、プレス発表会のようなカンファレンスの場合、参加者の情報を収集できたりします。会議のコントロールという意味では、最も優れていると言っていいでしょう」
○値段:☆☆☆☆
「無料版と有料版があり、有料版は1490円、1980円、主に企業向けの2980円に分かれています。
○同時接続人数:☆☆☆
「企業向け以外のプランは、どれも100人まで同時接続が可能です」
○画質・音質:☆☆☆
「画質・音質はよくも悪くもありません。特に問題はないでしょう」
○セキュリティ:☆☆☆☆☆
「企業向けに作っているだけのことはあって、テレビ会議ツールのなかでは、一番セキュリティが高いという評価です。最も安全に使用できると考えていいものです」
【Skype】17点
○使いやすさ:☆☆☆☆
「マイクロソフトのアカウントさえ持っていれば、誰でも使用できる定番ツールです。私自身、テレビ局やラジオ局に出演する際にはSkypeを使用することが多いです。背景をぼやかすことができたり、最近ではバーチャル背景にも対応するようになりました。
もともとSkypeのプロ版、今でいう『Skype for Business』というツールがあり、これがテレビ会議ツールの定番だった時代もありました。現在は原則販売を終了していて、基本的には『Microsoft Teams』の使用が推奨されています。Teamsは企業向き、Skypeは個人向きといった棲み分けがされているようです」
○値段:☆☆☆☆☆
「Skypeでテレビ通話する場合、互いにSkypeを使用していれば完全に無料です。音声通話やメッセージなど、すべての機能において料金はかかりません」
○同時接続人数:☆☆
「最大50人まで同時接続が可能です」
○画質・音質:☆☆
「正直、画質・音質ともにあまりよくないです。喋りがかぶると音が途切れてしまう特徴があります。テレビ会議は対面の会話とはテンポが異なるため、音かぶりは必ず起きるものなんですが、そのたび音が途切れるのは致命的。大人数の会議には厳しいものがありますね。
画質はネット環境によって自動的に変更されていくため、人数が増えていくと画質が落ちるケースが出てきます。総合して、1対1なら問題はないものの、大人数はつらいという評価です」
○セキュリティ:☆☆☆☆
「現時点で、特に問題は報告されていません」
【Stream Yard】19点
○使いやすさ:☆☆☆☆☆
「聞きなれないかもしれませんが、私のように定期的に生配信をおこなう人たちから注目されているツールです。ブラウザ上で使用できて便利な上に、画面を自在にレイアウトできるのが強い。自前のロゴを入れたり、画面下にテロップを入れたりできます。
テレビ会議にも使用できますが、やはりプレス発表やイベントといった、一般ユーザーに向けた配信に適しています。最近は芸能人の方々がZoomの配信機能を使ってオンライン飲み会をやるような流れがありますが、画面を作り込めるという意味ではStream Yardが圧倒的に優れているでしょう」
○値段:☆☆☆
「無料版と、有料版の25ドル(約2750円)、49ドル(約5400円)といったプランがあります。無料版では、月20時間しか配信ができません。有料版では配信の時間制限はなく、ロゴ入れや背景の取り換え等ができるようになります」
○同時接続人数:☆☆
「スタジオには最大10人まで入ります。ただ、画面に表示できるのは6人までになるため、大規模なトークショーなどの場合は、表示する人間を入れ替える作業が必要です。
あとは、画面上でのスイッチングが簡単にできるところが魅力ですね。6人で映っていたところを3人にしたり、ツーショットにしたりという細かい設定が可能です」
○画質・音質:☆☆☆☆☆
「どちらもよいです。画質については、画面横サイズが720Pと、Google Meetと同じで非常に綺麗に映ります。
○セキュリティ:☆☆☆☆
「現時点で、特に問題は報告されていません」
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数々のテレビ会議を経験してきた三上氏によれば、いざテレビ会議を始める際、いくつか注意すべき点があるという。
「なにはともあれ、まずはイヤホンマイクかヘッドセットを用意してください。たとえばノートPCのマイクだと、キーボードを叩く音が先方に聞こえてしまうため、うるさい印象を与えてしまいます。相手のために、マストで用意すべきものです」
また、誰もが悩むであろう画面位置についてもアドバイスが。
「できる限り、カメラの位置を自分の目線と同じ場所にすることが大切です。自撮りと同じで、あおってしまうとなかなか綺麗には見えません。気持ち上から撮るか、同じ目線が自然。
実際には、ノートパソコンの下に本をいっぱい積んで、高さを調節するといいでしょう。スマホの場合は自撮り棒なんかで固定して、高さを出すのもおすすめです」
在宅で仕事の打ち合わせをする場合、PCからテレビ会議をつなぐ人が多い。しかし、ここでスマホやタブレットを有効活用するのも手だという。
「PCでのテレビ会議ツールって、必ずカメラとスピーカーとマイクを選択しないといけなくて、設定が面倒くさいんです。ウェブカメラをつなげたつもりが内蔵だったり、音が出なかったり。
しかし、スマホを使った場合はカメラ、スピーカー、マイクが1つずつしかないため、煩わしさがありません。テレビ会議はスマホやタブレットでおこない、同時にPCで作業する方が素直です。主催者の場合は別として、参加メンバーの場合、こうした切り分けをすると非常に楽になるでしょう」