「わが国のがんによる死亡者数は、部位別に見ると、1位が肺、2位が大腸、3位が胃となっています(男女計)。つまり『対策型』で、かなりの部分のがんをカバーできることになります。
これらの検診が公的な施策としておこなわれているのは、がんによる死亡リスクを下げることが、科学的に証明されているからです。費用面のハードルも低いので、最低限この対策型のがん検診だけでも受けていただきたいのです」
もうひとつの「任意型」は、対策型以外のがん検診を指し、おもに「人間ドック」でおこなわれる。個人が希望する部位の検査を受けることができるが、費用は「対策型」より高額になる。補助金が出る企業もあるが、基本的には全額自己負担だ。
「さらに重要なポイントは、人間ドックの基本コースに含まれていないオプションのうち、どれをを選ぶかです」
胃の造影剤(バリウム)を使ったX線検査や胃カメラ検査は、基本コースに含まれていることがほとんど。しかし胸部CTや大腸カメラ検査などは、施設によってオプションとなっているところが多い。
「胸部CT、大腸カメラ、腹部エコーの3つに関しては、基本コースに含まれていない場合、ぜひともオプションで受けていただきたい検査です。
とくに腹部エコー検査は、肝臓や胆嚢、腎臓、膵臓と、カバーできる範囲が広い。しかも検査は痛みもなく簡単で、費用も少なくすむので、おすすめです」
また、受ける検査を選ぶ際には、家族の既往歴や自分の生活習慣および持病、そして健診の所見なども考慮して決めることが重要だ。
「『祖父が、がんで死んだことは知っているが、どこのがんだったかわからない』という人は意外と多いんです。がんは遺伝的要素が強い病気なので、家族の既往歴は重要です。知っておいて損はありませんし、自分の健康管理のための参考材料としてぜひ意識していただきたいです」
昨今は「検診否定派」の声も聞こえるが、専門医は検診の意義を、どうとらえているのか。
「たしかに、定期的に検診を受けてもリスクをゼロにすることはできません。そして、CTのように被ばく量が多いなど、受けすぎると健康を害するものもあります。
しかし、肺・大腸・胃などの頻発部位のがんは、コストをかけずに安全に検診ができますし、悪性度の高い食道がんが対策型検診の胃カメラで見つかり、完治するケースも増えてきています。対策型検診だけでも、受けて損はないのです」
こんどうしんたろう
1972年生まれ。医師兼マンガ家。「近藤しんたろうクリニック」院長。日赤医療センターなどで勤務。消化器の専門医として、年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がける。著書に、『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(日経BP)など
(週刊FLASH 2020年12月1日号)