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【食堂のおばちゃんの人生相談】48歳・会社員のお悩み
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.12.21 11:00 最終更新日:2020.12.30 10:34
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/ありがた迷惑さん(48)会社員】
7歳年下の妻が、3カ月前から手芸に凝りだし、ネットサイトで大量注文しては、ティッシュカバーやリモコン入れなど、珍妙なデザインでリビングを侵食してゆく。
最初は「悪くないね」と言っていたが、数が増えるにつれ、私の居場所がなくなるような気がして、できれば自分のものだけ作ってほしい。この気持ちを、妻に伝えた方がいいだろうか。
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【山口先生のお答え】
そうですか、なるほど。実はあなたの気持ちがよく分かります。世の中には “カバー好き” と “カバー嫌い” がいて、私は嫌いなんです。
ティッシュの箱はもとより、固定電話や便器の蓋、トイレットペーパー掛け、ドアノブにまでカバーを掛けているお宅もありますが、何が良いのか私には理解できません。だって、意味ないでしょ? ああいう無用のカバーを見る度に「男なら脱いで勝負しろ!」と怒鳴りたくなるのは私だけ......って、ちょっと違うか。
ただ、奥さんの趣味は口出しせずに放っておいた方が良いと思います。どうせそうは長続きしません。家中のカバーを一通り作り終わったら、別の趣味に移行するはずです。フラメンコとかね。
奥さんが急に手芸に凝りだしたのは、手芸に興味が湧いたというより、満たされない心を埋めるすべを手芸に見いだしたのだと思われます。奥さんは41歳。気持ちに焦りが生まれる年頃なんです。
そろそろ女として下り坂にさしかかる一方、それを補ってくれる何かはまだ見つからない。溺れる者がたまたまつかんだワラが手芸だったとご理解ください。
手芸に走った奥さんはある意味賢明です。これがホストとか整形だったら大変ですよ。「カバーで良かった」と思いましょう。
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中