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銀行が高齢者から手数料を搾取「遺言信託」弁護士に頼むほうが安値安全

ライフ・マネー 投稿日:2021.01.06 11:00FLASH編集部

銀行が高齢者から手数料を搾取「遺言信託」弁護士に頼むほうが安値安全

年々、信託銀行による営業が激化している遺言信託。手数料に見合うサービスか熟考しよう

 

 読者諸兄に、ぜひ確認してほしいことがある。それは、実家の両親が、銀行の「遺言信託」というサービスを契約していないか、ということだ。

 

「銀行の遺言信託は、弁護士に比べ、割高になるケースが多いです。ここ5年ぐらいで、銀行の営業マンから『相続争いを起こさないために備えましょう』と勧誘されて、契約してしまう高齢者の方が増えています」

 

 

 そう警鐘を鳴らすのは、相続トラブルを専門とする金田万作弁護士だ。遺言信託とは、いったいなんなのか。

 

「おもに銀行が、相続を考えている人に提供している商品です。主要なサービス内容は3つ。1つめは、遺言書作成のアドバイスです。依頼者はそのアドバイスを元に公証役場に行き、公正証書遺言をつくります。2つめは、遺言書の保管。銀行は、依頼者が亡くなるまで、公正証書遺言を保管します。

 

 そして3つめは、遺言の執行です。依頼者が亡くなった場合、銀行は遺言に基づいて、財産を相続人に振り分ける遺言執行業務をおこないます。この3つをまとめて、銀行は『遺言信託』と呼んでいます」(金田氏・以下同)

 

 何かと不安がつきまとう相続問題。一見、画期的なサービスのようにも思えるが……。

 

「そもそも、銀行が使っている『遺言信託』という言葉は、たんなる商品名で、法的な意味はありません。これらの業務は特別に銀行だけがおこなえるものではなく、伝統的に弁護士がおこなってきました。

 

 また一般の方でも、遺言を保管して、亡くなった後に執行するということはできます。それを、『信用のおける銀行が代わりにやりますよ』というものが、遺言信託なんです」

 

 具体的に、費用を比較検討してみよう。大手信託銀行が提供している遺言信託では、基本手数料として、20万~100万円を支払う必要がある。

 

「知られていないだけで、同様のサービスは弁護士に頼めば、受けられます。遺言書の作成であれば、シンプルな内容だと10万円程度で可能です。

 

 どのような内容なら、“争続” を避けられるかというアドバイスも可能ですし、遺言書の保管をお願いされた場合、弁護士事務所では無料なことが多いです。一度書いた遺言書を変更したい、という場合も、一から作り直すレベルのものでなければ、費用がかからないことが多いです」

 

 一方、銀行の遺言信託は、遺言の内容変更や保管に高額な手数料が設定されている。さらに、遺言の執行において、そもそも第三者が必要とされることが稀だという。

 

「しっかりとした遺言書があれば、それに従い相続人が手続きをすればすむ話です。執行者が必要なケースは、土地がたくさんあって登記の書き換えが大変な場合や、相続争いが起きることが予想される場合など、遺言の執行が難しいときだけですね」

 

 相続する財産が数億円という大きなものである場合や、遺言の内容が1人に集中する場合、相続人が亡くなっていて家族が相続人として名乗り出てくるような場合には、相続をめぐってトラブルになることが多いというが、そういうことはめったにない。

 

「相続人同士で法的紛争があったり、その可能性が高い場合、銀行では取り扱えず、弁護士に依頼することになります。つまり、銀行信託への費用とは別に、弁護士費用もかかってしまうのです」

 

 親がよかれと思って契約した遺言信託のおかげで、肝心の遺産が目減りし、いざ相続する際に揉め事がおきたら、弁護士に頼ることになる――。いいところなしの遺言信託だが、メリットはないのか。

 

「弁護士に依頼した場合、その弁護士が先に亡くなってしまうケースや、弁護士法人が解散してしまうリスクはあります。銀行なら、この先も潰れることはないでしょうから、その点で安心感はあります。結局、『弁護士は費用が高そう』というイメージで、敬遠されているだけだと思います」

 

 銀行が、高額な手数料を求めて高齢者に営業攻勢をかけているのも、遺言信託が流行る背景のひとつだ。「遺言信託のノルマが年々、きつくなっている」と、大手信託銀行の営業マンは語る。

 

「マイナス金利で苦しいなか、遺言信託は “金のなる木” です。本当に顧客のことを考えるなら、そもそも遺言信託が必要なのかどうかも含め、相談に乗るべきでしょう。

 

 しかし実際は、契約を取るのが最優先。相続争いについて経験の少ない人間が売り込んでいるので、今後遺言を執行するとなった際、トラブルが多発するのではないかと心配です」

 

 無用な出費を避けるために、相続について今すぐ両親と話し合うべし。

 

写真・朝日新聞

 

(週刊FLASH 2020年12月29日号)

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